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親として子供に教えなければならないこと


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記事:河口真由美(ライティング・ゼミNEO)
 
 
5歳の息子が、ご飯を食べるときに「歯が痛い」と右頬を押さえるようになった。
12歳の娘は、歯茎が赤く腫れている気がする。
 
やばい。そういえば、子供たちをずっと歯医者さんに連れて行ってない。私は2人を連れて、1年ぶりに歯科医院を訪れた。
 
「息子さんは、2か所、虫歯になってますね。娘さんは歯周病になっています。娘さんは12歳だと思うんですが、歯茎の状態は40代の歯茎です」
 
 
ショックだった。
息子はまだ乳歯なのに、虫歯になってるの!?
娘にいたっては、40代の歯茎って……。
歯の治療には、たくさんのトラウマがある。歯科医院のあの独特な匂い。歯を削られるときの頭の中に響く高い音と、何とも言えない強烈な痛み。何度味わっても慣れることはなく、恐怖しかない。
こんな小さな息子に、あんな痛い思いをさせないといけないの?
私がちゃんと定期的に歯医者さんに連れて行けば、2人とも未然に防げたはずなのに。夜の歯磨きだって、息子の仕上げ磨きは時々しかできていなかった。娘の歯茎も赤く腫れ始めていることに気づいていたのに、「ちゃんと歯磨きしてね」と注意するだけだった。
なんで、もっとちゃんと歯の予防をしてあげなかったんだろう。
 
さらに、子供たちの歯の検診を受けたことをきっかけに、私自身も久しぶりの定期検診を受けた。
 
「2か所、虫歯になってますね」
 
ダブルのショックを受けた。
息子だけじゃなく、私もまたあの恐怖を体験しないといけないなんて!
 
 
こうして、私たちの歯の治療が始まった。
幸い息子の虫歯は神経まで到達していなかったようで、軽く削るだけで済んだ。娘は丁寧に歯磨きをすることが、歯茎の腫れを治す一番の治療法ということで、歯磨き指導を受けた。
私はというと、虫歯が2か所とも元々詰めものをしていたところにできており、そこを削って、詰め直す必要があった。
治療中、痛みと恐怖に耐えながら、ずっと考え事をしていた。
「私の歯、こんなに削れてしまって、おばあちゃんになったときに自分の歯がちゃんと残ってるんだろうか。歯って、実は人生で大切にしないといけないものベスト5に入るんじゃない? どうすれば、虫歯にならないんだろう。そういえば、虫歯になったのは、詰めものをした歯だ。やっぱり自分の歯と、詰めものの間に食べカスが入りやすいんだ。ということは、一度、詰めものをしてしまったら、虫歯になりやすくなるんだ。幸い子供たちは、純粋な自分の歯だ。今ならできることはいくらでもある!」
 
 
学校の勉強、お友達との人間関係、交通安全、親として子供に教えなければならないことは、たくさんあるかもしれない。けれども、その中でも歯のことは軽視しがちだ。私のように気づいてしまってからでは遅い。私は決めた。
 
私が何よりも親として子供に教えなければならないことは、『一生の歯を守ること!』だ。
 
まず、定期的な検診に行くために、カレンダーには次の検診予定月をメモした。
歯磨き粉もそれぞれの症状に合わせたものを選び、歯磨きとセットでマウスウォッシュも取り入れた。
5歳の息子の仕上げ歯磨きだけではなく、12歳の娘の仕上げ歯磨きまでも行い、お菓子は歯につきやすいチョコレートやクッキーから、ナッツ、せんべい、ヨーグルトに変えた。
スーパーで息子が甘いお菓子を欲しがっても、「これを食べると虫歯になっちゃうから、やめようね」というと、「あっ、そっか」と息子もちゃんと我慢できるようになった。
 
私の歯の教育は少しずつ、子供たちへ浸透を始めていた。
 
 
 
ある日、息子と2人でスーパーへ買い物に行った時のことだ。
今日は何にしようかなぁと、お肉コーナーを見ていたら、隣にいた息子が突然大声で叫んだ。
 
「ママ見て! ポテトピップスいっぱい入れてるよ! いかんよね!」
 
息子の指さす方を見てみると、少し前の方を歩いている年配のご婦人の買い物かごに、息子の言う“ポテトピップス”こと、ポテトチップスが大量に入っている。
 
ヤバイ!!
 
ご婦人は自分のことと気づいていないのか、冷凍食品をのぞき込んで、何かを探している様子だ。
私は息子から少し離れ、私は何も聞こえていません風に、お肉を探すフリをした。なんなら、これはうちの息子ではありませんと言いたいくらいだった。親として最悪なのかもしれないが、今の私にこの場を乗り切る対応力は持ち合わせていなかった。
 
どうか、ご婦人に聞こえていませんように。息子よ、ほら、母はいま、お肉に集中してるから、その話題はもう終わり。さぁ、黙りなさい!
 
あろうことか、息子はまた叫んだ。
 
 
「ねーえって! ママ! ほら見てって! あのひと、ポテトピップスいっぱい入れてるよ! あんなに食べたら、いかんよね! 虫歯になっちゃうよね! お菓子いっぱい食べたら、虫歯なるでしょ?」
 
 
「しぃーっ!!!!」
私は慌てて息子の口をふさぎ、息子を連れ、そそくさとその場を立ち去った。
 
言った。確かに母はそういった。言ったけどな……。
 
私が親として子供に教えなければならないことは、『一生の歯を守ること!』
そう思っていたけど、どうやらまだまだあるようだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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