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飛行機で偶然隣の席に座った人と恋に落ちる方法


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記事:板井さやか(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
飛行機で偶然隣の席に座った人と恋に落ちる、そんなことフィクションの世界でしかありえないはずだった。
 
基本的に私は飛行機に乗るときはひとりであることがほとんどだ。
それは目的が帰省や留学、外国に住んでいる友達に会うためであったりと、誰かと一緒にどこかに行くのではなく、飛行機でしか会いに行けない遠くにいる誰かに会いに行くための手段であることが多いからだ。
 
そのため、いつも隣の座席にどんな人が座るのかはくじ引きのようなもので、座席に着くまでの間は少し緊張する。
隣が空席の時はラッキーと思うし、圧迫感のある体の大きい人が来ると外れだと思うし、小さな子どもが来るとなんとか平和に目的地に到着することを祈る。
国内の移動の場合は搭乗時間も短く、本を読んだり、コーヒーを飲んだり、うたた寝をしているとあっという間に目的地に到着するので、隣に座った人と話すことはほとんどない。
隣に座っている人が普段何をしている人なのか、今回の搭乗は果たして往路なのか復路なのかなんて気にしないことがほとんどだ。
 
今から10年前のクリスマス数日前、私は成田空港からフランスのパリに向かった。
そんな時期に花の都パリに向かったのは、当時の恋人に会うためである。
貯まっているマイルの期限が切れそうということで、当時遠距離恋愛中だった私たちに彼の家族がチケットをプレゼントしてくれた。
成田からパリへの直行便ではなく、同じ系列の航空会社でモスクワを経由するルートのものだった。
 
飛行機に乗り込んで自分の席に落ち着いたあと、通路を挟んだ隣の席にジェイク・ギレンホール似のイケメンがやって来た。
その人は私の隣に座っている男性とフランス語で仲良さそうに話し始め、私はつたないフランス語で座席を交換したいかと聞いた。
彼はフランス語で話しかけられたことに驚いたと同時に嬉しそうに笑った。
もうその笑顔のチャーミングなことといったら!
私は一瞬で恋に落ちた。
 
実際に座席を交換したかは覚えていないが、それがきっかけとなって飛行機で隣に座った人と初めて搭乗中にたくさんおしゃべりをした。
私のフランス語より彼の日本語の方が何倍も上手で、下手なフランスで話しかけたのがちょっと恥ずかしかったが、話を聞くと日本にあるフランス大使館でインターンシップをしており、プログラムが終了してフランスに帰国するとのこと。
彼の出身地であるノルマンディ地方には私も何度か行ったことがあることを伝えたり、他にも共通点が多く、モスクワでの乗り換えの待ち時間もずっと話をしていた。
自己紹介のため彼は名刺をくれて、私は名刺の代わりに飛行機の中で読もうと思い持っていた永井荷風の『フランス物語』の文庫本に名前を書いて交換した。
 
私はフランスに行く目的は恋人に会うためと正直に伝えていたし、彼にも恋人がいるようで、お互いにこの先はどうこうなることも、会うこともないとわかっていたが、私にとっては夢のような時間だった。
映画のような出会い方、まさにタイプど真ん中の見た目、そして共通点の多さなど、この人が運命の人かもしれないと思った。
もっとその人と話すために乗り継ぎ飛行機が半日遅延してほしいと願ったほどだった。
 
もう少し一緒にいたいと思ってもやはり航空会社は優秀で、定刻通り飛行機は雪のモスクワを発ち夜遅い時間にパリに到着した。
そこにはもちろん私の恋人が迎えに来ていた。
その日もその翌日も仕事にも関わらず、車で約1時間半の道のりを渋滞に巻き込まれながら会いに来てくれていた。
到着ゲートの向こうにいる恋人をみて私が感じたのは安心だった。
なんだか現実世界、戻るべき場所に戻ってきたような気がした。
 
自分の恋人に会いに行くのにその道中で出会った人に惹かれるなんて、まるで映画のようだ。
これが映画なら、結末は違っていたのかもしれない。
もう何年も付き合っている恋人を空港に残して約20時間前に出会ったばかりの人と夜のパリにくり出して、別の恋が始まる筋書きは映画ではあっても私の人生にはない。
飛行機の中で恋に落ちたと思ったが、それは勘違いだと気付いた。
私がその人に抱いていた感情はアイドルや好きな俳優に抱く憧れのようなもので、その人は体験型映画のヒーローであり、私は非日常を楽しむ映画の主人公になった気分だったのだ。
 
それ以降、数えきれないほど飛行機に乗ったが、隣の座席はほとんどが女性だ。
それでいい、私にとって飛行機はただの移動手段だから。
 
 
 
 
***
 
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2022-08-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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