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物産展難民からの脱出


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記事:田盛稚佳子(ライティング・ゼミNEO)
 
 
全国各地の物産展に行くのが私の趣味である。
社会人になってルート営業をしていた頃は、近畿や北陸方面を担当しており、毎月どこかへ出張をしていた。
当時は出張カバンの中にもれなく、ご当地ガイドブックを忍ばせて各地を回ったものだった。気になるお店のページにドッグイヤーをつけて。
まだ社用携帯が配布されない時代、出先でスマホ片手に「食べログ」などを検索するなんて、20世紀の終わりにはできなかったのである。
今となっては、出張は仕事メインだったのか、グルメ旅メインだったのかは怪しいところだが、とにかく初めての場所で美味しいものに出会うことで、大人になるってなんて楽しいんだ! と感激したことを覚えている。
きっと、その記憶が今でもずっと私の中にしみ込んでいるのだろう。
 
それゆえに「〇〇物産展」だの「△△うまいもの大会」という告知を見ると、素通りすることは100%できない。
「よしよし、予算はこれくらいだな」とほくそ笑みながら、催事場まで上るエレベーターがなんと楽しいことか。催事場への道がまるでレッドカーペットのようでわくわくする。
しかし、一方で困ることもある。
それは、自分がまったく訪れたことのない地方の物産展の場合、何を買ったらいいのかわからないという壁にぶち当たるのだ。
その状態を「物産展難民」と私は呼んでいる。
多くの店が出店していても、中には「似たような商品が九州でも買えるんじゃない?」というようなものもある。
だから、あらかじめどんな商品が販売されるかを事前にチェックしておかないと、ただ時間をムダに過ごしたうえに、「なんとなく買ったもの」が見事にハズレだったりして、くそーっ! なんかすごい無駄使いした気がする! と悔やまれることがしばしばある。
 
5月の終わりに、「東北物産大会」が博多で開催という告知がインスタグラムに上がってきた。今は店頭チラシだけではなく、デジタルチラシで出店する店舗を細かく見ることができてありがたい。
「ふむふむ、6月上旬開催なのね。まだ忙しくない時期だから、3日目なら行けそうだな」
と手帳に予定を書き込んだ。
そして、ふと気づいた。
待って。私、東北地方とか全然知らないじゃない。行ったこともなければ親戚もいない。
仙台の牛タン以外、何にもわからない。
一人でパニックである。行ってみたい気持ちはあるものの「難民化」するのが、すでに目に見えるのだった。牛タン屋なら福岡市内にも有名店があるではないか。
うーん、やっぱり今回はやめておこうかな……。
 
諦めかけていた頃、音声アプリ・クラブハウスに青森在住のフォロワーさんがいることを思い出した。
そうだ! Iさんがいるではないか!!
Iさんは、生粋の青森県人でグルメ女子である。もともとは、猫を飼っているいわゆる「猫友さん」の部屋で知り合ったのだが、雑談をしているといつの間にか「食べ物」の話になってしまうという楽しい仲間である。
毎日のように話しているIさんという心強い味方がいることで、諦めなんてどこへやら、再び物産大会への意欲が燃え上がってきた。
そして、彼女に
「あのね、今度福岡で東北物産大会があるのよ。何かオススメなものあるかしら? 東北ってどういうものが美味しいの?」
と聞いたところ、行動の素早い彼女は、ネット検索してデジタルチラシを食い入るように見てくれた。
「そうねぇ……。まず、このアップルパイのお店は絶対外せないわね。いい? 絶対よ。それから、ここのお菓子は素朴だけど、一度食べるとハマっちゃうと思う。あ、そうそうこれも! このりんご酢! 私は毎年これを飲んで夏を乗り切っているのよ。ちょっとお高いけど、買って損はさせないわ!」
と矢継ぎ早にしかも的確にアドバイスをしてくれた。
東北コンシェルジュ、サンキュー! とスマホ片手に万歳三唱である。
一緒に聞いていた猫友さんたちも「いいなぁ。これすごく美味しそう。私もたべたい!」とまたもや食べ物の話でひとしきり盛り上がった。
 
そして、東北物産大会当日。仕事を早々に切り上げて、一目散にデパートの催事場へと向かう。狙いはもう3品決まっているから一瞬の迷いもない。
出店地図を確認して、競歩の選手よろしくIさんオススメの店に向かう。
コロナ禍の規制緩和のおかげで、試食もあちこちで再開され活気が戻っていた。そうそう、これこそ物産展よと一人わくわくした。
お目当ての3店舗それぞれで「青森の友達にオススメされて、こちらに来ました!」と言うと、店員さんがものすごく喜んで、おまけまでしてくれるではないか。
よくよく話を聞くと、1軒目は大正時代創業の老舗の和菓子屋で、皇室にも献上しているという。なんと、そんなお菓子を福岡に居ながらにして食べれるとは。
またもや心の中で万歳三唱した。
帰宅後、早速オススメのアップルパイを一口かじってみた。
しっとりとした生地にふわりとりんごが甘く香る。どこから食べてもりんごにたどり着くことに驚き、あっという間に消えてしまった。家族も同様にこれはいいね! と絶賛だった。
その夜、青森のIさんにお礼の連絡を入れた。
「オススメしたら私も食べたくなっちゃった」と、後日ご自身も買いに行ったそうだ。
 
Iさんのおかげで、私は「物産展難民」から脱出することができた。
出店者は一つでも多く買ってほしいがために、どんな商品でも「美味しいよ! 間違いないよ! 買ってみてよ」と言う。
一方、地元の方は本当に美味しいもの、オススメしたいものを知っている。1円も本人にマージンが入ることはないのだが、素直に頼むと快く教えてくれる。
そんな友人が周りにいることが本当にありがたい。また、私もそんな友人でありたいと思う。
今後、各地の物産展に行くことがあれば、まず地元の方にオススメを聞くことが鉄則だ。
こうして教えてもらうことで、限られた時間の中で効率的に回ることができるし、予算を大幅に超えることや、あぁ失敗したという後悔の頻度が下がることは間違いないだろう。
さて、次はどこの物産展が福岡にやって来るのやら。今から楽しみで仕方がない。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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