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ママ友なんていらない、は強がりか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:永江好子(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
ママ友なんていらないと思っていた。
ドラマや本の中に出てくるママ友の世界は、お互いの夫や子供を自慢しあったり牽制しあったりしていて、怖い、と思っていたのもある。でも本当の理由は、少し違っていた。私には入社同期の友達や、大学時代の友達もいる。育休はしっかり勉強してキャリアアップする大事な時間なんだから、ママ友づきあいになんか構っていられない。ママだから、という理由だけで友達のふりをしているだけの関係なんていらない。
妊娠が分かった時はほっとした。結婚2年目、なかなか授からないことを内心気にしていたから。20%くらいが初期流産すると聞いて、もしもの時にがっかりしないようにあまり喜ばないようにした。
勉強は得意で、運動もそこそこ。人と深い関係を築くのは苦手だけど、誰とでもうちとけられる性格。就職氷河期にもかかわらず、とんとん拍子で一部上場企業に就職が決まり、憧れだった部署に配属になって数年経った時に授かった子供だった。
夫とは同期入社で同じ大学出身。面白さと真面目さが絶妙にブレンドされた性格で、周囲からの評価はともかく、真面目で面白みがないという自己評価の私にはもったいないくらいの人だ。結婚の通過儀礼で起こりそうな喧嘩は一切なく、お互いの親の価値観も近かったのだろう、家事の分担や遊びのルールなどのすべてが円滑で、全く波風が立つことなく過ごしていた。
自分に自信があるわけではない。でも何もかも思い通りだったから、人生のすべてを、自分でコントロールできる気になっていた。
妊娠がわかってからたくさんの育児本を読み漁って、産休も育休も有意義に過ごせるように徹底的に調べて、何なら職場復帰後のイメージトレーニングまでして、準備万端いつでも来い! という状態で迎えた日々。
生まれるまではよかったのに。
ドアの向こうから聞こえる娘の泣き声に、参考書をゆっくり閉じる。
育休は、自己啓発に持ってこいの期間だと思っていて、この期間に何を学ぶべきか、キャリアアップのためにどう時間を使おうか、作戦を練っている時間が最高に楽しかった。
でも今は、勉強を始めて軌道に乗ったのを見計らったようにお昼寝から目覚める娘に起こされる。自分の時間を確保したいのに。なかなか寝てくれない娘を寝かせる手が知らず知らずに強くなっていく。
なんで寝てくれないの!
寝かしつけを始めて3時間たっても寝ない娘に向かって叫ぶ。当たり前だ、眠くないんだから。それでもなんとか寝かせたくて、無理やり乳房を口に含ませて横になる。乳房は、もう何も出ないよというようにしぼんでいるのに。もう何回目だろう。頭の中がぐるぐるして、鼻の奥に熱いものがこみ上げる。やっと寝たと思って静かに離れようとしたら、玄関からただいまの声でまた娘が薄く目を開ける。
こんなにも、我が子が憎らしいものとは思わなかった。
別に手がかかる子ではない。夫は同僚が辞めて毎日2人分の仕事をして疲弊しているようだけど、精一杯早く帰ってきて、できる家事をしてくれているのがわかるから、何も言えない。でも、毎日話ができない娘とだけ向き合い、自分の勉強もままならず、義務のように公園に行き、絵本の読み聞かせをして寝かせつける。その繰り返しに、その思うままにならないことにいらだちが募っていった。
そして、さみしかった。
私には仕事がある、友達もいる。だからママ友なんていらない、と高をくくっていたから、周りに友達はいなかった。昔からの友達は仕事で忙しかったし、そもそもポジティブが売りの私は、そんな不安や不満を打ち明けられるような友達がいなかった。公園で出会った人とのその場限りの会話だけが、大人とする唯一の会話だった。もう無理だった。この苦しさを、今、誰かと共有したかった。
いつものように風呂掃除をしていたら、勝手に涙があふれてきた。帰りが遅い夫が憎らしいと感じるようになっていた。娘が泣いても無視するようになっていた。ごはんも作らず、ただぼーっと外を眺めている時間も増えてきた。
このままでは、だめだ。
駅に続く道の途中に、古い児童館があるのを知っていた。子供が生まれるまでは見向きもしなかった場所。そして、これまではバカにしていた場所。翌朝、娘を抱っこ紐に入れておそるおそる行ってみた。中には数人の子連れのお母さんたちがいて、自由に子供を遊ばせながら話をしていた。入り口には受付の人がいて、柔らかい笑顔で迎えてくれる。
お母さんたちはすでに仲がいいようで、アウェイな感じが半端ない。若い人から少し年上の人まで幅広い年齢層で、ファッションも様々。「お母さん」という共通項がなければ一生友達にはならないであろう人たちだろう。
部屋の端にこっそり座って、じっと様子を眺めていたら、娘が他のお母さんのところにハイハイで行ってしまった。
「こんにちは」「かわいいですね」
お天気ですね、と同じような、当たり障りのないやりとり。
「大変ですよねー」「なかなか寝てくれなくて」「あ、よだれが」「歯が生えてきたからね」
本当に、全く無意味な会話だ。もっと大人な会話がしたいのに。
裏ではそんなことを思いながら、1時間くらいそこにいて、その日は帰った。何も得られなかった、と思った。
でもなんだか、すごく軽くて明るい気持ちになっている自分がいたのだ。寝かしつけに時間がかかっても、気にならなかった。今日も帰りが遅い夫に、つまみを一品追加するくらいの気持ちになっていた。
次の日も児童館に行った。その次の日も、またその次の日も、私は児童館に通った。
知った顔がいなくても、受付の人とは親しく話ができるようになった。娘は離乳食を食べるようになり、つかまり立ちをするようになり、だんだん、新しい仲間を迎える立場になっていった。そのころには、私とは違う人種なんだ、なんて斜に構えてみていたママたち一人一人のやさしさや面白さや、それぞれの想いが伝わってきた。勝手に線を引いて、輪の外に出ていたのは私だった。みんな、ママであるという共通の役割を持った人。それだけで友達だった。戦友だった。
職場復帰の前の週、児童館で仲良くなった友達の家にもう一人の友人と遊びに行った。
子供たちをリビングで遊ばせながら、3人で仕事のことについて話をした。どんな仕事をしていて、これからどうやって働いていくのか。今の悩みや将来の夢について。
仕事に復帰して、忙しくなって駅に向かう道すがら、その友人に会った。お互い児童館に通っていたころはほぼすっぴんで、Tシャツにジーパンだったけど、きちっとしたスーツを着て、化粧もバッチリ営業スタイルだ。一瞬わからなかったようだったけど、声をかけたらにっこり笑顔で返してくれた。ほとんど言葉も交わさずに、「またね」と別れた。
きっとこの先も彼女たちと深く人生が交わることはないだろう。
でも、あの日、あの時ギリギリだった私を救ってくれたのは、間違いなくママ友であった。ママという共通の、初めての大切な役割に右往左往して、不安な日々を共に戦う戦友であった。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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