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乳腺炎と格闘する


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:鈴木 千弥(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「こんなになるなんて、聞いていない!!」
 
出産1か月経ったある日、私は一人叫んでいた。
 
娘が生まれてから1日も欠かさず授乳し、軌道に乗りつつあった産後1か月目のある日、私の胸に硬いしこりが出現したのだ。
それは左胸の内側部分にあり、硬い大き目なアーモンド形のものだった。骨がなく肉しかない柔らかいはずの場所に出来たそれは、違和感しかない存在で、しかも押すと少し痛い。
驚いた。人間の体がこんな状態になるのだ。だがすぐに、これはおそらく母乳が出られずに溜まってしまっている状態なのだろう、と推測した。
取り敢えず、娘に母乳を飲んでもらうしかないようだ。
私は娘に飲ませつつ、硬い部分の端から指で圧をかけて硬い部分を娘の口の方向へ押し出すように何度もマッサージをした。しかしなかなか硬い部分はなくならない。
ああどうしよう……と思いながら、娘に吸わせたまま目を胸から離してしばらく経ち、ふと目を胸に戻すと、いきなりしこりがなくなっていた。娘によって溜まっていた母乳が吸われたためだ。
 
やった! 娘よ、ありがとう!
 
だが安心したのもつかの間、気づくと何度もしこりは出来るようになっており、出来る場所も日によって変わる。そして痛みも出てくる。
何とかしなければ……。
こんな事になるとは、妊娠中は考えもしなかった。母乳が出ないとか、子供の病気とか、そのような方を気にして体験を含めて検索し、準備していたのだ。まさか硬くて痛いしこりが出来るなんて、想定外。聞いていない! のだ。
取り急ぎ私は母乳の詰まりを取るマッサージをしてくれる助産院を探し、予約をした。
 
その助産院は、母乳マッサージを主に行うことで有名だったので、藁をもつかむ気持ちで訪問する。
助産院はマンションの一室で、真ん中にベッドが置いてあり、赤ちゃん用のおもちゃや授乳クッションが置かれていた。また先にマッサージを受けた人とその赤ちゃんが身支度をしていた。初回なのでカルテに記入をしながら待っていると、私の番になる。
ベッドに娘と並んで横になると、胸をタオルで温めた後に助産師さんによるマッサージが始まった。
そして驚く。
 
自分の胸から、母乳が噴水のように吹き出し続けている!!
 
ベッドに寝ている場所から、50㎝以上の高さまで、ピューッと母乳が飛んでいるのだ。
初めて見る不思議な光景だった。いつも母乳は出た瞬間に娘の口の中に入っているため、こんなに飛ぶほど出ているとは思わなかったのだ。
ただ気になるのは、母乳がマッサージで出されるたびに出口の部分が針を刺されたように痛むことだ。
「詰まっていますねえ」
助産師さんはマッサージしながら言う。そして母乳を飛ばすのを止めて、今度は出た母乳をタオルで受け止め始めた。そしてしばらく続けた後にタオルに付いた母乳を私に見せる。
「ほら、黄色い色でしょ。本当はもっと白い色なのよ。黄色いということは、炎症が起きていたり、長時間溜まっていたものだったりするのよ」
タオルは黄色に染まっていた。
「それから、母乳の中につぶつぶが入っているので、それが出るときにチクチク痛いと思う」
助産師さんはつぶつぶを見せてくれようとしたが、あまりよく見えなかった。
その後もマッサージ中、母乳が出る時にはずっとチクチクした痛みが続いた。
 
マッサージが終わった後は、授乳する様子を見てもらいながら生活や食べ物の注意点などを説明された。
「たくさん水分を取って、脂っこい食事は避けて。飲ませる前にちょっとお乳を自分で出してから、お子さんにあげて。あと麦茶は体を冷やすからやめてね」
なるほど……ただちょっと産後の私は少々理解力が落ちており、毎日がいっぱいいっぱいだったせいか、注意点を守りきることができなかった。それがとんでもない状態を引き起こす。
 
ある日、児童センターへ娘を連れて行った際、そこでママ友とランチをした。ふと気づくと水筒の中身がなくなっている。ここで外へ買いに行けば良かったのだが、話しの腰を折るのもな、と我慢してしまった。
ランチ後、家に帰って少し経つと、なんだか少しだるい。そして体の関節が痛くなってきた。そのうち吐き気もしてくる。そこでようやく気付いた。
あれ、これは熱があるかも?
体温を測ると、38℃あった。胸もパンパンに硬く腫れていて、華道の剣山を押し当てられたように痛くなってきた。
ああ、乳腺炎だ!
泣きそうになりながら助産師さんに電話をし、翌日の予約を取る。授乳中なので、普通の解熱剤を気軽に使えないのもつらい。対処法としては、娘に母乳を吸ってもらうしかない。
これはやっぱり水分不足が原因だよなあ……失敗したなあ。痛みと吐き気を抱えながら、私は反省した。
 
翌日、起きると何もしなくても胸はジンジン痛かった。まだ熱がある状態で予約の時間に助産師さんの所へ向かう。いつもは娘を抱っこ紐で体の前側に抱えて移動するのだが、胸に子供が触れると痛いので、ベビーカーで行くことにした。
私の胸の状態を見ると助産師さんは驚く。
「これはひどいわね……解熱剤のカロナールは持っている? それなら授乳中も安全なんだけど。でも病院でしか処方していないのよね」
普通の薬局で買えないんですかい!
突っ込みたかったが、発熱中なので無理だった。
その後マッサージにより胸の状態が良くなり、詰まりも解消されたせいか娘もよく母乳を飲んでくれた。そしてその日中に無事胸の痛みと腫れは良くなり、熱も下がった。
 
その後も注意点を守りながら過ごしていたが、結局1年の育児休業中に3回も乳腺炎で発熱することになった。
発熱するたびに、注意点のこれを守れていなかったなあ、と生活態度を見直したおかげか、成長し娘の母乳を吸う力と量が増えたおかげか、復職から断乳するまでの半年間の間は発熱もなく、無事に過ごすことができた。
 
このような授乳期を過ごした私は、授乳中は以下の事が大事だと考えている。
 
1, 水分摂取を怠らない。できれば1日2~3リットル位飲む
母乳は母親の摂取する水分で出来ている。母乳を出す=母体から水分が出ていっていることになる。
水分が少なくなった母乳は粘度が出てしまい、詰まりの原因になる。
 
2, 母乳をあげる前とあげた後に、搾乳しておく
母乳をあげる直前は胸が張っており、子供も飲みにくいらしい。そのため授乳前に手で少し絞って張りを少し取り、口に含むところを柔らかくしてからだと子供も楽に飲み始められるし、最初の飲みにくさがなくなるので、子供は疲れずに飲み続けられる。
また授乳後、胸の中に飲み残された母乳が溜まっているので、それは絞
って出してしまう。次の授乳までの時間溜めて置かない方が良いためだ。
 
3, 授乳間隔を開けすぎない
3時間に1回くらいは授乳したほうが良いと思う。胸の中に溜まってしまうので、間隔のあく夜中に1回起きて授乳した方が良い。乳腺炎で苦しんでいた時期は、娘が夜中に起きなかったため、朝起きた時に胸がパンパンに張って痛い状態になってしまっていた。夜中に起こして飲んでもらうようにしたところ、段々症状は改善していった。
 
他には睡眠をしっかりとる、食事はバランスよくとる、などあり、体質により人それぞれなのだが、私の場合は上記3点が乳腺炎にならないためのポイントだったように思う。
この文章がどなたかの助けになれば幸いである。

 
 
 
 
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2022-08-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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