天狼院書店のライティングゼミに熱中しすぎて家が火事になりかけた話
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:杉本陽子 (ライティング・ライブ東京会場)
火曜日の12時過ぎのことだった。
私はその日、朝からとても浮足立っていた。
天狼院書店ライティングゼミの2回目の課題投稿が終わった次の日である。
同じゼミ仲間の投稿がフェイスブックグループに続々とアップされていた。
火曜日は、自らの投稿文章に対してフィードバックをもらえる日である。
編集部から「掲載OK」が出た記事はWEB天狼院書店に掲載される。
1回目の投稿がめでたく掲載となり、記事を読んだ友人たちから「面白かった!」「惹きつけられる文章だった」「まるで小説のよう」と沢山のお褒めの言葉をいただき、私はすっかり調子に乗ってしまった。
更に、天狼院書店メディアグランプリで1位獲得したことで、気分は「ザ・ベストテンでデビュー曲が初登場1位を獲得した無名の新人アーティスト」である。
2回目の投稿は、1回目よりも更に赤裸々にぶちまけたので、「きっとまた掲載になるはず!」という期待を少なからず抱いていた。
(前回のフィードバックが火曜日の11時すぎだったから、きっともうすぐフィードバックが返ってくるはずだ)
私はそわそわしだした。
午前中の在宅の仕事をさくっと終わらせ、フェイスブックにあがっているライティングゼミ仲間の2回目投稿を片っ端から読み始めた。
(Aさんの文章は今回もキレキレで勢いがあって面白いなあ)
(あ、Bさん鼻毛出てる(ライティングゼミでは、文章を書く上での注意点を守れていないことを『鼻毛が出ている』と表現する))
等と、自分がフィードバック担当になったつもりで読みこんでいく。
「自分で文章を書きだすと、文章を読むのが楽しくなってくる」というのは、ライティングゼミ受講生の言葉だが、まさにその通りだった。
ふと目を上げるともう12:30を回っていた。
(そろそろお昼ご飯食べないと)
重い腰をあげてキッチンに向かう。
頭の中は、ライティングゼミのことでいっぱいである。
次に書く記事の内容についてあれこれ思いを馳せつつ、冷蔵庫をあさると昨日の夕飯の残りの豚バラキャベツがあったので、電子レンジでチンする。
(海外旅行も好きだから、そのときのことを書いてみようかな。スイス旅行のことなんていいかも!)
なんてウキウキしながら、炊飯器からごはんをつぐ。
電子レンジが「チン!」と鳴っておかずを取り出す。器も熱くなっていたので、取り出し用のプラスチックトレイも一緒に取り出す。
キッチンの作業スペースが他の食器で埋まっていたので、電子レンジから出したばかりのプラスチックトレイをコンロの上に置いて、熱々の器をお盆の上に移動させ、ダイニングテーブルに移動した。
ごはんを食べながら、ゼミ仲間の投稿文章を読み漁る私。
すると、ピピッピピッとキッチンの方で音が鳴った。
私は普段からぼーっとしているので、いつも何かしら閉め忘れたりする。
(この音は冷蔵庫の閉め忘れかな?)
と思いながらキッチンの方に駆け寄った私が目にしたのは、目を疑う恐ろしい光景だった。
なんとコンロの上に置いたプラスチックトレイが熱で溶けて燃えだしていたのだ。
その火はワインボトルの高さぐらいにまで燃え盛っていた。
直前まで味噌汁を温めるためにそのコンロを使っていたため熱々だったのである。
頭がライティングゼミでいっぱいだった私は、そんなことも忘れてうっかりトレイを置いてしまったのだ。
全身から血の気がさぁっと引いて、胸がきゅううううっと締め付けられるような痛みを覚えた。
(うわあああ火事になっちゃった!!! 早く何とかしなきゃ!!!)
慌てて、背後の冷蔵庫横につるしていた消化クロスを広げて火に向かってばっと覆いかける。
ばっさり火を覆いつくせたものの、クロスの下で火はまだ燃え盛っている。
(やばい! 消えてない! どうしよう!!! 119番呼んだ方がいい? でも、もしかしたらこれで消えるかもしれないし……いやいや燃え広がったらどうするの?! マンションの人たち大迷惑よ!!)
消防車がサイレンを鳴らしながらマンション前に駆け付け、火事は燃え広がり、住民たちは慌てて避難し、外には煙が黙々と立ち上がるマンションを眺める野次馬の群れ。住民から避難の視線を浴びながら私は事情聴取を受ける。知らせを受けて夫が会社から駆け付け、泣きながら謝る私……
一瞬にして火事が燃え広がった場合の最悪の状況が細部にわたって頭をよぎった。
そんな大事になったら、さすがの旦那さんも私に愛想つかすかもしれない。
いやいや絶対無理消さないと!!!
クロスの下はどんな状態か見てみようと、端をもって恐る恐る中を覗いてみる……
するとまたそこから酸素を得たのか、ばっと燃え上がる。私は慌ててクロスを全体にかける。
(そうか、火は酸素を得ると燃えるのよね! こんな時に理科の知識が役に立つとは思わなかったけど! 収まるまでこのままでいるしかないのかしら!?)
10秒ほど待ってみたが火が収まる気配がない。
(やばい、このまま燃え広がったらどうしよう! やっぱり119番しようか……!)
スマホを掴む、いやちょっと待てよ。やっぱりスマホを掴む。そんな動作を3回くらい繰り返したところで、思い切って水をかけてみることにした。
(天ぷら油に水をかけたらばっと火が燃え盛るから、絶対かけちゃいけないってテレビでみたことあるけど、プラスチックだから大丈夫かも……!)
近くにあった小鍋に蛇口で水をいっぱいに注いで、消化クロスをばっとひらいて鍋の水を半分くらいぶっかけた。
じゅうううううううと凄い音を立てて煙が上がった。それでもまだ火は燃えている。
もう一度鍋の残りの半分の水を思いっきりぶっかけた。
……火はやっと収まった。
ふうぅぅぅぅぅ……。
これで離婚の道は免れた。
残ったのは、コンロにこびりついた灰色のプラスチックの残骸である。
うん、一旦落ち着こうか。
ぐちゃぐちゃのプラスチックの残骸とびちゃびちゃの水浸しのコンロをほったらかしにして、窓を開け、換気扇を回し、すっかり冷めてしまった昼ご飯を食べることにする。
犯行直後の犯人は、動揺を落ち着かせるためにタバコを一服したりと、無意識に通常通りの行動をするらしい。犯行後の犯人の気持ちがよく分かった。
ご飯を食べながら一人反省会である。
(普段だったら、プラスチックトレイをコンロの上に置いたりしないのになあ。そういえばあの時は少し浮足立っていた気がする。次に何を書くかで頭がいっぱいだったんだよなあ)
やれやれ。火事になっては元も子もない。
初投稿で1位を取って天狗になった私を見かねて神様がお灸をすえてくれた気がする。
これからは気を引き締めて、さらに精進しよう。キッチンに立つときは十分に注意しよう。
懺悔もかねて、一部始終を投稿してみることにする。
万が一掲載されたら嬉しいが、夫がこの文章を読まないことを祈るばかりである。
皆さんもライティングゼミへの熱中しすぎには十分お気をつけください。
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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