地球というバランスボールの上で
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:さかまきK
「休日はどのように過ごされますか?」
「夕方頃起きて、それからずっとゲームをしています」
恐ろしいが、これは嘘偽りのない弟の回答だ。
紛れもない真実。そう、「現実」というより「真実」なのである。
恋愛リアリティ番組であれば、一発で振り落とされてしまうかもしれないが、弟の奥さんはきっと、その「真実」を見抜いてくれたのであろう。
それは、弟にとって平日を必死に生き抜くための手段なのであった。
朝8時半に出社し、終電でどうにか帰る日々。
食事もパソコンとにらめっこしながら、そそくさと済ます。
目や体中が痛い。たまのサウナが最高の癒しだ。なんなら心だって。
パワハラと思われるような上下関係の中、毎日辞めたい気持ちを押し殺しては我慢に神経をすり減らしながら働いている。
したがって、週末の過眠は平日の不足分を補い、そしてまた来週を駆け抜けるための充電であった。
ゲームをしている時間だけは唯一、頭の中を空っぽにできるからいい、と彼は言う。
私は、弟の奥さん、つまりは義理の妹、と仲が良い。
妹というよりは、親友のような間柄だ。
互いに飲み助で、グラスが空くごとに、会話の中身も明け透けになっていく。
普段は弟の話などしないのだが、この日の私は切り出してしまった。
「職場で出会ったんだよね? どんな経緯で付き合ったの?」
「彼は入社当時から誰よりも必死で、それで営業成績トップになって、それでもずっと必死で……そんな姿を尊敬していました。私はもっと仲良くなりたいのに、いつもクールで近寄りがたくて、それで逆に燃えちゃって。正直、顔も山田涼介に似ていてタイプでした。なので私から猛アタックしちゃった」
「顔に関しては、恋は盲目と言わざるをえないよね。でもさ、仕事中はしっかりしているかもしれないけれど、プライベートのあの姿を知ってがっかりしなかった?」
「あ~たしかに驚きました! スイッチがオフになったみたいに会社とは別人で。正直だらしないところもあって、手がかかります。家事もあんまりやってくれない。でも、言えば嫌がらずにやってくれるので、私もうまくお願いするようにしています」
寛大さと愛情が目に染みた。
オフモードのだらしない弟を受け入れたうえで、それとどう向き合おうか考えてくれているのだった。
そして妹は続ける。
「今は部署が違うけど、どれだけ厳しい環境で頑張っているのか知っているので、ある程度のことは許せちゃう。私は毎日定時で帰るし、あんなにバリバリ働けないから。その分、家のことは私がやろうって。それに……いっぱい稼いできてくれたら、もうオールオッケーって感じです!!」
思わずハグしてしまった。
なんと素直で愛おしい子だろうか。
感謝が胸に募っていく……
「土日の休みも、仕事になったり疲れて寝ていたりするので、一緒にお出掛けとかできなくて寂しい気持ちもあります。でも、私は私で、フットサルとか新しい趣味を始めたり友達と遊んだりして、休みを充実させているので大丈夫! どこに行くにも快く送り出してくれるし。あと、たまにご褒美みたいな旅行に連れてってくれるんですけど、綿密な計画を立ててくれるのでそれがいつも楽しみで頼もしい!」
お酒のせいだろうか。私はほとんど泣いていた。
なんと健気で優しい子なのだ。
自らいろんなアクションを柔軟に起こし、ポジティブに捉えようとしていた。
きっと彼女は彼女で、自分なりに心のバランスを保てるような方法を模索しているのだろう。
私たちは、回り続ける丸い地球の上に垂直に立って暮らしている。
時によろめいては、体勢を立て直すようにバランスを取りながら。
今までも、鬼のように怖い上司が愛妻家だったり、クラスで一番暗かった子がお笑い芸人になったり、一番明るかった子は家庭環境が複雑だったりした。
私自身、物腰が柔らかいと言われることがあるが、実のところ、非常に気が強い。気の強さをそのまま相手に向けないための物腰を次第に得たのであろう。
傍から見える現実の裏側には、様々な真実が潜んでいるのかもしれない。
人はみな、どうしたって一人では生きられないから。
あれこれ葛藤する中で、それぞれに異なった生きる術を身につけていく。
周りとうまく関わっていけるよう、そして自分の大事なものを守れるよう、本質は変わらなくとも、代わりに別の部分で補うようにして生きているのではないだろうか?
先日も妹に会って、一緒に食事をした。
彼女が頼んだのはいつものビール! ではなくハーブティ。
なんと、もうすぐ子どもが生まれるのだ。
とにかく母子ともに元気に生まれてきてくれたらと願う。
父となった弟はこれからどんな姿を見せてくれるのか。
どうかバランスを保ちながら頑張っておくれ。
そして大事な軸として、奥さんへの感謝をいつでも忘れずにいるんだよ。
***
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