メディアグランプリ

主人公になれる街で


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:川尻沙織(ライティング・ライブ福岡)

「北海道の冬に、氷点下10度の屋外で、七輪を囲んで、焼き肉をするお祭り」
があります。あなたは、参加したいと思いますか。

解凍したはずの肉は再冷凍され、焼酎のお湯割りに薄氷が張り、焼き肉のタレはシャーベット状の何かに変わる、そんなお祭りです。

その祭りの名を、「北見厳寒の焼き肉まつり」と言います。例年、2月の第一金曜日に開催されるこのお祭りは、知る人ぞ知るクレイジーな日本のお祭りの一つです。

そんな楽しいお祭りのある、北海道北見市に私が移住することになったのは、夫の転職がきっかけでした。
「夏は35度、冬は−25度」と聞いた時には、大変失礼ながら「どうしてそんなところに人が住むのか」とさえ思いました。

北海道北見市は、いわゆる「道東」、ざっくり言うならば、北海道の右上あたりに位置しています。人口約11万人で、オホーツク海に面したオホーツク地域の中核都市として機能しています。
2022年北京オリンピックで銀メダルをとったカーリングチーム「ロコソラーレ」や、ハッカの街として有名です。
東京から出張してきた友達に、
「出張で札幌行くんだけど、会える?」
なんて連絡をもらうこともありますが、札幌までは約300キロメートル、車で5時間以上かかります。ちなみに、夫の実家函館までは、車で8時間ほどの距離です。東京の方が近い、と嘆かれる距離感です。

福岡県出身で、東京から北海道北見市に引っ越してきた私は、それなりに戸惑っていました。
まずは、デパートというものが存在していません。ウインドーショッピングはできません。
「電車に乗ってみた」
とSNSに投稿したところ、鉄分高めの友人たちから、
「それは電車ではない。ディーゼル車である。汽車である」
とのコメントがすかさず入りました。確かに、皆「汽車に乗った」という表現をしていました。
引っ越した当時は、スターバックスもなく、これには職場の同僚に心底同情されてしまいました。
筋金入りのペーパードライバーだった私は、車を運転することもできず、当時1歳半の息子をベビーカーに乗せて、近所を散歩しましたが、なんと言っても車社会、一人1台車を所有しているような街なので、ベビーカーで散歩する人も珍しく、道路を走る車からの物珍しそうな視線がビシバシ飛んできました。
美術館もありません。博物館もありません。大好きなロイヤルホストもありません。ロッテリアも、一風堂もありません。

果たして、ないものづくしの北海道北見市だったのですが、生活するうちにどんどん、どんどん、知り合いが増えていきました。
とある産後ケア教室に参加したことがきっかけでした。そこで仲良くなった人たちで、教室のOG会を開くことになり、仲間が増え、同じような状況のワーキングマザーのための対話の場づくりをしたり、講演会を開催したり、どんどんとコミュニテイが広がりました。ついには、市民活動団体を作り、市からの活動助成をもらい活動をし、広報誌、新聞、テレビ、ラジオ出演など、東京にいた時には体験できないような出来事が、次から次へと起こったのです。

とにかく人の多い東京と違って、ここでは人数の少なさゆえに、周りの人の顔がよく見えました。人が少ないから「誰か、あれやってくれないかな」なんて考える場合でもありません。やりたいことがあったら、できるのは私しかいない。「やってみたいです!」と声を上げれば、なんでもできる環境がそこにはありました。
人手が足りてないからこそ、「全員が、主人公になれる街」なんだと、実感しました。

確かに、デパートはありません。仕事帰りに、最寄りの駅でぶらぶらウィンドーショッピングなんてできる環境ではありません。でも、果たして、仕事帰りにストレス発散で購入していた洋服は、ちょっとした雑貨は、本当に心の底から私が欲しいと思って買ったものだったのでしょうか。
この街では、欲しいものが先にあり、それを購入するためにお店に向かいます。本当に必要だと思ったものを買いに行くスタイルです。
ペーパードライバーだった私も、車の運転を始めました。道路は広く、信号は少なく、「目的地までの距離数イコール運転時間(分)」で行けるのが北海道の特徴です。駐車場がなくて困ることも滅多になく、信号も少なくて、渋滞でいちいち停止することもありません。
土地は安く、断熱性の高い広々とした家に、ゆったりと暮らすことができます。冬はどこに行っても暖房が効きすぎているくらいで、氷点下の外気で熱った体を冷やすような感覚です。年中薄手の長袖カットソー1枚で過ごせます。
「夏は35度、冬は−25度」は、暮らしていく上では全く問題なく、むしろ四季を彩るための最高の条件だったのです。春は、雪解けの喜びと共に。夏は日中暑くも夜は涼しく。秋は一斉に彩る紅葉。冬は真っ白に染まる樹氷。
訛りも少なく、開拓者の集まった土地柄で移住者にも優しく、余所者が地域に溶け込むことも難しくありません。
今では、存在しなかったスターバックスも市内に2店舗目がオープンし、人口に対するスターバックスの数で全国トップレベルに躍り出ています。もう同情されることもありません。

そんな人がいるかはわからないけれど、もしも、東京で、都会で、たくさんの人に埋もれて、
「自分がやらなくても、誰かがやってくれるよね」
という気持ちでいっぱいになっている人は、北海道北見市に移住してみてはどうかと思うのです。

一度の人生、主人公として暮らせる街を体験してみるのも悪くないはずです。

ちなみに、冒頭にご紹介した「北見厳寒焼き肉まつり」ですが、一般参加よりも、運営側に回るともっと楽しめるのでお勧めです。運営スタッフとなれば、設営から撤去まで、より長い時間を寒さ厳しい屋外で過ごすことになり、更なる長時間の厳寒を味わうことができるからです。携帯電話は、肌着の中に入れておかないと、あっという間にキンキンに冷えて操作ができなくなります。外さずに操作できる手袋なんて効力を発揮しませんから要注意です。氷点下での外焼き肉は、あったかいのか冷たいのか、ちょっと気になりませんか。北海道北見市は、美味しい焼肉で有名な街なんですよ。
ぜひ、一緒に主人公生活を、楽しんでみませんか。

***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2022-07-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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