メディアグランプリ

大きな宝物を見つける方法を教えてくれた痛い経験


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:みなみあすか(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
「久しぶり~。変わってないわね」
20年ぶりの元同僚と嬉しい再会を果たした。最近転職した私に……
「何年働いていたの?」
「28年……」
「28年も!……よく続いたね。すごいね」
彼女は3年で退職していた。確かに長さだけみれば約9倍なのですごいことなのかもしれない。
聞くところによると、彼女はその後3つも会社を渡り歩いていた。
むしろその方が私にとってはすごいことだと思える。
 
そんな私も若かりし頃は「この仕事を続けていてもいいんだろうか?」
「もっとやりたいことができるところがあるのではないだろうか?」と悶々としていたことを覚えている。
そう、隣の芝生は青く見えるのだ。
だから、彼女はその想いを素直に実行できた人とも言える。
一方私は28年も同じ会社で働いた。
なぜ私がここまで長く腰を据えて仕事ができたのか?
その理由を探っていくと学生時代の痛い経験に辿り着いた。
 
高校のソフトボールの引退試合の日だった。
3年間の締めくくりの試合とあってチーム内には気合がいつも以上に入っていた。
私はそんな同期の仲間を遠くから見守りながらどこか複雑な想いを抱えてベンチを温めていた。
 
私はピッチャー、バッター1番のポジションを1年生からレギュラーを勝ち取っていて、いわゆる花形というポジションにあった。しかし、進学校にいた私は学業との両立が叶わず、3年生になった時、
退部を申し出た。
退部届を監督に提出し、止めもなくすんなり受諾された。
「これで勉強に力を入れられる……」と肩の荷を下ろしほっとしたのもつかの間、これが大きな誤算であったことに気付くのだ。
授業が終わって、仲間達はグランドに集まっているのを横目に帰宅していくが、気になって仕方なく
全く勉強に力が入らないのだ。
たった数日で「やっぱりソフトボールがやりたい」と降参し、監督に退部の取り消しを申し出に行った。
監督は退部する時と同じくすんなりと退部取り消しを受諾した。
これで好きなソフトボールができると思った。
しかし、元の状態には戻れなかった。たった数日だったのに……。
監督は私を元に戻さずレギュラーから外した。私はボール拾い、ノックのサポート、ピッチング練習の相手、道具の掃除、コート整備など、仲間の練習のサポート役となり、完全に選手からはずれ、試合にも出れなくなったのだ。数日前までは逆に仲間から色々してもらう側だったが裏方に一転した……。
一緒にやっていた仲間がカッコよく見える。眩しいくらいに……。
 
まだその当時はイジメという言葉もない時代だったので、イジメとも思わず、
ただひたすら退部したことを後悔する日々だった。なんてしくじってしまったんだろう。
そして、一度辞めたらこういうことになるということを知らしめられた経験だった。
全く想定外だった。
毎日毎日が屈辱の想い。しかし、明るく仲間をバックアップする自分とのギャップに実は傷ついていた。しかし、私は悔しい想いを胸に最後までやり遂げることを誓った。
ここでやめてはいけない。
引退試合までの10カ月間、毎日これを続けた。
 
そして、その引退試合の日。
7回2アウト。あと1席といったところで、
ベンチを温めながらこれで最後の日がまもなく終わると思った。
私も10カ月裏方でよく頑張ったと自分に労いの言葉をかけていた。
その時である。監督から呼ばれた。
「行ってこい」
「えっ、は、はい……」
びっくりしたものの急ぎヘルメットとその辺にあったバットをもってバッターボックスに入った。
思わず出てきた涙でボールが見えなくなる。
最初の一球目。
私は今までの想いを全て振り切るように大きくバットを振った。
その球は外野を超え隣の会場まで大きく飛んでいった。
場外ホームランだった。
私の今までの想いが全て入った渾身の一振りだった。
1塁、2塁、3塁、そしてホームへ。
もう前が見えない程の涙が溢れていた。
仲間達がホームベースで待っていてくれた。
 
最後までやり遂げてよかった。苦しかったが最大の爽快感を味わった瞬間だった。
途中で退部したからこそ分かったことは大きかった。
一度辞めたら一からやり直しになること。
私を支えてくれていた仲間がいたこと。
そんな視点を持てたこと。
今となってはそれらを体験として教えてくれた監督には感謝の気持ちでいっぱいになる。
 
この痛くて苦い経験はその後の私の人生選択に大きな指針となっている。
隣の芝生は青く見える
その後の人生の中で何度も横目にしてきた。
もっといい世界があるかもしれない、あっちにいけば希望通りの生活ができるかもしれない。
もっと成長できるかもしれない。
ふらっと気持ちが過っても、いやいや……こっちでしょ……まだやることあるでしょう……と
元のポジションに戻してくれる。
それは高校時代の痛い経験が教えてくれたこと。
 
転職を果たした今、業界は違えどこの年月で経験したことの多くが応用できることに驚いている。
「一つの道を究めた物は全ての道に通じる」というが、継続は力なりなのだ。
今掘っている穴を途中にして、次の穴を掘りだす。その穴でないと思って、次の穴を掘り始める。
結局、どれも浅い穴しか掘れず、欲しいものが得られない結果となってしまう。
一つの穴を掘り下げていけばその穴は結局全てに通じるのに……。
そう、自分の外側に求めるよりも、まずはじっくり自分の内側を掘り下げていけばより多くの宝物を掘り起こすことができるのだ。
 
一つのことに踏ん張ることの大切さを教えてくれた痛い経験が今はありがたい経験となって
私を支えてくれている。
より広く、より深く世界をみるためにこれからも一つの穴をワクワクしながら掘っていこう。
どんな宝物が見つかるだろうか。
ワクワクが止まらない。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2022-05-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事