メディアグランプリ

天井裏にいるあれの正体


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記事:板井さやか(ライティング・ゼミ6月コース)

サスペンスドラマの殺人現場での第一発見者やホラー映画で女性があげる「キャー」というあの頭のてっぺんから出るような悲鳴、私の人生とは無縁だと思っていた。
そう、あんな姿で悲鳴をあげたあのときまで。

学生時代に交換留学で1年間オランダに住んでいた。
景色や町並みは美しく、ヨーロッパ中からの留学生が集まる環境で、何もかもが新鮮で楽しく、できることならずっとここに住んでいたいとさえ思っていた。
しかし、ご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、ヨーロッパの街の路上は意外と汚い。
歩きたばこの人も多く吸い殻がそこらじゅうに落ちており、犬のフンを見かけることもしょっちゅう、ゴミが落ちていることもしばしばある。
衛生面で日本と大きく違うことに驚いた。

当時オランダで私はイタリア人の女の子と留学生専用のゲストハウスでルームシェアをしていた。
共用のキッチンとバスルーム、ランドリールームがあり、それぞれ個人の寝室がある間取りの共同住宅だ。
私たちの部屋は2階建ての2階部分、横並びで5戸以上同じ形の部屋が並んでいた。
それなのに、よりにもよって私たちの部屋にだけあれが住んでいたなんて!

ゲストハウスに住み始めて約2か月、私たちは夜中にカタカタと音がすることに気づき始めた。
初め私は屋根の上に鳥がいるのだろうと気楽に考えていた。
しかし、イタリア人の彼女はすぐに察したらしい、この音はあれに違いないと。
その話を聞いても正直私はまさか21世紀だしそんなもの家にいるはずがない、冗談だと思っていたが、その姿を目視したときは心底驚いた。
そこからの私たちの行動は早く、まずゲストハウス管理事務所に連絡し、自分たちでも薬剤と罠を買い、家中に仕掛けた。
罠を仕掛けたものの、一向に成果がなくただただおびえる日々を過ごしていたある日、ついにキッチンで遭遇した。
しかし、さすがにどうしたらいいかわからず、下に住むルーマニア人男子の家に駆け込み、駆除してもらった。
彼もどうすればいいかわからなかったようで、大きな段ボールの端で挟み、外に放した(生死は知らない)。

これで一件落着かと思いきや、その瞬間は訪れた。
ある日、シャワーを浴びて、タオルで背中を拭いているときに、何かが引っかかるのを感じた。
タオルについているタグだと思い、使う場所を変えても一向にひっかかっている。
どうしたかと思い振り向くと、左肩に灰色の爪のようなものが3本見えた。
一瞬、何かわからなかったが、それだと気づいた瞬間、私は頭のてっぺんから出る悲鳴をあげた。
長い「きゃーーー」ではなく「ギャー、ギャー、ギャー」と濁点つきの短い悲鳴のリピートだ。
何かを考える暇もなく叫びながら、悲鳴って本当に出るんだなと思った。
正直、どうやって振り払ったのかは覚えていない。
タオルで叩いたかのかもしれないし、もしかしたら素手で行ったのかもしれない。
とにかくパニックになり浴室のドアを開けた。
あれが廊下に出ていくときに、ちょうどドアを閉めたら、おなかの部分がドアに挟まった。
灰色の体がつぶれて伸びた。しっぽが長かった。
しかし、そのままにしておく勇気もなく、廊下に逃がしてしまった。
そう、あれの正体はネズミである。

自室にいたルームメイトはすぐに悲鳴をあげる私の元に駆けつけた。
ネズミがいたこと、それが背中にくっついたことを話している時に、彼女に「まあ、まず服をきて」と言われ始めて自分が真っ裸で人の前に立っていることに気付いた。
自分が裸かなんてどうでもよく、ただただ驚きとパニックだった。
彼女はあれを廊下に放したことに不満なようで、それを聞いて「確かに、なんで逃がしたんだろう」と冷静に思ったことを覚えている。

不思議なことに、ネズミも懲りたのかあの事件の後は一切姿を見なくなった。
しかしそれ以降はしばらく、シャワーを浴びる度に本来の効果であろうリラックス効果を実感することはなく、緊張していた。
タオルを使用するときは必ず何度も振って何もついていないことを確かめてから拭くようになった。
それからしばらくして、謎の皮膚病にかかった。
現地の皮膚科に行って、検査しても全く原因はわからなかったが、個人的にはあれはネズミのせいなのではないかと疑っている。

ネズミと同居なんてヨーロッパならでは、これも面白い経験だったと思っていたら、4年前まで住んでいた都内のアパートも夜になると天井裏から同じような音が聞こえた。
幸いなことにあれと遭遇はしなかった。

***

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2022-07-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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