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25年間の結婚生活にピリオドを打つ気持ちになった理由


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記事:牧 奈穂 (ライティング・ゼミNEO)
 
 
「相談したいことがあるから、夜電話できる? 円満に離婚してほしいんだ。急でごめん」
なかなか会えない夫に、連絡を入れた。夫は、結婚生活最後の2年間は、単身赴任でうちにいなかった。その時間が、私の心に少しずつ変化を与えていった。変化というより、覚悟かもしれない。次第に私は、単身赴任ではなく、別居だと思うようになっていった。私の突然の言葉に、「急だね……」と、夫は少し驚いていたが、いつものように冷静だ。
 
私が離婚を決意したきっかけは、ある出会いがあったからだ。
息子のことで悩み、様々なことを調べているうちに、ある人のブログを見つけた。そのブログの、彼の考えに惹かれ、6年分くらいあったブログの投稿を全て読み尽くしてしまった。そして、読んでいるうちに、行間から溢れる彼の人柄に惹かれている自分自身に気づく。「私が惹かれる人は、どんな人なのだろう?」そう思いながら、彼が主催する勉強会に行き、初めて彼に会ったことを覚えている。その後は、彼に、息子のことを頻繁に相談するようになった。彼から見れば、私は、単なる相談者の一人だったのかもしれない。だが、毎日のようにメールをするうちに、「一度食事でも行きませんか?」と彼に誘われ、個人的に会うようになった。
 
夫は、私の「先生」だった。12歳年上で、いつも冷静な人だ。裁判官のように、正しいことをジャッジするというのだろうか。決して感情的にならない冷静さが、ロボットのようだ。「もっと感情的にならずに……」といつも私は言われていた。1つ夫の問題点を挙げるとすれば、女性問題だろうか。私はその度に心が深く傷ついた。「ごめん、ごめん。もう二度としないから……」と、取り乱して私に謝ってくれたら、私は許せたかもしれない。だが、自分がしたことを、まるで誰か他人がしたことのように、冷静に振る舞う夫の姿を見ると、心を閉ざす以外に、自分の心を保つ方法が見つからなかった。
私は、大学生の時に結婚したから、恋愛経験がほとんどない。だから、本当に自分に合う人、合わない人を見極めていないまま、「自分」も分からずに結婚したのだろう。小さな子が、「将来の夢は、お嫁さん……」と言うことに、近いのかもしれない。両親が離婚をしていたから、家族が揃って晩御飯を食べる、そんな「当たり前の普通の家庭」に憧れていたのだ。早く結婚がしたかったのかもしれない。
 
夫とは正反対に、彼は心を大切にする温かさのある人だった。彼といると、自分自身が自然体でいられることに、心地よさを感じた。彼は、私と好きなものが違う。山が好きな彼と海が好きな私といったところだ。だから、磁石のN極とS極のように、強烈に惹かれた。魂が惹かれるという言葉が一番かもしれない。彼とただ一緒にいるだけで、心がとても満たされる。傷つかないようにと、体に力を入れる必要もない。彼といる時間は幸せだったが、幸せな思いをすればするほど、同時に心が痛んだ。「私は、正しいことをしていない。まずは、離婚が先のはずだ。このままどうしたら良いのだろう?」
息子を傷つけたくないし、一人で働いて息子を育てる自信もない。そして、私と同じように、彼も苦しかったのかもしれない。
ある日、「気になる人がいるんだ」と、彼が私に打ち明けてきた。
「どうぞ、そちらに行って下さい」すぐに彼に言った。
家庭のある私は、彼を引き留める権利もない。彼が私から去りやすく振る舞うことが、私が最後にできる優しさだった。
 
彼とメールもしなくなり、会えなくなると、想像以上の苦しみがやってきた。朝起きて、カーテンを開けると、悲しみが襲ってくる。「あぁ、もう彼に会えないんだ」自分の一部がなくなってしまったかのように、心が痛い。仕事を終えて、ビルの外に出ると、涙が出る。父が亡くなった時よりも泣いた。彼に会いたくてたまらなかった。
「もう、我慢するのは、やめよう……自分に嘘をつくことも、やめよう……」
彼を失ったことで、やっと自分に正直に生きる道を選ぶ決心ができた。決して、離婚は楽なことではなかったけれど、彼を失ったこと以上に辛いことは何もなかった。
 
スーパーで、年配のご夫婦が買い物をしている姿を見ると、不思議に思うことがある。歳を重ねていく中で、夫婦の愛情は、どのように形を変えるのだろうか? 苦しみや悲しみを共にしながら、熟成させていく愛の形とは、どんなものだろう? 夫婦なんて、我慢するもの、妥協は当たり前……そう自分自身に言い聞かせ、諦めて生きてきたように思う。
 
出会いも別れも、ある日突然やってくる。自分ではどうすることもできないが、その出会いや別れに、どんな意味を持たせ、その先の人生をどう切り開いていくかは、自分自身が選び取ることができる気がする。
 
短い間に、急速に惹かれた彼の存在は、私にやり直す勇気を与えてくれ、私が私らしく生きられる道へと導いてくれた。今、新しい道で、私は彼に感謝しながら生きている。彼との出会いを、一生忘れることはないだろう。もし、彼のような人にまた出会うことがあれば、愛とはどんなものかを、今度こそ、その人と学び直してみたい。
 
 
 
 
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2022-04-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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