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メディアグランプリ

実は買い物好きな父のストーリー


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:みなみあすか(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
「この位の大きさの置物買ってあるからよかったら持って帰ってくれ。向こうの部屋の段ボールに入れてあるから……」
手で約30cm位の高さ示しながら、別の会話の途中に突然のオファー。
「ありがとう。後で見ておくね」 一体何の置物だろう?
 
コロナ禍でだいぶ片付けて家の中もすっきりさせ、物は本当に必要なもの、本当に近くに置いておきたいものだけにしようとしていただけに、その30cm位の置物のオファーは正直微妙なオファーだった。
 
恐る恐る……向こうの部屋に行く。
段ボールの中に確かに30cm程の高さの箱があった。
何と、白磁の久谷焼観音像の置物だった。なんで? また観音様なんだろう? 何故私に観音様?
わざわざ買う? 頭の中は疑問符だらけ。
 
その疑問符をいっぱい抱えながら父の元へ行き、「ありがとう。これなんで買ったくれたの?」と直球で聞いてみた。もともとあれこれ沢山話すタイプの父ではないのでボソッと短文で言う。
「色々忙しい大変な想いをしているから、こういうものが近くにあると心が落ち着くと思って……」
なるほど。私は昨年コロナの煽りを受けて転職を果たし新しい職場に慣れるのに少々苦労をしていたことを父は知っていたのだ。その状況を見て、この九谷焼観音像を購入してくれたようだ。
言葉には含まれない父なりの私を応援してくれるストーリーが読み取れた。
えっ、またこんなもの買ってしまって……と思っていた気持ちが一転、これは何としても持ち帰らないといけない、ありがたいと心から思った。
 
次に、父の部屋にいくと重たい段ボールが1つあった。これ何? と聞くと火鉢だという。
これは妹に買ったプレゼントだったようだ。
しかし、妹は商品を見ずしていらない……と拒否してしまったようだった。
段ボールの中の商品を見ると、白地に茶色の模様が描かれたモダンな火鉢だった。
「商品を見ずしていらないと言われてな……」と、若干寂しげな表情にもう少し踏み込んで質問を投げてみた。「なんで火鉢なの?」 妹は瀟洒な洋館の家を建てていた。
「あの家のエントランスの植物を植えているところに植木鉢として置くといいと思ってな……」という。
確かにこの火鉢の雰囲気と妹の家の雰囲気は私の感覚でもマッチしていた。
人の家ではあるが、自分なりに何度か訪れながらこのモダンな趣をもつ火鉢がその場にマッチしたんだろう。この火鉢をここに置いたら素敵に違いないという父なりのストーリーが私には分かった。
 
ゴールデンウイークの帰省を終え、自宅へ戻った時だった。この日は母の日。
母から1枚の写真がラインで送られてきた。
 
母がワイングラスを片手にハンバーグとキッシュがテーブルに並べられて笑顔でピースをしている写真だ。若干ブレ気味の写真だったので、恐らく父が嫌々撮影したんだろうということが推察された。
 
「パパが母の日のお祝いに車椅子でスーパーに行って、日本橋泰明軒のシェフ監修のハンバークセットとキッシュを用意してくれたの!」 何とも嬉しそうに報告してきた。
 
母には全くのサプライズだったようだ。高度経済成長期を支えてきた仕事一筋のビジネスマンであった父は家のことは全て母任せで、家のことは一切やらない典型的な亭主関白タイプ。
気持ちはあるんだろうが、ありがとうとかもあまり口にしない。
そんな父なので母の日に何かプレゼントするとは誰も想像できなかった。
 
その父が車椅子を走らせて2km程先のスーパーに自ら出かけてハンバーグとキッシュを購入してくれるとは家族としては感動的なことだった。その買いに行く姿と想いを想像するだけでも心に熱いものが湧き上がってきた。
 
泰明軒は母にとって縁のある洋食屋だった。若かりし頃に勤めていた日本橋にある老舗デパートのお向かいにあったお店でもあり、大学の学食でも提供されていたという懐かしい洋食屋さんだった。
父はそれを知っていて、事前にリサーチして購入したという。
そこにも父なりのストーリーがあった。
 
九谷観音像にしろ、火鉢にしろ、泰明軒監修のハンバーグセットにしろ、父の頭の中で描かれたストーリーがある。物を購入する、プレゼントするということは本来このようにその人を思って、その想いを物に託すことなんだと改めて教えられた気がした。
 
今まで色々な方にプレゼントをいただき、嬉しいものが沢山あったが、久谷観音像、火鉢とあまりにも突拍子もないプレゼントだっただけに、ここまで深くプレゼントに込められたストーリーを読み取ろうとしたことはなかった。ひねりが効いた想いを紐解く。なかなか面白い。
 
日本に古くからある贈り物文化。
お世話になった方にお中元、お歳暮を差し上げ感謝の気持ちを伝える、退職される方にお疲れ様と労う気持ちを伝える、入学する方におめでとうとお祝いの気持ちを伝えるなど一言に贈り物といってもその目的は様々で、その贈り物には様々な想いが込められている。
これから贈り物をするときにはその人を思い描いて気持ちを贈り物に託してみる。また贈り物をいただいたときにはどんな想いが込められているんだろう?と託された想いを紐解いてみる。
贈り物は想いのキャッチボールだ。
 
「パパって実は買い物好きでしょ」というと、ニヤッと笑ってうなずいた。
そう、どうやら買い物が好きらしい。
父は贈り物の達人だ。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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