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「趣味は意外なところから」

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:美月優璃(みつきゆり)(ライティング・ライブ名古屋会場)
 
 
「趣味は何ですか?」と尋ねられて、すんなりと答えられる人はリア充の人だと思う。
自分の好きなことがあり、それに費やす時間と経済力があるのは幸せなことだ。
私も今でこそいくつかの趣味(かつて手を出した習い事も含めて)を答えられるが、学生時代には
「趣味」といえるほど好きなことが、無い人間だった。
嫌いなこともなければ、さして好きなことや興味があることも殆どなかったのだが、今にして
思えば、物事の楽しみ方や面白さを知らなかっただけだった。
しかし、そんな自分に物事の興味や楽しみ方を教えてくれたのは、学生時代の知人だった。
 
私は学生時代に寮に住んでいたことがあり、Sさんという私より1つ年上の寮生とお友達になった。
部屋が近いこともあり、よく互いの部屋を行き来しておしゃべりをしたり勉強をし合ったりした。
Sさんは他大学の学生で在学中から司法試験の勉強をして私よりも遥かに忙しい人だったのだが、おしゃべりをしていてもいつも話題も豊富で色々なことを良く知っている人だった。
そんなある日Sさんから「ねぇ、趣味とか好きなことってないの?」と尋ねられたのだが、何事にもさして興味を持ったことがなかった当時の私は、ロクに答えられなかった。
子供の頃にソロバン、水泳、ピアノと習い事をしたが、どれも自分から望んで通った訳ではない。
ソロバンと水泳は「当時の習い事の定番」だったので何となく通い、ピアノに至っては「母親が自分の夢を子供に託す」為に、私に習わせていただけのことだった。
習い事のおかげで良かったこともあったかも知れないが、そもそも好きでも何でもないことだったので、通うのを辞めた途端にきれいさっぱりと忘れてしまった。
 
一方でSさんは大のクラシック好きで、部屋には溢れんばかりのクラシックのCDがあった。
作曲家のことや曲のことを語り出したら、それこそ徹夜で語れるくらい知識もある人だった。
私も有名な曲くらいは聞いたことはあったが、そこまでクラシック音楽が面白いと感じたことは
なかった。
むしろ「お眠りタイムのBGMぐらいの音楽じゃないの?」ぐらいにしか思ったことがなかった。
そんなある日、Sさんから「クラシックってね、指揮者によって同じ曲でも全然印象が違うのよ!
それが楽しさの一つなのよね」と言われたことがあった。
私は「えっ…… 指揮者⁈ 同じ曲を演奏するのに、何で指揮者で変わるの⁇」と、Sさんが
言っていることが全く理解できなかった。
そこでSさんが持っているクラシックのCDを何枚か借り、同じ曲で指揮者ごとに聞き比べを
させてもらった。
私が聞き比べをさせてもらったのはヘンデルの「ハレルヤ」だった。
この曲を選んだのは、私が知っている数少ないクラシック音楽の中で一番気に入っていたからだ。
そして聞き比べてみると…… 確かに! 指揮者によって曲の演奏の仕方が微妙に違うのだ。
曲のテンポがゆっくり目だったり、ややテンポが早めのバージョンだったりと、同じ曲でも確かに
印象が違って聞こえるのだ。
また歌っている言語が違うと、曲の印象もガラリと変わることも分かった。
私は「ハレルヤ」は英語バージョンしか聞いたことがなかったが、初めてドイツ語バージョンを
聞いた時は「地の底を這いずり回っている断末魔の叫び」的な印象をうけて、聞いている内に
テンションが一気に下がった記憶がある(笑)
個人的には「ハレルヤ」は英語バージョンの方が、高らかな気持ちで聞くことができるので、好みである。
そして「指揮者によって曲の印象が変わる」というSさんの言っていることが少し分かりかけた時に、自分好みの指揮者に出会うことができた。
それはフルトヴェングラー指揮のベートーヴェン第9交響曲を聞いた時だった。
「これは今まで聞いたことがある第9とは違う!」と直感的に思い、以来私のお気に入りの指揮者である。
私がフルトヴェングラーが好きな理由は、何というか曲全体に艶のある音色が漂う印象を受けるからである。
非常に有名な作品なので他の指揮者のバージョンも聞いたこともある。
ポピュラーなところではカラヤンが有名で、彼のバージョンも聞いたことがあったが、やはり一番
心を打たれたのはフルトヴェングラーのバージョンだった。
こればかりは個人の好みによると思うが、クラシック音楽の楽しみ方の一つを自分でも味わうことが出来たのが、今では嬉しく思っている。
 
自分が全く興味を持つことがなかったクラシック音楽の楽しみ方を教えてくれたSさんには、
今でも非常に感謝をしている。
彼女おかげで自分の視野が広がり、自分がいかに物事分かっていなかったか、そして「教養」の大切さを知ることができたと思っている。
少し物事への視点や捉え方を変えるだけで、案外自分の興味や関心が広がっていくものだ。
ただ、そのきっかけは大切だし、そのきっかけを掴む為にも自分のアンテナは感度高く張って
好奇心旺盛でいようと今も心がけている。
 
 
 
 
***
 
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2022-10-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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