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寝台特急の窓から、「推し」を考える


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記事:k eri(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
同じ「推し」であっても、そのポイントは異なる。アイドルやアーティストなどの「人(2次元を含む)」だけではなく、「モノ」も同様である。
 
ひとことで「鉄道ファン」と言っても、「乗り鉄(電車に乗る)」「撮り鉄(写真を撮る)」「音鉄(発車メロディや走行音などをとる)」「グッズ鉄(限定品を集める)」……など、それぞれ推しポイントは異なる。また同じ「乗り鉄」であっても、JRの青春18きっぷで普通電車を乗り継ぐのが好きな人もいれば、特急電車などの特別車に乗るのが好きな人もいる。
 
私は「鉄道ファン」である。属性は「乗り鉄(特別車)」が主である。関西在住の為、JR西日本の特急はいくつか観光列車も含めて乗ったのだが、それ以外の地域はまだまだである。もちろん先週開業した西九州新幹線は私の「乗りたいものリスト」の上位に入っている。電車好きは小さいころからで、社会人になってからは毎年「乗り鉄」の旅に出ている。
 
夏休み期間中、寝台特急である「サンライズ瀬戸」の臨時列車に乗ることができた。かつて寝台特急は多数走っていたが、夜行バスやLCCの台頭で数を減らしてきた。通常の移動手段としての寝台特急はこのサンライズ号が唯一である。ほかにも「四季島」「カシオペア」「トワイライトエクスプレス瑞風」「ななつぼしin九州」などがあるが全て数十万もする高級なものである。
 
唯一の寝台特急であるため、通常は運航1ヶ月前の販売開始と同時に満席になる人気の列車である。そんな特急なのだが、8月初旬、ある日ふとホームページを見ると臨時のサンライズ号に1席だけ空きがあったのである。数日後の出発で空きがあることは奇跡である。すぐに申し込みをした。
 
 
出発当日、ワクワクした気持ちで夜の大阪駅へ向かった。通常のサンライズ号は深夜24:30頃に大阪駅発だが、臨時は22:29に大阪駅を出発する。22時台はまだまだ駅構内の売店が開いている時間である。特急内に売店等がないため、飲み物と食べ物を買い込んで電車に乗った。
 
乗ったのはサンライズ瀬戸のノビノビ座席というものである。人ひとりが寝られるスペースがあるのみで、枕や毛布などはない。それぞれのスペースは区切られているが、完全に仕切られているわけではない。何もないため、冬は冷えてこれはつらいなと思った。
 
「大阪を出ますと、次は横浜です」次の停車駅との間が最も遠い。聞きなれないアナウンスは新鮮であった。車両も消灯となり、持参したタオルを枕にして、寝る。ただ、テンションが上がっているのと電車の音で、なかなかぐっすりと寝付けなかった。ふと目が覚めて、気が付くと名古屋を通過していた。通常の特急はもちろんのこと、新幹線も必ず止まる名古屋を通過していく姿は、何となく気持ちが良かった。その後もウトウトするが目が覚める……を何度も繰り返した。静岡の富士駅で停車。乗務員が交代したようだ。
 
浅い眠りから起きたのは横浜駅手前、車掌さんのアナウンスで目が覚めた。その日は平日であったため、駅には通勤へ東京方面に向かう人が大勢いる。電車はこういった「普段使い」の人が「普段」乗ることが大事だよなと思いながら車窓を眺める。サンライズで東京駅に着いたのち、JR東日本の特急を何本も乗車した。また江ノ電や湘南モノレールや小田急など、関西在住だとなかなか機会がない特急にもたくさん乗った。1日で、7本の特急や特別車に乗った。江ノ電や小田急では、普段使いしている人も多数いた。
 
 
もちろん鉄道会社にとって「鉄道ファン」はお金を落としてくれる重要なお客様である。ファン側も法律やマナーを守るといった当たり前なことを遵守する必要がある。しかし、最も重要なのは「それらを普段使いする人たち」である。これらの人たちが減ると鉄道会社も赤字を垂れ流すわけにはいかないのでサービスも低下し、最終的には廃線となる。もちろん関東の電車を普段使いすることはできないので、自分の周りの鉄道にはなるべく乗り、今後も素敵な電車を走ってもらうために「推し」に「課金」をしていく。
 
さまざまな理由により、「推し」を突然推すことができなくなる時がある。私も乗りたかった電車は多数あるが、都合がつかない……と思っているうちに運航終了や廃線になってしまい、乗れなくなったものがある。アイドルなどでも、コロナ禍で突如活動終了といったこともあると聞く。「次」がない時もあるのだ。なので「推したい」と思ったときにはなるべく「推す」ことを、難しい場合でもそれに対して活動することが大事だと改めて思った。
 
 
 
 
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2022-10-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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