メディアグランプリ

私はいかにして演劇を楽しめるか


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:黒﨑良英(ライティング・ゼミNEO)
 
 
愛好者が多いため余り大きな声では言えないのだが、私は「演劇」というやつがどうも苦手である。
 
あの大げさな立ち振る舞いや、何より不自然なセリフ、何もかもがわざとらしく目に映ってしまい、とてもではないが直視できたことがない。
 
これが吹っ切れてしまうほどであれば、まだ良い。すなわち、ミュージカルや宝塚歌劇とかだ。
わざとらしさを通り越して、そういう演出で進んでいることがよく分かる。そして面白い。
 
もっとも、私が直に目にした演劇といえば、高校生の時の芸術鑑賞会で、体育館で見たやつくらいだ。確かドン・キホーテを題材にした演劇だったと思う。
だからプロ中のプロが演じた舞台なら、また何か感じるところがあるぞ、と言われれば、まあ、そうなのかもしれない。
 
しかし、テレビで放映されていた演劇を見たことがあるが、少なからず胸の奥に痛々しさが感じたのは確かだった。
 
そう、痛々しいのだ。
例えるなら厨二病の人が、自分は◯◯の生まれ変わりだ! とか、何か技名を叫んでいるのを間近で見るような、そんな痛々しさがあるのだ。
 
考えてみれば、演劇で見るのは、生身の人間である。私の大好きな二次元の人物でもなければCGでもない。
その生身の人間が、中々普段見せない態度と表情と声で、立ち回っているのである。
 
私にはそれが、どうしても通常の人間の延長上にあるもので、ファンタジーの域に、いや、フィクションの域にいる人間の言葉や態度だとは思えないのであった。
 
おそらく私には、そんな高尚な芸術の良さは一生分からないのだろうな、と諦めながら、日々を過ごしていた時のことである。
 
つい先日、私は、あろうことか、歌舞伎を見る機会を得た。
理由は単純で、東京観光をしていたら歌舞伎座を目にしたから、というだけだ。
曲がりなりにも、大学で古典を学び続けてきた身である。古典芸術の一つも見ておく必要もあろう、と、何とか自分に理由をつけて、観覧券を買ってしまった。
 
買ってしまったからには見ないわけにはいかぬ。もちろん歌舞伎とて演劇の一種。例の痛々しさがもしかしたらあるかもしれないが、そこはそれ、勉強の一環である。
 
そうして演目を見た。
時間は3時間くらいだったろうか。
 
ぶっちゃけ感動した。失礼、正直に言って感動した。
 
恐れていた痛々しさは全然なかった。いや、当然ながら普段の立ち振る舞いや声とは一線を画している。しかし、例えるなら時代劇を舞台で見るような感覚で、不自然だが不自然さがないのである。
 
何を言っているのか分からないと思うが、要は、少なくともあの空間が、フィクションとして成立していたのだ。
 
題材も良かった。
演目は「信康」。
あの戦国武将、徳川家康の悲運の嫡男のことである。
 
戦国時代なら、私が得意とするフィールドだ。案の定、出てきた人物は大体どういう人物か分かった。
 
家康の嫡男信康は快活な性格で、織田信長にも気に入られて「信」の一字を授かった。さらに実の娘「徳姫」を嫁にもらい、未来は明るいかに思えた。しかし、その徳姫と姑である築山殿との関係が悪化し、徳姫は度々、父信長に手紙で訴えていたという。ところが、なぜかその中に、信康が謀反を企てているとの内容が書いてあったらしい。事の真偽はともかく、信長は直ちに信康を処刑するように勧告してきた。
我が子を守りたい家康、しかしそうすれば徳川家自体が危うくなってしまう。
聡明な信康は、お家の存亡がかかっていると悟り、自ら命を絶つことにした。
 
クライマックスは、我が子の死を目の前にし、嘆き泣き叫ぶ家康がいた。その演技は確かに大袈裟だが、見るものの涙を誘った。
名演とはこういうことをいうのか、と後で思ったものである。
 
見終わって、歌舞伎という演劇の素晴らしさに打ち震え、では、通常の現代劇と何が違うのか、と考えた。
 
もちろん、その違いは多くある。言葉だとか衣装だとか背景だとか、枚挙にいとまがないが、しかし大元は変わらないはず。つまり演劇なのは確かであるはずだ。
あのわざとらしい立ち振る舞いとセリフの、私の苦手な演劇であるはずだ。
にもかかわらず、この充足感、満足感は何だろう? なぜ、私は歌舞伎に痛々しさを感じなかったのか?
 
そこで、私は一つの仮説を立てた。
それは、普段目にしているものと大きくかけ離れているところに、痛々しさや不自然さを感じるのではないか、と。
 
私は時代劇も普通に見る方である。そして、今回の歌舞伎は、まさにそれを舞台化したようなものであった。また、今まで勉強してきた内容上、歴史上の事件を元にしたものには親しみが感じられる。
 
だからこその、感動ではないか。
 
したがって、これが現代演劇でも、歴史上の出来事を題材にしていたらどうだろう。
逆に、歌舞伎でも、歴史上の内容ではないものならばどうだろうか。
 
おりしも、七月の演目には、なんと「風の谷のナウシカ」が予告されている。
見ねばなるまい。見て仮説を証明せねばなるまい。
 
演劇についても同様である。どこかで確認しなければなるまい。
 
そういえば、ここ、天狼院では演劇講座を開催するというではないか。
この記事を見た演劇愛好家の皆さん、ちょいと私にご協力願って、歴史を題材にした演目でもやってみてはいかがだろうか?
 
まあ、それはともかく、この機会は、私が演劇を楽しめるかどうか、その瀬戸際であると考える。
せっかく得た機会だ。良い方に転がり、舞台芸術を楽しめるようになりたいと願うばかりである。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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