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道を曲がりたいと思うとき


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山本三景(ライティング・ゼミNEO)
 
 
赤信号で足が止まった。
青になるまで待つつもりでいたが、どうせ行く先は決めていない。
だったら信号を渡らずに道を曲がるのもいいかもしれない。
そう思って向きを変えて曲がってみると、見慣れないお店が目に入ってきた。
 
こんなところに服の路面店なんてあったかな?
 
少しだけ歩くスピードを緩めると、開かれている扉からディスプレイが見えた。
店の外観とガラス越しのマネキンが着ている服からは、安っぽい感じはなく、なんだかおしゃれな感じがした。
 
路面店であれば値段は結構するかもしれない。
まあ、やめておくか。
 
そのまま店の前を通り過ぎた。
しかし、通り過ぎた瞬間、やはり気になってしまい、後ろ歩きでスススと店の前まで戻ってしまった。
お店に入ってみると、そう広くない店内には私一人だけだった。
店員さんの姿はみえない。
入り口にはシンプルな財布や、ピアス等の小物がある。
とりあえず私は入り口近くに掛かっている服をみた。
 
これからの季節によさそうなリネンのシャツ。
袖が控えめにパフっとしていて、袖以外の部分は汗をかいても平気そうなアイボリーのTシャツ。
冷涼感のある生地を使ったロングスカート。
 
これはなかなか使えそうではないか。
さて、お値段はいかほどかしら。
 
服に手を入れて、値段のタグをさがす。
あれ……タグがない。
たまたまか?
他の服をみても値段のタグが付いていなかった。
 
嫌な予感がした。
もしかしたら高いのかもしれない……。
店員さんに聞かなければ値段がわからないとは少々面倒だ。
値段だけきいてすぐに帰ろう。
そう思って服とにらめっこをしていると、私に気が付いた店員さんが慌てて2階から降りてきた。
 
「うちは安いですよ!」
 
店員さんは明るく言った。
本当に? 疑う自分がいる。
どの服にも値段がないところがあやしい。
まあ、すごく高いわけではないかもしれないけれど、安いとまではいえないだろう。
疑いながらもとりあえず値段をきいてみた。
 
「本当ですか?」
 
思わず聞き返してしまった。
店員さんの言うとおり、本当に安かった。
ファストファッションに匹敵するぐらいの価格だった。
久しぶりに買い物熱がグンとあがり、私は饒舌になっていた。
気になる服を手にとっては店員さんと話をしていた。
 
「色違いはありますか?」
「3色あります!」
「青色のスカートを試着してみていいですか?」
「もちろんです。試着室へどうぞ」
 
海外旅行のお役立ち会話集に載っているショッピング会話が繰り広げられる。
いつもは商品に手を触れただけで、
「その商品、よくないですか? 最近入ったばかりなんですよ!」
などと、触れてしまった商品の説明を始める店員さんから逃げていた。
しかし、今日の私は逆にグイグイ話しかけていた。
店員さんもノリノリであれやこれやと商品を出してくれる。
面倒くさい試着も、今日は進んでしてみた。
だって、安くて好みだったから。
 
私は3着購入した。
爽やかなシャツとアイボリーのTシャツと青色のスカート。
合計12000円。
シャツだけで12000円でもおかしくない。
これはいい買い物をしたと、自画自賛のドヤ顔で会計をする。
きっとこのお店は通うことになるだろう。
そう思っていると店員さんにポイントカードをすすめられた。
 
お店で買い物をすると
「会員になると今日から割引になりますよ」
と、必ずと言っていいほどすすめられる。
たまにしか行かないお店の会員にはならないようにしている。
しかし、このお店は定期的に通う気がしたので、ポチっとLINEでポイントカードを作った。
 
店員さんが言うには、このお店はオンライン店舗から始めたそうだ。
服を紙袋に入れながら、店員さんは話を続ける。
 
「オンライン店舗の送料を無料にしたら店舗に来てくれないじゃないですか。それに気が付いてしまってポイントカードをお得にしたんです」
 
お得、それは魅力的な言葉だ。
どれどれ。
 
期待しながらポイントカードをみてみると、5回買い物すると1000円の割引になっていた。
枠が……少なくないか?
 
「1回いくらでポイントが付くんですか?」
 
すると店員さんは申し訳なさそうに言った。
「たくさん買ったお客さまには申し訳ないんですけど、値段に関係なく、商品を1回購入してくださったら1回のポイントになります」
 
いやいやいや、十分お得です。
このミッションはおそらく簡単にクリアできる。
私が通っている喫茶店のポイントより、早くたまりそうな気がした。
 
ネットショッピングもファストファッションもいいが、やはり、実際に店舗へ行って、店員さんと話をして買うのは楽しい。
自分の目で見て、買い物をするほうが私は好きだ。
最近のファッションの動向や、まったく関係のない情報まで得ることができる。
ネットショッピングやファストファッションの店舗では味わえないことだ。
 
私は「また来ます」と宣言し、ホクホク気分で店を後にした。
幸せな気分を十分に味わった後には、もう道を曲がってみようとは思わなかった。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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