『会計の地図』は、劣等感という重たい扉を開いた。
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記事:森本裕子(ライティング・ライブ東京会場)
読書感想文を書くのはいったい何年ぶりだろう?
『会計の地図』という本について書きたいなという熱量が、私を机に向かわせている。
理由は、私が長年抱えている劣等感から抜け出すきっかけをくれた本だから。もし似た状況の人がいたら是非オススメしたい!
ということで、本の魅力を書く前に、まずは私の劣等感について語っておきたい。
始まりは高校2年生に進級した頃、学校の数学の授業が急に難しく感じ、何度聞いても理解できなくなり、みるみるうちに成績が落ちてしまった。数学の模試の点数が、学年最下位から数えて5番目になってしまった私は、目指していた理数系の大学進学を諦めた。
高校2年生の挫折は、なかなか受けとめることができなかった。
同じ道を目指す同級生は、大学合格に向け数学の問題集をスラスラ解いているのに、それができない自分を認めることができず、その後は数学を徹底的に避ける高校・大学生活を過ごした。
「数学なんて一生懸命勉強しても、大人になって役に立たないんだから」今思えば劣等感から来る完全な負け惜しみだが、当時はそんな事を周りに言い散らかしていた。
しかし就職をきっかけに、数字に触れる機会が圧倒的に増え、逃げてきた道は避けて通れなくなった。私はメーカーに勤めているので、自社商品を開発→製造→販売するのが仕事。開発費用や製造コストや販売価格、さらには売上や利益といった、数字やお金の流れを理解していないと、仕事の成果を上げられない。
周りの同僚は自分より数字に強い。数学で挫折した私は数字に弱いから仕方ない。そんな事を思いながら、売上分析をスマートにやってのける同僚の姿を横目で眺めていた。
中でも、高校時代のアノ劣等感を蘇らせたのは、会社の決算書類の数々……。
例えば、貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)という書類。表の中に必ず、資産・負債・資本……という言葉が出てくるのだか、私にとっては高校の数学の授業の、微分・積分・関数……を思い出してしまう。理解したい気持ちはあるものの、長年の劣等感から、どうせ分からないと気持ちが閉じてしまっていた。
そんな中、昨年『会計の地図』という一冊の本に出会った。最初に目に入ったのは〈もう誰も挫折させない〉という本の帯のコピー。
半信半疑で本を開くと、そこには難しい言葉や数式や計算はほとんど無く、代わりに沢山の図が描かれていて、読むというより見る内容になっている。そして図を順番に眺めていると不思議なことに「なるほどー」という言葉が口から出てくるのだ。
ここからは、数字やお金の理解に劣等感のある私が『会計の地図』を読んで感じた4つの魅力を語っていきたい。
1つめは、仕事と関係のある数字やお金の事について、シンプルな図と易しい言葉で、私の様な人にも分かりやすく描かれている所だ。
数学が嫌いになる理由として、専門用語や公式など、覚える事が多い点が挙げられるが、一方この本は暗記という負担感も一切ないので、苦手意識のある人にとって導入ハードルが低く途中でイヤにならない。
2つめは、お金の流れや会計の仕組みが、1つの同じ図を元に紹介されていくので、新しい事をバラバラと覚えていくのではなく、つながりを持って全体像を理解できる所だ。
その図の事を、本の中では〈会計の地図〉と呼んでいて、頭の中に地図をイメージして本を読んでいくと、新しい事を知る度に、地図全体のどの部分か関連させて理解できるので、途中で急に挫折することがない。
3つめは、親しみのある他社企業の会計にまつわる実例を交えて書いてあるから、机上の学びだけでなく、現実に置き換えやすい所。「私のいる会社はどうなっているんだろう?」と自然に置き換える気持ちが生まれ、受け身な学習だけでなく、自分ごとにしやすくなる。
4つめの魅力は『会計の地図』は本の内容をnoteのホームページ上で、まるごと無料公開している。(会計の地図 note で検索!)
これを知った時は「そんなサービス精神アリなの?」と驚いたがこれが結構重要で、本を読み終わった後も、日々仕事で目にするニュースや資料を読む時に「あれ?自己資本比率って何だっけ?」となったらすぐにネット検索できて、その場で復習できるのだ。いつも本を持ち歩く訳ではないので、今知りたいポイントだけをすぐに見直すことができる。
他にも魅力を語ろうと思えばキリがないが、『会計の地図』との出会いをきっかけに、「どうせ分からない」という重く閉じた私の気持ちの扉が開きつつあり「もしかしたら分かるのかも?」という心持ちで、前述の貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)についても、先入観なく読むことができる様になっていった。
さらに理解を深めるために、自社の過去10年間の会計の推移について、専門用語を使わずに眺めるだけで流れが分かるグラフを作ってみたり、時には自分なりに解釈した図を描いて、周りの同僚に思いきって見せてみた所「分かりやすい!」という反応をもらえ、さらにそこから新しい気付きが生まれた時は、長年の劣等感がサーッと洗い流された様な嬉しい気持ちになった。
今はまだ「私得意なんです!」と周りにアピールするほどの勇気はないけれど、『会計の地図』は劣等感から抜け出したてホヤホヤの私にいつも「分かる!」という安心と勇気を与えてくれる大切な一冊になった。
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