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源氏物語をAudibleで70時間聞いて、私がゲットしたもの

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山口 多佳子(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
女性の声で最後の一文が読み上げられた。
すっかり聞きなじんだ琴の音が流れる。
終わった。ついに読了。いや聴了か。
日本が世界に誇る古典「源氏物語」を私はすべて聞き終わったのだ。
 
なぜ聞き終わったという表現なのかというと、私はこれをすべてAudibleの読み上げで聞いたのだ。その長さは70時間にもおよぶ。なんといっても54帖からなる源氏物語を読み上げるのだ。私はこれを4ヶ月かけて聞いた。
 
念のため、ご存じない方のために解説しておくと、Audibleとはアマゾンが提供する耳の読書ともいうべきサービス。プロのナレーターが朗読する本のコンテンツを聞くことによって読書ができる。
 
4ヶ月もの間、歩きながら、食事の支度をしながら、運転しながら、源氏物語を聞くのがすっかり日常の一部となっていた。聞き終わるのは、一抹のさみしさがあった。
 
私は源氏物語を70時間も聞きぬいて、何かを得られたのだろうか。
たとえば、胸が打ち震えて人生が激変するような感動?
正直いうとそうでもない。
まず、この古典を読んであらためて認識してしまったことがある。
すこし切なくなる発見だ。
それは「日本人は、昔から他人の目をとにかく気にして生きてきたのだな」ということだ。
 
貴族の社会を描いていることもあるのだろう。
どうすれば体面を保てるか、人の目に恥ずかしくなく映るか。
登場する女性やその周囲の人間はそればかりを気にしている。
 
こうしておけば、世間の人の物笑いになることはあるまい。
こうしておけば聞こえがよいであろう。
あの人は本当はどう思っているのだろう。この間会ったときはこんな様子だったから、きっとこうに違いない。
こんな描写ばかりだ。とても細やかに他人の気持ちや世間をおもんぱかっている。
その心のひだは現代に生きる私にもよくわかる。そこは面白い点でもあった。
 
また、源氏物語の姫君たちは、総じてはかない。思い通りにならないと、なよなよ泣き、悲しみがあるとすぐ横になる。侍女の問いかけに布団をかぶって返事をしないという描写がしょっちゅうでてくる。おい、寝ているだけかい!
悲しみと心の痛みで体を弱らせた挙句、はかなく亡くなってしまう人も。
 
現代文学のヒロインのように心を奮い立たせ、立ち向かって努力し、その先に何かをつかむなどという展開は皆無だ。そこが、今を生きる私には歯がゆいし、物足りない。
 
それでは、源氏物語の魅力はなんだろうか。
 
私が思うに源氏物語には、大河ドラマの魅力がある。
登場人物の幼いころから青年時代、中年、老いた姿を描き、次はその子供の代へと話が続いている。親が不遇でも、子どもの代で良い思いをしたりと、時の流れが雄大なのだ。
 
豊かな物語性も魅力だ。次はどうなるのだろうという純粋な興味でつい次を聞きたくなってしまう。細やかな心理描写もいい。登場人物の心の動きが、千年も隔てていてもそうだよね、と手に取るように通じるときがある。
 
しかし、なんといっても自分にとって一番収穫だったのは、つぎの事がよく腹落ちしたことだ。
 
どんなに非合理に見えたとしても、その時代の制度に合わせて、とにかく人は自己実現や、充足したなにかを目指し続けるのである。
 
源氏物語の社会制度は、今から見るとトンデモ社会に見える。
宮廷での立場は、帝との婚姻関係でほぼ決まってしまう。
とにかく自分の娘を天皇の后にし、その娘が男子、つまり次代の天皇を生むことが栄達の頂点だ。
高貴な身分の姫君は、顔を他人に見せることは許されない。男性は相手の女性の顔をまったく知らないまま夜にしのびこんでいく。
そんなトンデモ制度の下でも、人は何とかしてこの世に生きた証をのこそうとする。
何者かになろうとし、他人から承認されようとする。
 
たとえば、明石の入道だ。
その娘の明石の君は、受領の娘でありながら、産んだ子が天皇の后になり大出世をとげる。
それもすべて、明石の入道が思い描いた夢なのだ。
自分の娘から将来后が生まれることを固く信じ、都落ちして人里離れた明石で出家しながらも、パワースポットの住吉神社にしげく通い、娘に求婚する身分の低い男には目もくれずに、変人だと噂される。
しかし、ついに源氏が明石に訪れてその夢を果たすのだ。
まるで、「思考は現実化する」(ナポレオン・ヒル著)の平安時代版ではないか。
 
そして、源氏物語の時代をトンデモ社会と断じている私だが、ひょっとしたら現代だって後世の目にはトンデモ社会に映るかもしれないのだ。
毎日8時間を会社に搾取され、住宅ローンに縛られ、必死で働く。
学歴社会でなんとか我が子を有利にしようと、必死に塾に通わせる。
後世の人の目には、理不尽な暗黒のサラリーマン時代と映るかもしれない。
ちょうど今の私たちが産業革命時の工場労働者を見るような感じで。
 
それでも、私たちは生きていく。源氏の時代に、人々が生きていたように。
どの時代にも不条理はあるのだろう。
しかし、そこで人は生きていかなければならないし、何かを掴もうとするのだ。
 
そして、どの時代もきっと、まあそう悪いものでもないのだ。
楽しみもあるし、夢もある。人と心を通い合わせることもできる。
 
ということを私は源氏物語で学んだ。
それにしても、すっかり源氏物語ロスだ。
また、頭から聞いてみようかな。
 
 
 
 
***
 
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