メディアグランプリ

私の髪色はピンクアッシュ以外、許されないらしい


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:川端彩香(ライティング・ゼミNEO)
 
 
数年前に、イメコンの一つであるパーソナルカラー診断を受けた。
パーソナルカラーとは、その人の顔色が良く見える色は何色なのかを診断するものだ。診断を受けると、髪色、コスメ、トップスに持ってくる服の色など、より自分に似合う色がわかるようになる。数年前から女性たちの間で流行っていて、その流行りに乗っかり、友人と一緒に受けに行った。
 
診断してもらって、私はわかりやすいくらいに変化した。
まず診断結果に合っていない服を全部捨てた。そしてコスメも例外なく捨て、診断結果に合った新しいものを迎え入れた。そして美容院に行き「この髪色にしてください」と、徹底的に調べ上げた自分に似合う髪色ナンバー1の色に染めてもらうようオーダーした。
 
私に似合う髪色ナンバー1は、ピンク系だ。
ピンクは可愛い女の子のためだけの色であると思っており、生まれてかれこれ30年間、出来る限り避けてきた色だ。何より、似合わないと思っていた。
 
でも診断を受けて、ピンクにも様々なピンクがあることを知った。黄みがかったピンクもあれば、青みがかったピンクもある。ショッキングピンクやパステルピンクなど、色の濃さでも違う。自分が身に纏っても違和感のないピンクがあることが、可愛い女子でいてもいいよと肯定された気がして、少し嬉しかった。
 
診断結果で、私はくすんだ色が似合うとのことだったので、ピンクアッシュをオーダーした。
 
診断結果をもとに、確実に似合う色に染めているので、当たり前だがめちゃくちゃ似合っていた。今までやったことのない新しい髪色に染まった私は、まさに新しい私になったようで、まさにBRAND NEW WORLDであった。垢抜けるって、こういうことなのか! 自分に似合うものに変えるだけで、こんなに変わるとは!
 
それから1年くらい、私は飽きずに毎回美容院でピンクアッシュに髪を染めた。
担当してくれている美容師さんも「似合ってるね~」と毎回褒めてくれるし、友人や会社の人たちも「可愛いやーん」と言ってくれ反応も良かったし、何より自分でも似合っていると思っていた。
 
だけど、1年以上同じ髪色だと、やっぱり少し飽きてきてしまった。また新しい私に出会いたい。初めてピンクアッシュに染めたときのような、トキメキに出会いたい。またBRAND NEW WORLDしたい!
そこで私は再びネットで自分に似合う他の髪色を、診断結果をもとに探し始めた。
 
「ブルー系の寒色も似合わんことはない」と書いてあったので、これだ!!!! と思った私は美容院に行き、ブルー系に染めてもらった。染め終わり、さぞかし似合っているだろうと鏡に映っている自分を見た。ピンクアッシュに比べると少し暗めで落ち着いた印象だな、と思った。初めてピンクアッシュに染めたときほどの衝撃はなかったが、まぁ、似合ってなくはないだろう、という感想だった。
 
翌日、1年ぶりにピンクアッシュじゃなくなった髪色で出社した。
初めてピンクアッシュに染めたとき、周りの反応は上々だった。なんなら、普段あまり喋らない同僚にまで「良い髪色ですね」と言ってもらえた。今回のこの髪色は、どんな反応なんだろうか。みんな、なんて反応するんだろうか。
 
いつもよりルンルン気分で出社した。「おはようございまーす」と、いつもより気持ち少し明るく挨拶してみた。すると、一人の先輩が「染めた?」と話しかけてきた。先輩は、私がピンクアッシュの髪色にしたとき、ものすごく褒めてくれた人のうちの一人だ。
 
キター! と思い、「そうなんですー! ピンク飽きたんで、ブルー系に変えてみました!」とご機嫌に答える私。でもご機嫌な私とは反対に、先輩の顔はなんだか微妙だ。あれ、もしかして、雲行き怪しい?
 
「……前の方が良かった」
 
……ん?
 
「ピンクの方が可愛くて良かったのに。なんでその色にしたの?」
 
……グサッ。
 
おかしいなぁ……。ちゃんと診断結果をもとにリサーチしてオーダーした髪色なんだけどなぁ……。いや、異性の好みじゃなかっただけで、同性はまた違った意見があるのかもしれない……(先述した先輩は異性である)。
 
社内の廊下を歩いていると、別の先輩(同性)に声をかけられた。
「……前の方が良かった」
 
……デジャヴか?
 
「ピンクめっちゃ似合ってたのに~。なんで変えてもたん?」
 
……デジャヴかもしれない。
 
その後も、両手では足りない人数の同僚に次々声をかけられ、ほぼ100%の確率で「前の方が良かった」と言われた。
とある優しい同僚は「似合ってないことはないんやけど、前がめちゃくちゃ似合ってたから、それと比べると……」と言ってくれたが、つまるところはピンクアッシュ大優勝ってことで、今時の若者風に言うと、ピンクアッシュしか勝たん、ということだ。
 
後日、美容院へ行き「不評すぎたのでピンクアッシュに染め直してください」とオーダーした。美容師さんは笑いながら「自分の好きな色にしたらいいだけなんだけどね~」と言ってくれた。そうですよねー、と相槌を打ったが、再びピンクアッシュに出戻りした私の髪色を見た美容師さんは、少し気まずそうに言い放った。
 
「……うん、ごめん、やっぱ川端さんはこの色がしっくりしてるわ」
 
うん、わかった。
私もう、一生ピンクアッシュに染め続ける。
 
以降、たまにポイントでブリーチを入れたりしつつも、変わらずピンクアッシュに染め続けている。染め直すたび、みんな褒めてくれる。気分が良い。ピンクアッシュしか勝たん。
 
私は今週末、美容院へ行く予定だ。
しかし、あろうことか再びピンクアッシュに飽きてしまっている。
そのことを先輩に告げると「黙ってピンクアッシュにしとけ、間違いないから」と言われた。「またみんなに『前の方が良かったのに』って突っ込まれるで」とも。
 
好きな髪色にすればいいだけだ、とも思うのだが、社内には私の髪色を気にしてくれているファンの人たちが想像以上にいるようだ。ファンのためにも、もうしばらくは彼らのご希望に沿ってピンクアッシュの髪色で過ごしたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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