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「名探偵コナン」から「しずかちゃん」へ


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記事:清野千聖(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「名探偵コナンみたいに突っ込まないで」
52年間の今までの人生の中で、男性から言われた言葉である。
 
「名探偵コナン」は言わずと知れた子どもから大人まで幅広く人気がある漫画のキャラクターである。
28年程前から漫画が100巻以上刊行されている。また、テレビアニメ化もされ、長年放映されているだけでなく、映画も数多く上映されてきた。
だが、私は今まで一度も「名探偵コナン」の作品に触れたことがなかった。
漫画、アニメ、映画のいずれも読んだり観たりしたことがなかった。
 
その理由は、30年程前に社会人になってから数年後、漫画が世の中に広まり始めた頃、なぜか「名探偵コナンみたいだ」と言われたからだ。
それも決まって、当時お付き合いしていた男性からそう言われ、別れることになったことが3回もある。
3人の男性と出会った場所は全く違うのだが、3人の男性が友達同士なのかと思ってしまうほど、捨て台詞は同じだった。
「どこが名探偵コナンみたいなんだろう?」
男性に聞いてみた。
「私、コナンの話、よく知らないんだけど、あのメガネかけた小さい男の子だね。でも、どこが名探偵コナンみたいなのかな?」
「えっ、コナン知らないの? 話にならないなあ……。じっくり考えてみてよ。 君の言動がコナンに似ているから、一緒にいて疲れるんだよ! まぁ、知らない方がいいこともあるし……」
 
「一緒にいて疲れる」という言葉に深く傷ついた。
名探偵コナンの作品の内容はよくわからないが、主人公になるくらいだから、人から嫌われるようなキャラクターではないだろう。いわゆる「愛されキャラ」である。
 
「言動が似ている」「知らない方がいい」という言葉がずっと私の心に残り、20年以上も「名探偵コナン」を避けてきたのだ。
 
時は流れ、今年の4月、「名探偵コナン」の新しい映画が上映されることを知った。
今回も観ないように避けてきたが、友人に誘われ、思い切って、おそるおそる映画を観た。
ところが、今まで作品に一度も触れたことがなかったのに、吸い込まれるように見入ってしまった。
 
なぜ、名探偵コナンみたいだと言われたのが、やっとわかった!
私の言動に問題があるという意味を確認することができた!
付き合いが深くなるほど、私は相手を常にジャッジしていたことに気が付いた。
例えば、一緒に食事をしていても、会話でよく使っていた言葉があった。
「それはつまり、○○ということなんですね」
「真実は一つですね」
更には、知らなくてもよい相手の過去を必死に探ろうと、推理のように問いかけたこともあったことを思い出した。
コナンの立ち位置であれば、事件を解決する人として、全く問題ないのだが、私の立ち位置では、人を疲れさせてしまっていたのだ。
はきはきと言葉を発することは、仕事では必要な場合があるが、私生活では相手を疲れさせてしまうこともある。
 
名探偵コナンみたいだと言われ、3人の恋人と別れた経験から20年以上経った。
今現在は、中高年層の年代に入り、誰からもコナンみたいだとは言われない。
若い頃のような勢いがなくなり、論理的に物事を考え、言葉を発することが難しくなってきたようだ。
映画を観て、20年前の自分と今の自分は口調がずいぶん変わったことに気付いた。
それは、年を重ねただけでなく、多くの人生経験を積んだこともあるだろう。
これからも、仕事でもプライベートでも、少しずつ、相手のことを思いやり、人を疲れさせない人間になっていきたいと思った。
人をジャッジすることの回数が若い頃より減ったことで、心が軽くなってきている。
 
先日、行きつけの居酒屋で、某新聞社で勤務しているという60代の男性客と話をする機会があった。
私は、男性の仕事や家庭の悩みにただ耳を傾け、批判することなく、頷きながら、話を聞いた。
「何だかあなたはドラえもんのしずかちゃんみたいだね。心が癒されたよ。聞いてくれて本当にありがとう」
相手が酔っていたせいもあるが、そう言われたことがとても嬉しかった。
「しずかちゃん」は、思いやりがあり、優しく、気配りが半端ない。
「のび太」だけではなく、誰からも親しみを持たれる漫画のキャラクターである。
世の中の女性にとって憧れの存在に似ていると言われれば、何歳になっても嬉しいものだ。
 
これからの人生も、どうしても納得がいかないことがあれば、「名探偵コナン」のように議論したり、人をジャッジしたりすることがあるかもしれない。
でも、そんな時は、「ドラえもん」に登場する「しずかちゃん」を思い出しながら、時には心にブレーキを掛けながら、人に接していきたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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