メディアグランプリ

画面上には魔物がいる


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ロビンソン安代(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
あなたは今、この文章を携帯で見ているだろうか?
それともパソコン上で見ているだろうか?
 
 
何年か前、私の夫側の親戚夫婦が離婚した。
突然の出来事だった。
 
若いアメリカ人同士の夫婦で、奥さんのSNSにはとても頻繁に、
家族で出かけた写真や夫婦でのバカンスの様子、パーティに出かける
様子が載り、彼女がいかに自分の家族や友人、
人生に満足し感謝しているかがつづられていた。
 
もう死語かもしれないが「勝ち組」 ともいえる彼女の生活を
私はいつも画面を通して羨ましい気持ちで見ていた。
 
子どもを出産したばかりでもバリバリ働きながら大学院に通い
修士課程を修了させ、且つ社交的な日々を送る彼女。
2児のママとは思えないスレンダーに鍛えられた身体。
 
私は見なきゃ良いのに毎晩のように彼女のSNSを眺めては
憧れの深いため息。
家事に育児に仕事に追われてへとへとな自分と比べては、
やけ菓子とやけ酒で気持ちを紛らわせていた。
 
彼女は自分の境遇に感謝。
私はポテチとビールとチョコの存在に感謝。
そんな感じだった。
 
だから、彼女が離婚申請を出したという事を
義母からの電話で知った時、私は信じられなかったし、
数か月後、彼女の申請が認められ、すんなり
離婚が成立したと聞いた時も驚いた。
 
彼女とチャットすると、彼女はもう数年間程、下の子の妊娠中から
すでに夫との離婚を考えていたと言う。さらなる驚き。
 
えー!? あの楽しそうなバカンスの時も、
あの友人を招いての盛大な結婚記念パーティの時もか?
 
恐るべし、自己演出能力!
私は感心しさえした。
 
でもよく考えてみたら、自分も似たようなことをしていると思った。
Facebookやブログで投稿をするとき、実際の事実を「素材」
には、しているものの
都合の悪い事には言及しないし、当然イケていると感じる
写真のみを選んで使う。
 
その写真のフレーム外にはゲンナリする現実が映し出されているが、
それはフレームアウトして写すか、編集で切り取って……
 
 
自分の気持ちも、出来事の後に何週か思考をめぐらせて、冷静になって
少し「清浄化された」 、「良い人そう」 な思考になってから
つづることが多い。
 
結局のところ、
自分が「どう思われたいか」 、「どう思いたいか」 、「どう見せたいか」
で成り立っているのが画面上の姿なのだ。
現実をそのまま見せているわけではない。
 
で、そうした投稿や写真にイイね! をもらって嬉しくなっているのだ。
 
もしかしたら、イイね! をしてくれた友人は友人で、私の
投稿に対して、私が親戚の彼女に対して持ったのと同じ感情を、
画面の向こうで持っているのかもしれない。
だって心のどこかでそれを期待して「編集」 しているのだから。
 
SNSが生み出した虚構の世界の見せあいという連鎖……。
 
〇(普段は極貧食生活だけど)
高級店で美味な食事を頂きました! ここはいつ来ても最高!
 
〇(彼が浮気しているのを私は知っている。でも)
彼氏と旅行に行きました! これからもずっと一緒♡
 
〇(1日中ガミガミ怒りまくって声がかれたけど)
子どもの誕生日でした! 私の天使ちゃん♪
 
人間なんて大なり小なり “ええ格好しいモンスター” だ。
人から良く思われたいし、自分自身も
生活の中でわずかに光る瞬間を大きく記録して
何とか心に留めておきやすくしたいのだ。
 
いくらでも編集や加工がきく画面上なら、その欲求は
極限まで高められてしまうものだ。人によって程度の差はあるだろうが……
 
だから画面上のもの、特にSNSを見るときは、
虚構の世界を演出する、“ええ格好しいモンスター” に
心惑わされないように用心したほうが良い。
 
TVのやらせやTVドラマ、映画の演出だけじゃない。
あなたの手の中のスマホ上にも、作為的に創られたものが
ごっそり盛られている。
写っているのが一般人の、あなたの良く知る人だからと
いって、まんま真実が語られているわけでは、全くない。
 
 
そして、だから、その内容に一喜一憂する必要も全然ない。
むしろそんなことで自分を卑下したり、卑屈になったり
へこんだりするなんて変な事と思った方が良い。
軽くスルーすることができないタイプの人なら、
いっそのこと、SNSは見ない方が良いかもしれない。
 
その後数カ月で新しいボーイフレンドをネット上で見つけ、交際。
感動的なプロポーズをされたことを動画付きでアップロードした
冒頭の親戚の彼女。お相手はかなりのイケメンだ。
再婚し、新しいベイビーも生まれて毎日充実して幸せだとつづっている。
女子の希望の星かもしれない。フォロワーも増えた。
私も、彼女の幸せや充実を願っている。
 
しかし、私はもう彼女の投稿で一喜一憂したり、
自分を卑下したり、しない。
魔物の好きにはさせないのだ。
 
それよりも今、私の目の前にいるもの、
例えば
散らかったこの汚家。
華やかなパーティとは完全無縁の私たち地味夫婦。
毎日喧嘩して仲直りを繰り返す我が家のうるさい子ども達に、
窓から見える小さな雑草の花。
 
 
そんな、演出も編集もしていない華の無い現実の中にある
本物の「愛おしさ」 や価値。
そちらに注意を向け、大切にしていこうと思っている。
本物にしか宿らない生身のエネルギーがそこにはある。
 
特に休日期間に多く出没する、画面を操る魔物:
“ええ格好しいモンスター” 。
この夏もあちこちで大活躍だった。
どうかあなたも、そんな魔物に心惑わされないで。
決して凹んだり悲しい気持ちにならないで。
 
画面上の他人の出来事は、
「物語」 の一つとして軽く明るく捉えていけば良いと思う。
所詮は魔物が見せている虚構の世界なのだから。
 
それよりも、あなたの周りに実存する素敵なものの方に
気持ちを向けていきませんか。私と一緒に。
 
 
 
 
***
 
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2022-08-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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