メディアグランプリ

謝肉祭の夜


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大室 岳(ライティング・ライブ福岡会場)
※この記事はフィクションです。
 
 
昨日、爆発があった。核爆弾かもしれない。僕たちは偶然、岡田の家の核シェルターにいたので、一命を取り留めた。先日、岡田の家に核シェルターがあると聞いて、皆で家に遊びにいき、僕らはシェルターにいた。岡田の両親は最近、インターネット事業で一山当てた成金で、そして極度の心配性だった。心配は行きすぎて、ついに家に核シェルターを持つまで至った。しかしそれは行き過ぎではなかった。不幸なことに友人の両親は爆発があったとき、シェルターにはいなかった。4階の事務所で働いていた。たぶん死んだだろう。
 
僕らは核爆弾だと言っているが実は確証はない。核シェルターのなかに僕らはいて、信じられないような衝撃を受けた。しばらくじっと耐えて、外に出たら、辺りは何もなかった。だから勝手に核が落とされたんだと言っている。
 
僕らは助かった。幸いなことにシェルターの中には半年は食べていけるだけの保存食と水が備蓄してあった。爆発から一ヶ月はシェルターのなかで過ごした。ちなみに僕らは3人だ。
 
なぜ一ヶ月もシェルターで暮らしたというと、放射能が怖かったからだ。そして僕らの誰も放射能についての知識はなかった。だからどれだけ時間が経てば放射能の心配がないとかわからなかった。とりあえず一月くらいは外に出ないでおこうと意見はまとまった。
 
ひと月たって僕らは外に出た。まずは辺りを散策してみた。周囲には建物も何もなく瓦礫だけが残っていた。すべて更地になっていた。僕らが住んでいた地域は福岡市内にあって、辺り一面が平野だった。だから海の方までずっと平らな大地が続いていた。反対側には山脈が見渡せた。しかし建物は一つもなかった。
 
「とりあえず海の方までいってみるか」と岡田が言った。
「そうだな。もしかしたら海の辺りまでは被害がないかもしれない」僕は答えた。
「確か地下鉄だったらここから海まで30分くらいだったけど、歩いたらどんくらいかかるかな」もう一人の友人、鈴木が言った。
「3時間はかかるかな。少し食料と水を持っていこう」僕は答えた。
 
海までは4時間かかった。途中、誰にも出会えなかった。そして海の近くにも何もなかった。がっかりして僕らはまた4時間かけて岡田の家のシェルターに戻り、それからもっと遠くまで足を伸ばすことを計画した。今度は門司港までいくことにした。九州の最北端だ。もしかしたら本州に渡れるかもしれない。
次の日、僕らは歩きはじめた。街はまるで津波が去った後のように何もなかった。かろうじて道路のあとが残っていて僕らはそれを頼りに門司港まで歩いた。まる二日かかった。
二日目の夕方に門司港に着いた。ここまでの道のりでも誰にも出会わなかった。大きな動物もいない。世界はすでに終わったのかもしれない。
 
門司港に着いてすぐに関門海峡に掛かる橋があるかを確かめた。残念なことに橋は姿を消していた。僕らは関門海峡の先に見える山々の端に夕日が沈むのを眺めた。
「今日はここで野宿だな」と岡田ぼそっと口にした。
その夜、岡田の様子がおかしくなった。夜、僕らが崩れ去った建物の壁らしきものによりかかって寝ていると、突然、岡田が咳き込みはじめた。顔を覗くと呼吸が荒い。熱も高いようだった。大丈夫かと声をかけるも「あ、あ、あ」としか言わない。
 
最初は岡田が心配でずっと見ていたが、そのうちにまた眠ってしまっていた。僕は運動音痴で体力もない。それなのに2日も歩いたのだ。岡田の心配もあったが、自分の体力も限界に近かった。
 
夢を見ていた。家族で焼肉を食べる夢だ。父さんと母さん。3歳になる弟もいた。久しぶりに家族の顔を見た。弟を腕に抱いた。いい匂いがする。すると突然弟が僕の腕を噛んだ。そこで目が覚めた。岡田が僕の腕に噛みついた。慌てて岡田を引き離したものの、腕の肉がえぐられた。岡田は僕の肉を食っていた。岡田は目を真っ赤にして、前傾姿勢で僕のもとへにじり寄ってくる。うまく身体が動かない。ダメだと思ったら突然、岡田の後頭部を鈴木が瓦礫で殴った。
 
「大丈夫か」
「腕が、腕が、噛まれたんだ」
「いいから逃げよう」鈴木が僕を立ち上がらせた。僕らは走った。
 
すぐに岡田は立ち上がって僕らを追ってきた。岡田も運動が苦手だったはずなのにすごい速さだ。逃げるのは諦めて岡田に真正面から向かった。鈴木は大きな瓦礫を持ち上げてそのまま投げた。岡田はまっすぐしか走れないのか、簡単に瓦礫は当たった。そのまま倒れ込んだ岡田を僕らは瓦礫でめったうちにした。岡田はピクピクと痙攣をして動かなくなった。
 
それから鈴木と二人で近くの海まで歩いた。僕は相変わらず腕の肉がえぐれている。見るからに痛そうなのに、不思議と他人事のように感じられた。痛みよりも空腹が強かった。なぜか無性にお腹が空いていた。
「鈴木、なにか食べ物を持ってないか?」
 
鈴木は何か答えたが僕にはもう言葉が理解できなかった。隣の鈴木の方を見て気づいた。食べ物があるじゃないかと。僕はすぐにその食事に飛びついた。何か音が聞こえたが僕はもう気にせず食事にありついた。
 
 
 
 
***
 
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2022-07-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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