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和装ノススメ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ホシノナオミ(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
着物を着ることは難しくない。ただ面倒くさいだけである。
 
これが着物の着方を習って1年、自分で着物や和装のものを購入しできるだけ自分で着付けをしている正直な感想である。
 
もちろん、お茶会や結婚式などフォーマルな場所に和装で行くことは、踏んではいけない地雷が山ほどあり、私のような素人にはあまりおすすめされないが、自分のためのおしゃれ着として着る分には難しいことはない。
 
ただ、ひたすら面倒くさい。
 
それは着る前に行う準備の手間であり、着る動作そのものであり、片づけであり、着たあとの処理であり、とにかく着ることに付随するプロセスの多さである。
 
和装は選ぶものも多い。
着物そのもの、帯、襟、帯揚げ、帯締め、つけるなら帯留め、足袋、草履、鞄。
組み合わせを考えるは楽しいのだが、時間がない時はその作業すら面倒だ。
 
でも、なぜかこれが楽しいのである。
もちろん、着て外を歩いてみることも楽しいのだが、面倒くさい着付けそのものが楽しいのだ。
 
同じように面倒くさいけど楽しいものがある。
マニュアル自動車の運転である。
 
あれも、手数が多くてオートマ車に比べれば面倒この上ない。
特に坂道で渋滞にはまった時など最悪だ。
オートマ車はただペダルを踏んで離せばすむところを、3つのペダル駆使し、かつ左手でギアまでかえ、同時に坂道で転がらないようにサイドブレーキを上下させる必要があったりする。
手がいくつあっっても足りないのでは?と思ってしまうほどの忙しさだ。
 
でも、これも楽しいのである。
 
着物を着るプロセスとマニュアル車を運転する楽しさ。
そこに私は共通点を見る。
 
それは「モノとの会話」である。
 
古いマニュアル車は特にわかりやすい。
マニュアル車はギアという部品を手動でスピードに合わせて変えていく車である。
そこで考慮するべきは、絶対的なスピードだけではなく、減速したいか、加速したいか、今の道が坂道かそうでないか、乗っている人や荷物の重量、今日のエンジンの調子、天気なんかもあったりする。
一つ一つギアを上下させるたびそれらを全部チェックしているわけではないが、感覚を研ぎ澄まし、最適なギアチェンジができるように対象物(この場合はクルマ)から情報を取得し、その情報に基づいてギアチェンジを行い、その反応からまた情報を得る。
明らかにモノと会話をしているのである。
私はこれがマニュアル車に乗る醍醐味だと思っている。
 
同じことが着物を着ることにも言える。
着物を着ることは布との会話である。
着る着物の素材、厚み、それによって異なるシワの出方、サイズ(大半は自分専用で仕立てているものではないのでサイズがざっくりとしか合わない)、その時の自分の体型(食べた後などは顕著に違う)。これらの状況を把握して試行錯誤するのだ。
 
布に無理をさせるとシワになり、見栄えが悪くなる。
けれど緩くすれば、着崩れにつながる。
布がちょうど良くても、着ている本人が耐えられないほど、きつかったりすることもある。
 
着付けは布と会話をするというより、布を優しく嗜めながら自分の体に沿わせて形づけることといった方が近いかもしれない。
それでも布から情報をもらい、特性を理解し、「この強さだとどうか?」とか、「この角度だとずれずに止まってくれそうか?」などの会話をしていることには変わりない。
 
不思議なもので、クルマも着物も本来そのようにつくられた方法で使ってもらうと、喜んでいるのが分かる。
ピタッといく。そんな感じだ。
 
面倒くさいものから感じる楽しさ。これは昨今本当に贅沢なことになった。
 
世の中は面倒くさいことは全て排除する方向にある。
二度手間三度手間はサービスとして提供されるとき、企業が全力をもって排除する。
それが利用頻度の向上、つまりは利益につながるのであるから、自然な成り行きだ。
 
手間をなくすというのはその対象物とのインタラクション(関わり)を減らすことにほかならない。そして対象物からの情報は必要最低限に集約されていく。
あたりまえながらそこに会話なんて生まれない。
彼らからこちらに発せられる情報も、こちらから彼らにインプットする情報もどれだけ精度を上げて、一発でやり取りを終え、脳の負担を減らせるかの工夫に、たくさんの人とお金が使われている。
 
文化は暇と余白から生まれる。
確かにこう考えてみると、平和で時間と精神的余裕がないと、手間を楽しむことなどできない。モノと会話をする、そんな手間を楽しむという行為が文化の源泉になっているとすると、新しい文化が生まれる土壌は急速に衰えているのかもしれない。
 
今自分は、面倒なものを楽しめる心のゆとりがあるか。
和装の着付けのように、面倒なことをどれほど楽しんでこなすことができるかというのはそんな心のバロメーターとして使えるのではないか。
そういう意味で私はみんなに和装をオススメしたい。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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