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ハリネズミは懐かない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小田恵理香(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
帰宅し、ポストでいつものように郵便物をチェックする。
すると
 
“1周忌のご案内”
 
動物霊園からの案内だった。
 
「もう1年か」
 
我が家ではハリネズミを飼育していた。
4年半の共同生活だった。
 
動物好きだった夫と私は当然のようにペットを飼うことを考えていた。
物件を選ぶ際も
“ペット飼育可”
であることを条件に探していたのだ。
だが入居当日、大家から渡された冊子に
 
“ペットは一切飼育不可、預かることも禁止します”
 
との記載があった。
私と夫は目が点になった。
ペットを飼育できる物件を探し、不動産会社にも再三確認したうえでのこの出来事は、とにかく寝耳に水状態だった。
引っ越し初日に様子を見に来た不動産会社の担当者にその冊子を見せた。
しばらくして戻ってきた担当者は
 
「大家さんには注意してきました。ペットは飼育して頂いて構いません。ただ吠えない、爪を立てない生き物でお願いしますとのことです」
「それって小動物ってことですか」
「そうですね。散歩が必要な動物もNGとのことです」
 
要約すると、犬猫は不可、鳥類は不可、小動物でも散歩の必要がある動物は不可ということだった。
小動物の販売コーナーを見ると当時圧倒的に多かったのはハムスターだった。
だが私がハムスターに対してアレルギーがあり飼育は出来ない。
そんな中私たち夫婦はハリネズミに出会った。
 
基本的にゲージの隅で丸まり、兼山のように鋭い針。
その時たまたま起きていたハリネズミがいたのだが、その表情の何とも言えない愛くるしさに目を奪われた。
 
「ハリネズミを飼おう」
 
夫と私は決めた。
その場では決めずに一旦家に帰り改めて調べることにした。
ハリネズミは基本的に夜行性の動物である。
昼間仕事に行く私たちには好都合で、散歩の必要もない。
大きな声で鳴くことや、壁や床に爪を立てることもほぼない。
だがまず一つの大きな壁にぶつかった。
それは圧倒的にハリネズミを診てくれる動物病院が少ないことだ。
大半の動物病院は犬・猫が対象である。
小動物も診てくれる病院もあるが、ハリネズミは診療の対象外という所が多かった。
原因はその鋭い針だ。
診察しようとするにも、とにかく針を立てる。
精査しようとなると全身に麻酔をかける必要があり、ハリネズミへの負担が大きい。
そのため診療してくれる動物病院は限られているのだ。
幸いにも家から徒歩15分の所にハリネズミを診療してくれる動物病院が見つかり、飼育することが決めた。
 
ペットショップではあれだけ夫と私が素手で抱き上げても怒らなかったが、いざ家に迎えるとハリネズミ専用の革手袋なしでは掴むことができなかった。
もちろん、むやみやたらに触ることはしなかった。
迎えて1週間、やたらと手で体を掻くことが多いことに気が付いた私たちはさっそく調べていた動物病院に連れていくことになったのだが、掴むのがとにかく大変だった。
 
獣医から知らされたこと。
ハリネズミは外こそ針に覆われているが、その内側はかなり敏感肌だということ。
個体によっては床材でアレルギーを起こし、輸入の段階で付着しているダニによる皮膚炎も多いそうだ。
迎えた我が家のハリネズミもそのダニによる皮膚炎を起こしており、治療のために3回通院した。
獣医から言われたのが
「ハリネズミは基本的に懐きません。ですが慣れることはできます」
という言葉だった。
アドバイスを受け、匂いを覚えて慣れてもらうことを実践した。
ハリネズミは警戒心の強い生き物で、嗅覚と聴覚が優れており、匂いと声を覚えてもらうことで信頼関係を築けるとのことだった。
私と夫は握りしめて匂いをしみこませた布をゲージに置き、できるだけ声をかけるようにした。
朝起きた時、仕事に行く時、帰ってきた時、ごはんや水を置いた時、寝る時など。
ストレスをかけない程度に声をかけた。
迎えて1か月が過ぎようとしていた頃には、声掛けに反応するようになり私たちの匂いを嗅ぎに来ることも増えた。
3か月を過ぎる頃にはハリネズミ専用の皮手袋なしでも触れ合えるようになっていた。
ただむやみやたらに触れ合おうとはせず、抱き上げる前には必ず匂いを嗅がせ安心させてから抱き上げるようにはしていた。
この日以降、帰宅すると寝ていても起きて駆け寄ってくるようになり、すっかり家族の一員となっていた。
 
予想外だったのが、ハリネズミはかなりの偏食である。
ペットショップで食べていたフードを最初使っていたが、ある日ぱたりと食べなくなった。
フード自体も2種類を混ぜて食べていたため、同じように与えていた。
そのうちの1種類しか完全に食べなくなってしまったため、1種類のみを与えていたら飽きてしまったのか食べなくなったのだ。
慌ててペットショップにもう1種類を買いに走った。
その日からしばらくは急いで買ったフードをしばらく食べていたが、それも食べなくなり、今度は試しにサンプルでもらっていた全く別のフードを与えたらあっさりと食べた。
何種類ものフードが常備してあるのはハリネズミ飼育者にはよくある話だそうだ。
 
動物病院も少ないのもあるが、同じくペットホテルが少ないのもハリネズミの現状だ。
原因はそう、針である。
急遽身内に不幸があり、翌日には飛行機に乗って向かわなければならなくなった。
季節は冬、行先は青森県。
ハリネズミは暑さに弱く、寒さにめっぽう弱い。
そのため夏場は日中エアコンで温度管理をきっちりしておく必要があり、冬は小動物用のヒーターを入れる必要がある。
ハリネズミは飛行機に乗せることができるが機内に持ち込みは出来ない。
貨物室行きである。
外気温の影響を考え、寒さにめっぽう弱いハリネズミを真冬の上空に晒すのはさすがに危険だと感じた。
友人に預けるなどは考えられず、慌てて調べるが預かってくれるところはほとんどなかった。
この時にお世話になったのは民間の自宅をペットホテルとして開業している人の所だった。
“ハリネズミ”
“ペットホテル”
“西宮市”
と入力して検索し辿り着いた。
とても親切な方で夜遅い急な問い合わせにも対応してもらい、預けている間もLINEで様子をこまめに送ってくれた。
迎えに行った時はしばらく子供のように拗ねていたがしばらくすると
 
「クック」
と嬉しい時の鳴き声を聞かせてくれた。
本当に愛らしかった。
 
そんな我が家のハリネズミとの別れは突然にやってきた。
いつもきっちり完食するはずのフードを全然食べていなかった。
様子を見るとかなりぐったりしていて、急いで動物病院へ連れていく。
肺炎だった。
治療の甲斐なく、病院から帰宅しそのまま息を引き取っていた。
突然の別れにショックは大きかったが、最後まできっちり見送ろうと動物霊園へ連れて行き火葬してもらった。
4年半の共同生活。
2~5年の平均寿命を考えると長生きしてくれたものだ。
 
飼い始めた後半は当初よりハリネズミ用の飼育グッズも増え、診てくれる病院やペットホテルも増えたことを体感した。
同時に飼い切れないと手放す人も多いと聞く。
 
ハリネズミは懐かない。
だが慣れることはできる。
これはハリネズミ限らず、多くの動物に言えることだと思う。
今度動物を迎える時も懐かせようとせず、とにかく慣れてもらおう。
最後まで責任をもって。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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