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人生、悪いこともあればいいこともある。


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:下川優(ライティング・ゼミ夏期集中コース)
 
 
「あんた、ほんま調子乗るのもいいかげんにしいや」
自分でも驚くほど低くドスの聞いた声を発していた。人というのは怒りが頂点に至ると、逆に冷静になることを実体験した。
ある別の部署の同僚に侮辱される言葉を受けた。人生生きてきて、こんなにわけのわからないことはない。私が直接、彼に何かした覚えは全くないが、私自身という存在が、彼にとってうっとうしく感じており、理性を抑えきれずそのような言動に至ったと認識している。あまりにやることがひどいので、普段使わない言葉を彼にぶつけ、睨みつけた。
 
しかし、私も必死だったのだろう。強がっていたのだろう。自分の部署に戻ってくると悔し涙が止まらなくなった。一度自分の席に戻って仕事を始めたが、感情が抑えきれず、涙があふれてきた。周りにいる同僚に見られたくなく、会議室に閉じこもり、涙が収まるのを待った。今まで恵まれた環境だったのか、こんな状況になることは初めてだった。
 
トントントン……
語りかけるようにドアをノックする音がした。
感情的になっていた自分が、ハッと我に戻った。
そしてゆっくりとドアが開き、先輩の顔が見えた。
『やばい、目が腫れている……』と慌て、持っていたハンドタオルで顔を隠した。
「何があったんや?」と部屋の中に入ってきて、対面に座った。
その侮辱されたその一部始終をゆっくりと聞いてくれた。
 
「しんどかったな……」
この言葉をかけられて、一気に力が抜けていった。別に慰めてもらいたかったわけではない。もう大人なのだから、職場の先輩にそこまでは求めていない。けれど、この一言の言葉で人というのはここまで救われた気持ちになるのかというのを実感した。侮辱されたマイナスの気持ちと、やさしくかけてくれた言葉によるプラスの気持ちが重なり、少しずつ気持ちが和らいでいくのを感じた。
 
その後、先輩は会議室を出ていったが、目が腫れていた私は、周りの同僚にみられるのが嫌で会議室で仕事を続けた。先輩の言葉に救われたものの、侮辱された言葉は衝撃的で、なかなか平常心に戻れずに過ごしていた。
 
トントントントトトトトントトントン……
なんだか歌を歌うかのようなドアをノックする音。
1時間後、またその先輩が少しおどけた顔で会議室に入ってきた。
「ちょっと仕事手伝って」
その後、別の会議室に移り、一緒にその業務を遂行した。私もできるだけ尾を引かないように毅然と業務に取り組む努力をした。できていたかは別にして。あまり人のことを褒めない先輩も、普段見せない私の姿を気にしてくれていたのだろう。「今日は冴えてるなあ」「その考えいいね」と声をかけてくれた。気を使わせてしまっていることに申し訳なく感じ、それと共に、情けなさを感じていたが、業務のアウトプットを上げるべく、その言葉を糧に仕事に集中した。
 
あとになって知ったが、声をかけてくれた先輩は、仕事の納期に追われ、かなり時間のない中で、自分自身に声をかけてくれていたようだ。改めて感謝の思いが込み上げてきた。そして「手伝って」と敢えて腰低く接してくれることが、傷心していた自分にとってはありがたかった。
 
「悪いこともあればいいこともある」
「傷つけられることもあれば、助けてもらえることもある」
こんな当たり前なことを実感する出来事だった。
 
「自分自身も先輩のように相手に寄り添える人でありたい」
昔からそのようなことは思っていたが、今回改めてそれを実感した。
とはいえ、「言うは易し行うは難し」である。目の前に起こることに一つ一つ向き合って自分を成長させていくしか方法はないと思っている。人生プラスのことばかり続くことはあり得ない。だからこそ、日々周りへの感謝を忘れず、一喜一憂せずに、前向きにとりくんでいきたい。むしろマイナスなことが起こった時がチャンスだ! と思えるくらいの心の度量を持っていきたい。
 
依存するつもりはないが、いまその先輩と同じ職場で働けていることが自分にとってチャンスだと思う。当たり前の毎日は、とても感謝なことであることを実感できる自分でありたいと思う。
 
明日、職場についたら、大きな声であいさつしよう! 何かしてもらったらここからのお礼を言おう! そして笑顔でいよう!
 
 
 
 
***
 
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2022-08-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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