褒められたら覚えておいたほうがいい。強みかもしれないから。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:木田 和廣(ライティングゼミ・4月コース)
「田中さん、この企画書、着想が面白いですね。この線で提案してみましょう」
「いえいえ、それほどでもありません」
よくあるオフィスでの会話。日本的な謙遜。だが、ここに問題が潜んでないだろうか? 問題は2つあるように思う。田中さんが自分の口から、自分の着想の能力について否定的な発言をしていること。もう一つは、せっかく褒められたのに、それを有効活用しそうにないこと。
1つ目の点は、自分の耳が、自分の発言を聞いていて、自分の脳に届き、それが言霊のように実現してしまうんじゃないか? ということ。つまり、田中さんの着想力がこれ以上伸びない懸念。2つ目の点は、自分がせっかく持っている武器を、武器として認識していない点。一点目は心理学者の領域だと思うので、二点目の話をしたい。
この歳(55歳)までなんとか生きてきて、たくさんの人と会ってきて、ある分野で突出した成果を出す人が共通して持っている特徴みたいなものがなんとなく見えてきたように思っている。それは「世の中で戦っていく武器を持っていて、かつ、自分がその武器を持っていることを認識している」こと。つまり、誰でも自分なりの武器、それはピストルだったり、ナイフだったりを持っているのに、それをちゃんと認識していないとうまく使えない。人によっては、実はちゃんとピストルを持っているのに何も持っていないと思っていたりする。別の人は、実はちゃんとピストルを持っているのに、自分はナイフを持っていると誤解している。するとそのピストルは使えない。だから伸びない。
逆に、伸びる人は自分の武器をちゃんと認識しているから、それを使うし、磨く。すると、ここが人間の面白いところだと思うけれど、いつのまにかピストルがライフルになり、ライフルがバズーカ砲になる。周りの人から見ると、とても強力な武器を持った人に映る。そして、実際にある分野で傑出した仕事をする。例えば、何でもいいのだが、その武器がライティング、つまり、文章を書くことだとしてみよう。自分でそれを正しく認識していれば、それを磨こうと思うだろう。例えば、自発的にブログを書くかもしれない。良い文章であれば、友達から「いいね」がつくだろう。気分が良いので、仕事上で何か書くことに関連した仕事があれば、率先して引き受けるだろう。休みの日には意識して良い文章に触れたり、ライティング教室に通ったりするかもしれない。
すると、ライティングの能力は確実に高まっていく。「あの人は書くのが上手だ」という評判が立つ。確実に正のスパイラルに乗れる。そして、その出発点は、自分の武器、つまり、強みを正しく認識することから始まっているのだ。
強みを正しく認識することは、副次的なメリットもある。間違った人を羨まないで済む。というメリットだ。SNSをちょっと見るだけでも、羨ましさをこじらせてしまった人たちの品のない投稿に満ちている。間違った人を羨まないで済むのは精神衛生上、そして自分の成長上大事なことだろう。どういうことかというと、自分がピストルを持っているのに、ナイフの遣い手を羨んでも仕方がないということだ。野球のイチローがもし大相撲を志し、横綱大鵬がボルダリングで世界を目指してもきっとうまく行かないのだ。
それに、自分の強みをちゃんと知っていれば、羨むのではなく、むしろ、憧れるだろう。羨みはマイナスだが、憧れはプラスの気持ちだ。その気持は自分の武器を磨く行動を起こす後押しをする。「自分が持っているのはピストルだが、ライフルを持っているあの人はすごい」と憧れる。「あの人も昔持っていた武器はピストルだったはずだ。どうやってライフルに変えていったのだろう」と考える。成長のエンジンとなる。
少しだけ私の話をしたい。私はここ18年ほどデータ分析を仕事としているが、天職だと思っている。複数の書籍を出版するなど一定の成果も出ている。実は後から気づいたことだが、分析の仕事を始めるずっと前、データとは全く関係のない仕事、どちらかというと気合と根性で頑張る仕事をしていたとき、1年上の先輩社員から、こんな叱責を受けたことがある。「そんな分析とか、理屈を言ってないで、まずは、言われたこの資料を俺の言った通りに仕上げてよ」その会社はとうの昔に辞めてしまったけれど、23年前に聞いたこの先輩の言葉を頭のどこかで覚えていて、分析の仕事に触れた時にピンと来た。「これは自分の強みの活かせる仕事だ」と。そこからはただひたすらに正のスパイラルに乗ることができた。
とすると、大事なのは、自分の強みに適切に気づくことだ。それにはどうしたらいいだろう? それが周りの人からの褒め言葉なんだと思う。まず、周りの人は、基本的にあまり褒めてくれない。ということは、逆に褒められたということは、何か、特別光るものがあったということだ。そこで「自分は大した苦労も努力もしていないから」と思って謙遜してしまうのだろうが、大した努力をしなくて光るものこそが強みだ。とすれば、表向きは謙遜しながらも、心のノートには、それを強みとしてメモしておくとよい。それを磨いたらどうなるだろう? と想像してみると良い。
あなたは最近、何で褒められましたか? その褒められたことを「強み」として言い換えると、どうなりますか? その「強み」に関連して、何か思い当たることはありませんか?
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