メディアグランプリ

妻も子供もいない一日

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:bajio(ライティング・ゼミ 2月コース)
 
 
「よし、今日はやりきるぞ」
 
ある日の日曜日。妻と子供が車で去っていくのを見送ったあと、そう独り言をつぶやき、いそいそと家に戻る。
 
いつも日曜日は娘の習いごとの日。娘はピアノを習っているのだが、妻が自分が子供のころから習っているピアノ教室の先生を気に入っており、ぜひ娘もその先生に習わせたいということで、親子2代でその先生から教わっている。妻の実家は車で1時間くらい。毎週日曜日は私も含めた家族全員で妻の実家に向かい、ピアノ教室が終わったあともそのまま妻の実家で過ごし、夕ご飯を食べた後で帰ることを続けていた。
 
だが、平日の忙しさにかまけて、自身の家の用事が出来ていなかったわたし。土曜日も子ども中心となり、溜まった用事に手をつけれてなかったことから、妻と相談。
この日曜日に一人家に残らせてもらって、溜まった用事を片付けさせてもらうことにしたのだ。
 
すでに前の日に、やるべきことを書き出しといた。それは仕事さながらのToDoリスト。
 
積もりに積もった郵便物の整理
過去に取得した資格の更新
自動車税の支払い
メルカリで売れた商品の発送
仕事で使っている靴の修理依頼
不要な書類をシュレッダーする
溜まった服の洗濯、そして、洗濯物を畳むなどなど
 
そして、見たかった映画の鑑賞、もリストに潜り込ませておいた。
 
準備は、完璧。やることは書き出せている。あとは、やるだけだ。
 
……と、その前にと時計を見る。まだ朝の8時。
 
休みの日に家に一人だけ、というのはめったにない状況。ここ2、3年はなかったはずだ。かつて独身のころ、気ままに過ごしていた時の楽しさがよみがえてってくる。
 
何をするにも自由、しないのも自由。全て自分で決めることが出来た。
 
「もう一寝入りしますか」
またも独り言をつぶやくと、いそいそと布団に入る。
 
少し罪悪感を感じながらも、平日の寝不足を解消するため、これもやるべきことの一つだ、と自分に言い聞かせ、少しだけ、体温の残ったベットにもぐりこむ。至福の時間。夢の中に入るのにそう時間はかからなかった。睡眠負債の解消。目が覚めると12時だった。
 
「あーよく寝た」スッキリした頭。
まだお昼、時間はまだまだたくさんある。
お昼ご飯はカップラーメンで、ササッと済ませ、さあ、仕事の始まりだ、とばかりに、ToDoリストに手をつける。
 
まずは、郵便物の整理。クレジットカード、電気料金の明細書、保険会社などの通知物。半年分はある。よくもまあ、ここまで溜め込んだと自分に呆れながらも、捨てるもの、取っておくものを仕分ける。ベルトコンベアに流れてくる荷物の仕分け作業さながらにもくもくと手を進める。小一時間で何とか終わらせられた。
 
次は資格の更新手続。スマホで、その資格のホームページを見るとマイページへのログインが必要とのこと。昔作ったままのID、パスワードを呼び起こすことに悪戦苦闘しながらも、こちらもなんとか該当のページまで行きつき、更新手続が終了。
 
その後も、自動車税の支払い、メルカリで売れた商品の発送、仕事で使っている靴の修理依頼などなど、片付けていく。
もくもくと作業していくうちに、集中も冴え渡り、これがフロー状態か、と気持ちよくなってきた。
まるで、長距離ランナーが感じるランナーズハイかしら、などと感じながらToDoリストを一つ一つ塗りつぶす。
 
夕方までかかり、ようやく全ての作業が終わった。
「やりきったー」
まるでマラソンを走りきったかのような爽快感。
 
いやいや、まだ残っていた。
リストから見たかった映画の名前を見つける。
 
「よし、これもやりきりますか」と誰もいない家で、少し大きめの声でつぶやく。
 
ご飯を食べながらの映画鑑賞。
見たのは、クレヨンしんちゃんのオトナ帝国の逆襲。大人も泣ける名作とのフレーズに惹かれ、いつか見たいと思っていたもの。
確かに泣ける。見終わり感動一入。家族のありがたみを感じつつ、時計を見ると9時。
 
それとなくスマホを見ると、LINEの着信。妻からだ。
 
「子どもがもう寝ちゃったので、もう一泊してもいいかな。明日帰ります」
 
予想してなかった一人の夜。なんだか、家族が恋しくなってきた。
 
クレヨンしんちゃんを見たからだろうか。ずっと家族がいるのが当たり前になって一人の時間を楽しみきれなくなったのかもしれない。
自分に家族ができる前、一人が当たり前だったときは、一人の時間は自由で楽しい時間だった。何をやってもいい。何でも好きなことができる。何もしたくなかったら1日寝てたって良かった。
久しぶりに一人の時間を過ごし、初めはその自由さに楽しさを感じたが、そう長くは続かなかった。
 
早く子供たち、妻に会いたくなってきた。そんな時にきた妻からのLINE。
 
それは、マラソンを走りきったあと、追加であともう一周走るように言われたような気持ち。
「えーもう走れません」という気持ちを心に隠し、痩せ我慢のような返信をする。
 
「了解。こちらは大丈夫。明日、気をつけて帰ってきてね」
 
映画の中で、クレヨンしんちゃんの父親、野原ひろしは言っていた「家族がいる幸せをあんたにもわけてあげいくらいだぜ」
 
一人の時間を過ごすことで、家族のありがたみを感じることが出来た日。
 
いつもより少し早くベットに入る。
「今度の休みはみんなでどこに出かけようかな」などと考えながら、いつもより静かな部屋の中、眠りについた。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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