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できない、無理と思っても始めることの効果


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:飯塚 真由美(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
朝早く、頭が痛くて目が覚めた。二日酔いだ。
重い頭でヨロヨロと歩いて水を飲む。昨夜はそんなに飲んだつもりはなかったのに、と前の日を思い返す。だめだ、何か考えるだけでも頭が痛い。
また布団に戻り、へなへなと力無く、うずもれるように横になる。
 
飲み屋の店先で見かけて、ごもっとも! と膝を打った言葉がある。
「酒を飲めない人は、人生の半分を無駄にしている。
酒を飲む人は、人生の大半を無駄にしている」
 
1行目を読んで自分がお酒が飲める体質で良かったと思った。
どっこい、2行目で強烈なパンチをくらった。
いたく納得。心当たりが大アリだった。今日の私もまさにそれだ。
今朝もしばらく身動きが取れず、刻々と人生の大半を無駄にしつつある自分を実感していた。
 
いまだに続く頭痛を抱えながら、自分に課したあるトレーニングをせねば、と焦っていた。
私は数ヶ月前からライティングの講座を受講している。最後まで読んでもらえる2000字の文章を書くのが目標だ。
そんな勉強の中、今月の自分に課したトレーニングは1日1回の「15分チャレンジ」だった。
15分間集中して全力で文章を書いてどれだけの文字数を書けるかを記録する。全速力で何メートル走れるか、みたいな練習だ。スピードを上げて書くスキルを身につけたいと思って、このトレーニングを始めた。
 
今日の15分チャレンジもしなくては。でもまだ頭はどんよりと痛い。
今日はやめちゃえば?
サボりたい自分がささやく。それもいいね、とついついなびきそうになる。
頑張れ、自分との約束でしょ、と頑張りたい自分は言う。
 
だったら、二日酔いで書いたらどうなるかを検証するためにやっぱり試してみよう。
妙な好奇心が芽を出した。
いつも書いている時のノートパソコンを開く。視線を落としただけでまだ何だか気持ち悪い。
 
こんなときはとにかく、始めてしまうことが大事だ。自分をその状況に置いてしまうこと。
書く前のルーティーンを儀式のように執り行う。
髪をうしろで結び、Wi-Fiをオフにする。キーボードのFとJに左手と右手の人差し指を置く。そして深呼吸。
強引にスマホのタイマーを15分にセットし、えいっとスタートを押した。
 
いつもは1人の時を選んで静かに集中して文章を書く。書き始めて思ったが、今日は正反対だ。書いている横で夫が横でメジャーリーグの中継を見ている。大谷翔平と菊池雄星が対決中だ。気になる。昨日テレビで見たあの温泉なんだっけ? と話しかけられる。えーっとそれは確か、とつい答えてしまう。
こんな気が散る状況で、しかも二日酔いでどんよりした頭で文章は書けるのか? 初めての試みでもあった。
 
いつものようにあっという間に15分は過ぎ、タイマーが鳴る。
1行も書き進められないのではと心配していたが、予想に反していつものペースで書き進んだ。
自分でもびっくりした。
 
15分が過ぎると、今度は次のチャレンジに移る。
書けそうと思ったら、そこから続けて2000字を目指し、書き終わるまでの時間を計る。ここから先は2000字チャレンジと名前を変える。
不思議なことに15分間全力で文章を書くと、書き始める前にうーんと遠いと思っていた2000字に手が届くような気がしてくるのだ。
 
書けるかも。書いちゃおう。行くぞ!
そのまま席を立たずにPCの画面に向かった。
二日酔いの頭痛も、メジャーリーグの中継も、夫が横で楽天トラベルでさっきの温泉旅館を検索し始めたのも、そんなに気にならなくなる。書いている世界に没入できるのが不思議だ。
 
やめるのは簡単。やらない理由を見つけるのも簡単。
でも、無理やり自分を「やる状況」に置いてしまえば、無理だと思っていたことも意外とするするっとできるということが新たな発見だった。
今日も自分を強制的にPCの前に座らせた。
あの状況では15分書くのが限界だろうと思っていた。にも関わらず、15分を過ぎても2000字を目指して続きを書いた。
できるな、という感覚を持てたのが嬉しかった。
 
この体験で、新入社員研修で受けた講義で今でも1つだけはっきりと覚えている話を思い出した。
講師は、ある支店のすごい業績を叩き出すセールス担当者だった。
「朝起きて、会社に行きたくない日もきっとあるでしょう。そんな日も会社に行きさえすれば何か前進するのです」
僕もそうでした、と体験から出る言葉は説得力があった。その積み重ねが彼の業績につながったんだろう、そう想像することができた。
今日の逆境下とも言えるトレーニングで、新人研修の講師が言っていた言葉の意味を体感することになった。
 
何かを上達したい、練習を重ねて上手になりたい、そう思う人に耳打ちしたい。
サボりたい自分が頭をもたげたら、やめる理由をあれこれ考えている間にまずは始めてしまおう。
できない、無理と思っても、強制的に自分を「やる環境」に置いてしまおう。
始めるまでは気が進まなくても、一度取り掛かったら意外と熱中し、気がついたらできていたりするものだ。到底無理と思っていたのに。
 
熱中して書いていたら、いつの間にか頭痛も治まった。
できた! という達成感も味わえた。
小さな1歩かもしれないけれど、確実に1歩、山を登れた気がした。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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