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「べき」教の信者


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記事:TOMOMI(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
「え? 私が膠原病? うそでしょ?」
 
私は数年前膠原病になってしまった。
まさか、私が? だった。
親族には膠原病者は一人もいない。
だから自分が発症して驚いたし、ショックだった。
数か月前から体調が悪くなり、突然、顔に蕁麻疹がでたり、
風邪のような発熱もあった。
そんな時でも休まず、病院へ行き薬を飲んでやりすごしていた。
その後も、疲れや眠気などの不調が続いていた。
それなのに、私は体の声を聞いてあげることもなく、頑張り続けた。
そして、限界に達し病気を発症した。
 
私は「べき教」の信者だ。
「べき」「ねばならない」を正しいとし、忠実に守ってきた。
「母は子供のためにこうあるべき」
「頑張らなくてはならない」
「まじめないい子でいなければならない」
「一度きめたことはやり通すべき」
あげたらきりがないくらい「こうでなくちゃ」という思いが強い。
 
だから、同じ「べき」を持っていない人の行動にイライラする。
そして、同じ「べき教」の信者にさせようと他人に押し付ける。
 
会社員時代の社内研修で
「仕事をまかされたら、最後まで責任をもってする?」のような質問に、4つから回答をえらぶようなワークがあった。
1, そうしなければならない。
2, そうできたらいいなあ
3, そうしなくてもいい
4, やらない
このようなたくさんの質問に答えるワークだ。
私の答えは全部1番だった。
他人も自分と同じだと思ったら、意外にも2番が多くて驚いた。
私だけが、1番を多く選んでいた。
そこで、心理学の先生に「あなたは長女? きっと、小さいころからお姉ちゃんだからって育てられたんだよね。お姉ちゃんだから~しなければと頑張ってきて、我慢いっぱいしてきたよね。つらかったね。我慢しなくていいんだよ」
といわれた。
すると、感情よりも先に、涙があふれてきて、号泣してしまった。
いままでに、経験したことのない涙だった。
涙は、悲しいなどの感情が先で、その後にでるものだと思っていた。
それが、その時は、先生の言葉を聞いて、感情よりも先に涙がでてきたのだった。
私の中に蓋をして閉じ込めてあった感情に先生の言葉がふれて、いっきにあふれた感覚だった。
初めて私の本心を言い当ててくれ、受け入れてもらえた感覚。
そして、気が付いた。「私はずっと我慢していたんだ」ってことを。
 
実際、私は「お姉ちゃんなんだから~しなければだめ」
「女の子なんだから~するべき」などと言われて育ってきた。
親の期待にそえるよう、がっかりさせないよう頑張ってきた。
運動も勉強も一番を目指し、親にとっては自慢の娘だったと思う。
それで、私は幸せだったか?
私の心にストレスをいれるツボがあったら、ほとんど満タンだったと思う。
ささいなことにイライラして、他人の目を気にして人とくらべる。
自己肯定感も低くて、自分が嫌いだった。
でも、そのイライラを見せないようにニコニコ笑っていた。
優等生でほめられる私でいないといけないと思い頑張り続けていた。
けど、いつも不満をかかえて、ちっとも幸せじゃなかった
 
結婚して、私は家を二軒もつことになった。
けっしてお金持ちだからではない。
 
最初の家は、実家の隣にたてた。全財産をつぎ込んだ大きな素敵な家だ。
しかし、そこには3年しかすまなかった。
親の面倒をみるのは長女がするべきと思って隣に越してきたが、
親の「べき」「ねばならない」が強すぎて我慢できなくなった。
 
そのころには、自分が我慢してることを自覚し、生きづらさを感じていた。
親の価値観をおしつけられるのが嫌だった。
親が大事にしている「世間体」から解放されて、他人の目を気にせず生きたかった。
 
ある日、夫の親が、うちに遊びにくることになった。
私は最初わざと親に教えなかった。
これは、私たち夫婦と夫の親の話だから、あなたたちには関係ないとわからせたかった。
けれど、罪悪感から結局話してしまい、
それを知った両親は、「こちらまで親御さんがみえるのだから、私たちも挨拶しなければ」としゃしゃりでてきた。
私は、なんども「関係ないでしょ!」と訴えたが、「挨拶するべき」と自分たちの考えを変えることはなかった。我慢の限界だった私は引っ越すという大きな決断をした。
お金で苦労することになるが、自分を「べき」から解放させてあげたかった。
 
けれど引越後に気が付いた。
親と離れたのに、楽に生きられない。
私自身が「べき」「ねばならない」だらけだったからだ。
親から逃げても、私の中にしっかり作られている「べき」から
簡単にのがれることはできなかった。
私自身が「べき」を捨てなければ変わらない。
 
親から押し付けられてはきたけれど、親の期待に沿って生きていく道を選んだのは自分だった。
「べき」の鎧をぬがせることができるのも自分しかいない。
しかし、それは私にとって簡単ではなかった。
そして、とうとう病気になってしまった。
 
病気を治すためにいろいろな治療法を探した。
その中で、病気にはストレスが深くかかわっていることを知った。
心の在り方がとても重要なのだ。
信じられなかったが、メンタルで血液の数値が変わることを身をもって知った。
病気を治すために「べき」「ねばならない」を捨てよう。自分を楽にしてあげよう。
 
しかし、「べき」の捨て方がわからない。
 
そんな時、アメリカ赴任がきまった。
アメリカには、日本の「常識」「世間体」はない。
だから、「べき」も「ねばならない」もない。
みんな違ってみんないい。すべてが自由だった。
学校も、自由な服装、髪型で良い。まわりにあわせようなんていう考えはない。
そんな自由な環境にいるうちに、私はすこしずつ「べき」「ねばならない」と考えることが少なくなっていった。
 
日本にいる時、近所に越してきた夫婦が挨拶にこなかったことがあった。
私は、「引っ越しの挨拶はするものでしょ」とすこしイライラした。
だから、アメリカに来た時もそれが常識と思っていた。
しかし、アメリカでは、だれもそんなことしない。少なくとも、私の町では。初めて会った時に、自己紹介するくらいだ。してもいいし、しなくてもいい。
私の価値観って、ほんとちっぽけな日本の中の「常識」でつくられたもの。
そんな「ねばならない」に囚われていた私はなんて愚かだろう。
アメリカでの「べき」「ねばならない」のない自由さは、私が求めていたものだった。
自由で、解放されたストレスのない世界を体験した。
不思議と病気もどんどんよくなっていった。
 
さて、日本に帰国した私がどうなったか・・・・・・
アメリカ生活で「べき」を捨ててはきたが、
日本で生活を始めると、「べき」「ねばならない」が時々頭をよぎる。
 
しかし、以前と違うのは、私は「べき」のない快適さを知った。
時々あらわれる私の「べき」に「おっ! べきちゃん、でてきたな!」と気付いて笑って手放すことができる。
窮屈で生きづらかった自分とはさよならして、人生を心から楽しむ。
そのために、「べき教」の信者はやめる。
そう決めた。
 
 
 
 
***
 
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2022-09-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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