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母とのら猫たちのイイ関係は、お互い様ってことで! 


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記事:mikkiharugon(ライティング・ライブ名古屋会場)
 
 
我が家にやってくるのら猫がいる。
かれこれ、2年くらいになるだろうか。
 
今では、母の良い話し相手になっている。
 
母は、コロナをきっかけに、約15年間やっていたカラオケ喫茶を1年半前に閉めた。
それまで端から見ても分かるくらい一生懸命やっていて、店に泊まり込むこともしょっちゅうだった。
頑張った甲斐もあり大繁盛ではないけれど、イイ常連さんがついてくれて、15年の間、何とか店は成り立っていた。
 
そんな母が、閉店を機に家にずっといることになった。
時間を持て余し、思考力も感度も若干鈍くなるのはわかっていた。
 
私が子供だった頃の母は専業主婦で外で働くということがなかった。
私が学校から帰ってくるのを、家の近くの通学路のところで待っていて、私の姿を見つけると大きく手を振って「おかえりー」と言ってくれた。
夏は「暑かったね、頑張ったね」といい、冬は「寒かったね、頑張ったね」といい、私のことが人生の中心にあるような、そんな母だった。
 
だから、父が亡くなったあと、独りぼっちになるのが心配だったのもあり、カラオケ喫茶をやってみたい、と打ち明けられた時、応援しようと決めて、一緒に開店の準備をしたことを思い出す。
 
明るい性格で、友人も多かったが、気が強く口もきつい。そして、筋が通らないと、相手が誰であれ、ものおじせずに言い負かしてしまう母。
穏やかで人に対して怒るということがなかった父とは真逆だ。
そんな母が怒っていると、小さい頃の私はビビりまくっていた。
 
年を重ねても、その性格は変わらない。むしろ磨かれたようで、たとえ客であっても、筋が通らないと真正面からはっきりモノをいう。
そのくせ寂しがり屋で、人が集まると嬉しくて、皆のために何ができるかっていつも考え、店時代は楽しく過ごしていたようだ。
そうやって、人に囲まれて楽しく過ごしていた母が、昼間は一人きりになった。
 
我が家は、母と私の二人暮らし。私の娘は東京に出ていてほとんど帰ってこない。私も、自分の人生を生きていかないといけないから、正直母にあんまりかまってられない。
 
そんな時に、ふらっとメス猫がきた。
母は、犬派なので猫は嫌いだった。庭に猫が来ると「シッ」っと大声で怒って追い払った。
「猫は嫌い! 何をくっつけてくるかわからん」と話していた。
 
ある春の暖かい日、メス猫がめちゃくちゃカワイイ子猫を2匹連れてきた。
が、母は相変わらず口が悪い。
「なんで子供なんか連れてきた! 餌なんてやらんからね!」と母猫に言った。
ただし、前のように追い払うことはしなかった。
子猫があまりにも無邪気だったからだ。
「赤ちゃん」って、無力だけど、本当に無敵!
あの純粋な眼差しで見つめられたら、いくら口の悪い母も、邪見に扱うことはできなかったようだ。
 
ある日、庭の松の木に紐がぶら下がっていた。なんだかブランコのように見える。
なんと子猫が遊べるように、と考えて、母がおもちゃを作っていた。
そうして、暖かい日は、母と母猫と、無邪気に遊ぶ子猫が庭で距離感保ちながら過ごしていた。
 
しばらくしたら、突然の別れがやってきた。
おそらく子猫の寿命が尽きたのだろう。
子猫たちはある日を境にプッツリと来なくなった。
その頃の夜は、母猫が子猫を呼ぶようにずっと啼いているのが聞こえてきた。
その声を聞いて、母は「かわいそうにね」と泣いていた。
 
季節は流れた。
 
母猫は少し母に慣れたようで、朝になると玄関先でニャーと鳴く。
すると、母が「なに~、来たの? エサはないよ」と応える。
そして、「チッチ」と呼ぶようになっていた。
私はびっくり。 「あ、そうなの!? 名前を付けたの?」
母猫はチッチになった。
さらに、チッチは猫界でモテるらしく、オス猫がまとわりついていた。黒猫と白猫の2匹だった。
母は、「また子供ができたらいかん」とオスたちを追っ払っていた。
が、チッチは黒猫が好きらしく、人間が見てもわかるくらい黒猫と白猫に態度で差をつけていた。
チッチと黒猫はいつも仲良く一緒だ。
 
母は、チッチを守るつもりで、そばに黒猫がいると「あっちいけ!!」とまた大声で言っていた。
 
そんなある日、黒猫が頭に大けがをしてきた。
頭がパカッと裂けるようなケガだったようだ。
母は興奮して「あんなケガ、どう見ても人に殴られたとしか思えん!!」と怒っていた。
 
その日以来、黒猫は「クロちゃん」と名前がついた。
さらにチッチは、今年も赤ちゃんを身ごもった。お腹がぷっくりしたのだ。産んだあと、乳をやるため母のところに来て必死に餌をすがっていた。
母はその様子を見て「猫も人間も、子供のためなら母親は一生懸命」と泣きながら、「少しだけだよ」と餌をやっていた。
ただ、今年も子猫は育たなかったようだ……これが現実。
一方クロちゃんの頭のケガは治ってきた。すごい生命力だ!
 
私は、母がちょっぴりやる餌を、二匹が仲良く食らいついている様子を見て
何だか感動してしまった。
 
頭ぱっくりのケガをしたクロちゃん。
子猫のために必死に乳を作るチッチ。
クロちゃんはチッチと一緒にいると嬉しそうで、食べ物があると、頭のケガなんか忘れて一生懸命食らう。
チッチはクロちゃんが好きだから、ひたすら一緒にいる。
人でも猫でも、好きな人と一緒にいれば嬉しくて、美味しいものあればパクパク食べて、
そんなあたりまえの風景が、そこにあった。
2匹を見て、生きるってこういうことだよねって、すとんっと私の心にはまってしまった。
 
明日はどうなるか、なんて関係なく、今が全てのクロちゃんとチッチ。
そして、この時間は、これまで必死に店を切り盛りしてきた母の、ささやかな楽しみ。
 
クロちゃんの頭をみながら、「生きる」むき出しの猫から感動をいただいちゃったわ、とウルウルした私だった。
 
 
 
 
***

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2022-06-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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