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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:bajio(ライティング・ゼミ 2月コース)
 
 
「じゃあ解決策を提示してください」
「……」
 
次の言葉が出てこない。
いつもこうだ。
 
わたしの仕事でのあるある。他部署との交渉をすることが多い仕事。予算の調整、部署事の役割分担。また、部署の中でも上司と部下の間、いわゆる中間管理職という立場から調整役となることが多く、その中でうまく物事を進めないといけないのだが、いかんせん、口下手なのだ。
大事な交渉の場面で、一言が出てこずに、相手の思うようにやられてしまう。「このまま終わらせてしまったらあとが大変だ、なんとか挽回しないと」と焦りながらも次の言葉が出てこない。泣く泣く相手の言うがままで試合終了。相手から投げられたボールを持ったまま、途方に暮れることも一度や二度ではない。
 
そんなこんなで仕事が終わり、みじめな気分で家へ帰る電車の中。わたしはいそいそとスマホを出し、YouTubeである動画をみる。
 
それはラップバトル。MCバトルとも言う。
少し前にテレビで「フリースタイルダンジョン」という番組がやっていたので、見たことがある方もいるかもしれない。
ラップバトルとは、2人のMC(プレイヤー)による対決。DJがその時に流す音楽(ビート)に合わせて、交互にラップをする。そのスキルを競い合うもの。交互に言葉を発することで、相手への掛け合いとなり、さながら口喧嘩のようになる。人の口喧嘩を聞いたところで面白くもないと思われるだろうが、それぞれのMCのラップのスキルが相まって、ひとつの作品のようになる不思議な魅力があるのだ。
ちなみにラップバトルのスキルは大きく分けると以下の通り。
 
ライム:韻を踏むこと
フロウ:いわゆるメロディ。MCがかなでる歌いまわしや言葉の節回し
パンチライン:キラーフレーズ。相手や聞いている人の心に残るもの
そして、アンサー: 相手が言ったことに対する返答
これからの完成度により、聞いている客の盛り上がり、歓声の大きさで勝負を決めたり、審査員による判定で勝負が決まるのだ。
 
そして、なぜ私が仕事帰りにいそいそとラップバトルを見るのか。それは、MCが繰り広げるアンサーが見事であるからである。
アンサーは上述の通り、相手が言ったことに対する返答である。お互いがラップを披露するMCバトルはいわば対話であり、相手が言ったことにどう返せたか、というのが勝敗を決める大きなポイントとなる。そして、それは、まさに即興。用意したネタでは当然太刀打ち出来ず、その場で瞬時に相手に返答する。このアンサーにいつも関心してしまうのだ。
 
例えば、都道府県の代表が集まる大会。1人のMCの「お前が代表なんてその県が泣いているぞ」に対し、「嬉し泣きにはまだ早いぞ(これからお前を倒して優勝するからそれまで待ってな)」というアンサー。これを瞬時に繰り広げるからもうただ感心するしかないのだ。
 
仕事でうまくアンサーが出来ない自分と重ね合わせ、なんだか代わりに言いたいことを言ってもらったようなカタルシス。心にたまっていたものが浄化されるような、そんな気持ちになれるのだ。
 
なぜこんなにすらすらと言葉が出てくるのか、感心しながらもYouTubeで動画を漁っていると、ベテランMCのインタビューでこんな言葉があった。
「俺はテレビで取り上げられるようなでかい大会だけに出てるわけではない。みんなが休んでいる時も地方を飛びまわり、小さい大会に出てるんだ。他の奴とは場数が違うんだから、上手くて当然だ」
華やかなスキル、勝利の裏側には、そのバックボーンとなるたゆまぬ努力、経験があったのだ。
なんだか自分に言われているような気がした。いつも苦手な交渉をできるだけ避けようとしているわたし。それでスキルが上がるわけはない。
 
そして、別のMCは言っていた。
「俺はバトルだからって口喧嘩のように相手を言い負かすことは全く考えていない。2人が、その場で同じテーマを語り合う。それによって思ってもみなかったような考え方を発見するのが楽しくて仕方がないのだ」と。
これも私に刺さった。
いつも相手を言い負かそう。相手は言い負かしに来る、と思っているのでは、いい結論には至らない。そうではなく同じ方向を見て新しい解決策を探って行くことができればお互いにとってより良い方向に進めるのではないだろうか。
 
「じゃあ解決策を提示してください」
「……お互いにとって良い解決策になるよう考えてみませんか」
 
スポットライトを浴びるラップバトルの猛者さながらに、いいアンサーを返すため、今日も会社というステージでバトルに挑んでいく。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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