メディアグランプリ

助産師としての私が目指すところ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:上田聡代(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
私は、助産師になって32年目に入りました。いつの頃からか、頭の片隅では常に、助産師はどのような職種と思われているのだろう? と気になっていると思います。
 
2年前、約300名の小学6年生に「生命の授業」を行ないました。そのとき、「助産師って知っていますか?」と尋ねると、60%程の子どもたちの手があがったのです。予想をはるかに超えた手があがっとことで、今思えば、嬉しく満面の笑みを浮かべご機嫌な表情をしていたに違いありません。しかし、ちょっと意地の悪い私は心の中で、本当かな? 手を挙げているだけ? と疑っており、数名の生徒に、どんな仕事をする人か聞いてみました。すると、赤ちゃんのお世話をする人、赤ちゃんが生まれるときに助ける人、など的を射ているではありませんか! 助産師という職種の認知度が上がったと確信した時間になりました。
 
そういう私が、助産師を知ったのは、看護学生時代の産科病棟実習の時でした。初めて立ち会う出産シーンに感動して涙が溢れていたせいか、お母さんと赤ちゃん、そして寄り添っている助産師が、ドラマの主人公のように輝いており、鳥肌がたったことを明確に覚えています。その時、助産師という職種の存在を知り、目指したいと思い母に相談すると、「産婆さんね」という返事が返ってきて賛成してくれました。産婆さんという言葉は知っていましたが、深いことを知らない私は、そうなのかと素直にニコニコ聞きながら進路が決まっていきました。ところが、友人に話しても、それ何? と聞き返されるほど、助産師という職業は、まだまだ認知度が低かったのです。
 
それが、小学生が知っていることに、大袈裟かもしれませんが、感動してテンションが高い授業となった理由です。
 
さて、助産師の仕事ですが、小学生が答えたように、多くの人が、お産をお手伝いする人と思っています。おそらく出産経験のある女性が、苦しい出産のときに、ずっとそばに居たのが医師ではなく助産師だった人が多いことから、強い印象を持たれているのだと思います。もしかしたら、母子手帳にも、出産立ち会い医師と助産師の氏名が記載されていることが理由かもしれません。
 
私自身も、助産師学校を卒業後は、総合病院産科病棟を経て個人クリニックで勤務していましたが、9年間で約3,000人の生命誕生に立ち会いました。その頃は、まだ助産師の人数が不足している時代だったので、明けても暮れても分娩係(お産の係)だった総合病院では、分娩がない時は、出産後1週間入院されるお母さんと赤ちゃんのケアをしていました。個人病院でもまた、明けても暮れても分娩係だったのですが、それ以外の時間は、妊娠中から卒乳(授乳を卒業すること)する2歳くらいまでがケアの範囲になりました。
 
このように、多くの助産師が、妊娠期から卒乳くらいまでの関わりが仕事の中心であることは事実だと思います。
 
ところが私は、お産から離れて不妊治療専門クリニックに勤務し、不妊症看護の世界に飛び込みました。お産から離れてしまうと、せっかく身についた技術が無駄になってしまわないか不安な気持ちもありましたが、正直、24時間拘束の勤務に疲れていたことと、1年くらい不妊症の勉強をしてもいいかな? という思いが勝ちました。
 
不妊治療の世界は、お産の世界とは真逆に感じました。お産の世界が陽なら不妊治療の世界は陰だったのです。そのギャップに慣れるまでは、ため息が多くなり大変なものでした。ところが、少しずつその世界の深みに、はまっていき陰の輝きが居心地よくなっていったのです。
 
結果、1年勉強しようと思っていた不妊治療の世界に、どっぷり20年浸かりました。ひとりひとりと向き合うことが難しくもありましたが、自分自身も成長できる、魅力がある世界だったのです。お産では、笑顔とありがとうの言葉が飛び交っていたので、自己肯定感もあがりエネルギーをもらえる職場だということを離れてから感じたものです。
 
こうして、助産師でありながら不妊症看護の世界に入った私に、「助産師なのになぜ?」「もったいない」などの反応が多く、認めてくれる人は少数でした。
 
それでも私は自分の信念を大切にお守りとしてきました。それは、助産師学生時代に尊敬する大先輩に、「ゆりかごから墓場までが助産師の仕事や」と教わったことでした。女性が生まれてから他界するまで、ずっと寄り添い伴走する仕事。女性に寄り添うためには、その周囲にいる男性、家族、友人にも寄り添うこと。
 
不妊症看護を行ってきた私は、ゆりかごから、つまり生まれてからではなく、生まれる前の「たまごから」伴走したい気持ちが強くあります。ただ、墓場までというのは違和感で……このご時世、お墓を持たない人も多いし墓場まで伴走するイメージがどうしてもつかないのです。
 
そこで、今の私は「たまごからおばあちゃんまで」に、伴走し寄り添い、応援者でいたいと思っています。これは、これから変化していく可能性もあるとは思いますが、今のところは私の目指すところです。ありがとうや感謝を求めるのではなく、私自身も一緒に、まだまだ成長し続けたいと思っています。
 
「助産師の仕事はお産だけではない! たまごからおばあちゃんまで、すべての女性に伴走する魅力ある仕事」であることを、知ってほしい思いを記しました。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2022-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事