メディアグランプリ

アニメのおかげでトイレから脱出できた話


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記事:小畑 泉彦(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「この手のトラップにはなあ、たいがい秘密の抜け道があるものさ。作った職人が口封じで閉じ込められるのを避けるためにな」
これは私が大好きなアニメのひとつであるルパン三世にて、迷宮に閉じ込められたピンチの場面でルパンがクールに言い放つセリフである。燃えさかる炎の煙の行方を指さすと、そこに通気口があって脱出の糸口となるのだ。
このシーンからは、どんな局面でも慌てず冷静に状況を把握し、適切な行動を取れば危機を脱することができるという学びがある。
 
ところで私は用を足すとき(大の方)、ウォシュレットのような温水洗浄便座のトイレがあれば必ず洗浄機能を使用する。かつて痔になったつらい経験があるためだ。この日も朝からお腹の調子が悪かった私は、某店のトイレに駆け込んでいた。
 
外出先でトイレを利用する時のルーティーンは決まっている。まずはトイレットペーパーの残量チェックだ。以前、紙が尽きて芯だけになっており、スペアも見つからずに途方に暮れたことがある。そのときはやむなく芯の厚紙部分をていねいに解体し、そこから採取した紙のわずかな面積で対処したのだった(本来トイレに厚紙は流せないのでこれは非推奨行為であることをお断りしておく)。それ以来、私はトイレットペーパーの残量には人並み以上に敏感だ。ポケットティッシュも流せるタイプしか持ち歩かない。
 
さて、今回はペーパー残量については申し分なし。棚に予備があることも確認できた。安心して用を済まし、個室の壁に据え付けられたリモコンの洗浄ボタンを押した。私の第二のルーティーンとして、ウォシュレットの水勢はいつも最大出力にする。強い水圧の方がお尻もキレイになる気がするからだ。某ドイツ製高圧洗浄機のCMを見たことがある人も多いだろう。水圧は強い方がいい。
 
ブシャアアア!! 高圧シャワーをしかるべきポイントに浴びせる。数秒間ではあるが至福のひと時である。洗浄を行った後は最終工程の「拭き」を残すのみだ。そのためのペーパーは十分にある。私は洗浄を終了すべく、リモコンの「止」ボタンを押した。
 
ブシャアアア……!! ん? シャワーが止まらない。
もう一度、さっきよりもやや力を込めてボタンを再押下する。
 
ブシャアアア……!! あれれ? まだ止まらない。
 
リモコンのバッテリー残量を確認して私は青ざめた。どうやらバッテリーが切れてしまったらしい。このタイミングでかよ! 思わずトイレの個室で叫びそうになってしまった。
そうしている間にも最大水圧のシャワーは手を緩めることなく私の「中心部」を攻め続ける。何秒経過したかはわからないが、既に痛みすら感じ始めていた。
 
このままお尻を攻め続けられたら痛みを通り越して違う何かに目覚めてしまうかもしれない。それは困る。念のためもう一度ボタンを押してみたが、リモコンは沈黙したままだった。こんな時に限ってスマホは席に置いてきてしまった。つまり外部との通信手段が無いのだ。大声で叫べば誰か気づいてくれるかもしれないが、半身を露出したおじさんの情けない姿は見せたくない。
 
ブシャアアア……!! シャワーは私の悲痛な思いなどお構いなしである。神にもすがりたい気持ちになった。いつだったかトイレには神様がいるみたいな内容の歌謡曲が流行ったことがあるが、トイレに本当に神様がいるならなぜ私にこのような罰をお与えになったのか。
 
その時、冒頭に示したルパン三世のセリフが頭をよぎった。もし私がこのトイレの開発者ならばこういう非常事態も想定するだろう。どこかに「抜け道」があるはずだ!
 
私は必死にトイレ本体の周囲を見回した。すると本体に操作ボタンが配置されているではないか!
 
「こっ、これだ!!」
 
私はテスト終了時間ギリギリまで粘って答えがひらめいたときのような気持ちでトイレ本体の「止」ボタンを押した。
 
ウィイイイン……
 
消防隊の放水訓練のように噴出し続けていた水はついに止まり、シャワーノズルはトイレ本体に静かに格納されていった。厄災(水害)は去ったのだ。
 
その後、私はいつも以上にていねいにお尻を拭き、何事も無かったかのようにトイレを後にした。そして店員さんに「トイレのリモコン、バッテリー切れてるんで電池換えた方がいいですよ」と伝えて颯爽と席に戻った。周囲の客はまさか私がトイレで数分間のアドベンチャーを経験してきたとは思うまい。
 
今回私がみなさんにお伝えしたいのは、トイレでは紙だけでなく、リモコンのバッテリー残量にも注意すべきということだ。そして万が一、事の最中にバッテリーが切れても決して慌てないこと。トイレに神様はいないが「抜け道」は用意されている。これを読んだ後、まずはご自宅のトイレで確認してみて欲しい。
 
 
 
 
***
 
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2022-08-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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