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相手の電撃結婚報告で社内で公開失恋した私の玉砕話

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Kasumi(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
「私事ですが、この度結婚します」
 
ひと月ぶりの本社会議で、課長がさらりと放った一言に皆がざわついた。
先ほどまで淡々とプロジェクトの成果を発表していた口調と表情のまま、売り上げ報告でもするかのような結婚報告だった。
 
まばたきも忘れて固まっている私を、前列にいる先輩や上司が私を振り返る。
すみません、チラチラこっち見るのやめていただけますか。
 
いたたまれない。
この場にいる自分が猛烈にいたたまれない。穴があったら入りたい。
 
だって、好きだったのだ。
 
いや、過去形ではなく、現在進行形で好きな人なのだ。告白前に、失恋するとは。
しかも、この時点で私の失恋は社内上層部に知れ渡る事となってしまった。
 
 
東京都千代田区。駅の改札を出て目の前。ガラス張りのビルに入る業界大手の営業会社が私の勤める会社だ。
100人だか150人だかいる営業社員は各々常に全国に散らばっており、持ち場で売上を上げてくる。営業部の人間が集まるのは、月に一度の本社会議の時くらいだ。
 
東京というコンクリートジャングルで、数字で闘うサバイバルをしていたように思う。コミッションで年齢関係なく稼げる為、典型的な体育会系&弱肉強食の社風。社長は売上成績のいい社員しか名前を覚えないという噂もあったくらいだ。
 
そんなバトルロワイヤルな会社の社員は、9割以上が男性だった。私のように20代半ばで中途入社してくる女性社員は珍しい。
後に上司から聞かされたが、入社時すでに私は「同期の中で1番最初に辞めそうな社員」と思われていたそうだ。なぜ採用した。
(実は採用された理由も聞いたが、話が逸れるので割愛する)
 
自分でも同期中1番の落ちこぼれと分かっていたから、必死に仕事を覚えようと勉強もした。お風呂に入りながら録音した先輩の営業トークを聞き、車を運転しながらおにぎりをかじる。専門書とノートが顔の上にかぶさったまま意識が薄れ、深夜に飛び起きたことも何度かあった。休みも仕事の勉強に費やし、年間300冊ほどのビジネス書や自己啓発書を読み漁る。1日のうち、16時間ほどを仕事に充てていた。
 
でも、これだけ頑張っても、満足いく結果が出ない。
 
田んぼとキャベツ畑が広がる地元を飛び出して、中途入社し早2年。
20人ほどいた同期社員は、1年も経たないうちに誰も居なくなっていた。同期もおらず、気軽に話せる社員もいない。少しずつ、気持ちも立場も孤立していった。
 
会社の仕組みを、結果の出せない社員には興味も持たない上司たちを、憎らしく思ったこともある。けれど、そんな仕組みの会社に自ら飛び込んだのだ。嫌なら辞めればいい。
「ここで辞めたら自分に負ける」そんな意地が会社にしがみつかせていたのだと思う。
 
それでも頑張れたのは、社内に憧れの人がいたからこそ。たまに会議で会える日を励みに、日々の仕事を続けていた。
 
恋愛をしていると毎日が楽しい。
どんなに上司から叱責されても、自分の能力の低さに打ちのめされても、好きな人のメール文を読むだけで気持ちが上向く。お世辞にもイケメンとは程遠い人だけれど、「営業成績トップで仕事ができる」というだけで、ミーハーな私が好きになるには十分だった。
 
ある日、上層部との飲み会で好きな人がバレてしまった。けれど結果的に、社内の人と打ち解けるキッカケになったのだ。
 
入社時から自分の事を落ちこぼれと思い、見えない所で努力していた私は、他の社員のように積極的に先輩に教えを請いに行くこともしていなかった。卑屈になって1人で抱え込む私が、会社で溶け込めないのは当たり前だったと、この時気づく。
 
そして、恋愛バレをキッカケに会社の人との距離が近くなり、仕事が少し楽しくなってきた矢先の、結婚報告だった。
 
「応援してやる! 」と言った上司が心配そうに私を振り返る。
「あいつ彼女絶対いないから頑張りな! 」と言ってくれた先輩がチラリと私を見遣る。
告白前に玉砕した事実を、その場では飲み込めずにいた。
 
そこからは、どうやって自分の担当エリアに帰ったのか記憶にない。ただ、その夜、1人部屋で声を上げて泣いたことだけ覚えている。
 
失恋の翌朝、お客様宅に訪問しようと車を走らせていると、上司から電話がかかってきた。
車を路肩に停めて通話ボタンを押すと、上司の声が勢いよく飛び出す。
 
「大丈夫?! 仕事できる?!」
 
一瞬何のことか分からず、「へ?」と間の抜けた声を返してしまったが、すぐに昨日の結婚報告&失恋のことだと気がつく。心配、してくれていたのだ。
 
泣きはしたが、自分で思うよりもダメージは少なかった。想いを募らせる前に失恋したことで、傷が浅かったのかもしれない。他にも、これまで関わりのなかった上司や先輩たちから励ましを得た。失恋のダメージ以上に、周りの温かさへの感謝を感じずにはいられなかった。
 
私にとって失恋バレは「ダメな自分を見せても大丈夫」だと気づく経験になった。
 
すっぴんを見せた相手に気を許すのと似た感覚だろう。
会社の人に「よく見せよう」と背伸びして周りに作っていた壁が、失恋バレで自然と崩れる形となり、周りの厚意に気づけるようになったのだ。
 
上司や先輩たちに好きな人を知られていなかったら、相手の結婚で幕を閉じるという私の痛い失恋も、誰にも気づかれることはなかったと思う。
けれど、失恋の「痛い姿」を知られてしまったことで、今まで感じていた会社への“近寄りがたさ“が薄れてきたようだった。
 
その頃から、私は少しずつ周りに協力を頼み、意欲的に仕事へ取り組んだ。今までのように劣等感からではなく。全国に散っている先輩たちの元へ飛び、時にはタダ働きをさせてもらい、一人ひとりの営業スタイルを真似ながら学んで回った。
 
誰しも人に自分の無様な姿は見られたくない。
けれど、無様な姿を晒しても尚、支えてくれる人がいた事に気づく。
だからまた、頑張れるのだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-09-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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