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あの世で会ったら

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:いのくち聖子(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
彼女は突然死した、寒い師走の夜に会社の休憩室で発見された。
52歳、脳梗塞だったらしい。
人はこんなにも簡単に死んでしまうのか、早すぎるよ、早すぎてどうもこうも受け止められない、信じたくない、夢であってほしい、嫌だ。 神様仏様ひどすぎるじゃないか。
 
もう一人の親友が泣きじゃくって電話をしてきた。
「昨日の、うっ、夜って、一人で残業してたらしくてね、う、う、うっ、営業の人が帰ってきてわかったらしいと」と、途切れ途切れの声で話してくれた。
しばらく呆然として、言葉が出てこなかった。
「……信じられん、どうして……そんな事になったんやか、とにかく行くわ、顔を見ないと信じられんもん、こないだ忘年会をしたばかりだったのに!」
ボロボロ泣きながら支度をしていた、頭はこんがらがってどうして良いかわからなくなっていた。 大切な親友、中高一緒でお互い同じ高校の同級生と結婚し、ずっと夫婦で仲が良かったのだ。 死んでもらっては困る、まだ一緒にやりたいこともいっぱいあったし、話したいことも山ほどあったし、これから人生の後半を楽しむはずだったのだから。
 
しばらくは喪失感で何も手につかずに、ただただ日常が過ぎていく感じだった。
こんな時、彼女だったらどうしただろうかとか、どう言ってくれたかなとか、そんな事を思いつつ、また涙がポロポロポロポロ。
 
あの日からもう10年近くになるが、今でも思い出すと涙がポロポロ出てくる。
 
「いつ死ぬかわからんけん、食べたいもの食べて、行きたいとこ行って、買いたいものを買おう」というのが彼女の口癖だった。 有言実行、彼女の生活ぶりはそのまんまだった。
今思えば、まるで早く死んでしまうことでも予感していたかのように。
 
美人で、スレンダー、何でもこなすスーパー主婦、仕事もできるし頭のキレも良い
趣味も多くてファッションセンスも良い、旅行もさくさくっと計画しちゃうし、仲間内では頼りになるリーダー的存在だった。
生き急いだと言ってる人もいた、そうかもしれない。
でも、後悔のない人生に思える。
早すぎる死だったけど、きっと彼女に後悔はないだろう。
ただ、もっとやりたい事があって無念だったに違いない。
 
彼女の命日に集まって偲ぶ会をしていたが、この数年は彼女の誕生日に集まることにした。
生まれてきてくれてありがとう、私達と友達でいてくれてありがとうの日にした。
 
元気で明るくおもろい彼女の話は、尽きることはなくエピソードだらけだ。
笑ったり泣いたり忙しい、そしてそれぞれの夢に彼女が出てきた話になった。
 
私の夢に出てきたのはこの10年間で3回だった。
 
1回目はドーム前の広場で、数人でチラシを配っていた。
「何しよると?」と聞くと「これ配りよると」と言ってチラシを見せてくれた。
チラシは茶道教室の案内だった。
「へぇー、またはじめたと?」「うん、そうよ!」と言っていた。
私達は独身時代茶道を習いに行っていたのだ。
 
2回目は、最近のマイブームの話を仲間でしていたら、彼女が英会話を始めたと言い出して、先生はデイブスペクターさんだと言うのだ。
「あのダジャレのデイブさん?凄いやん」
「そうよー、ダジャレが面白いとよー」って言うから、みんなビックリだ。
だって、英語のダジャレがわかるって、彼女の英語力がすごいってことだと思ったから。
 
3回目は、エレベーターに二人で乗っていた時の事、(同窓会前だったからか)こんどの出し物を何にするかって悩んでいたのだ。
「そうだ、今度は楽器にしよう」と彼女が言った。
「えーっ、あなたも私も譜面も読めんのに楽器?」と、消極的。
「今から読めるようになれば良いやん」と、ポジティブだ。
 
こうして夢はいつも断片的で、あっという間の事なんだけど、3度目の夢で思った。
 
いつもの彼女らしく夢の内容がポジティブでチャレンジャーだ。
茶道も、英会話も楽器もみんな習い事。 途中で挫折していたり、やりたいと思っていたけど手をつけてない事だったりだ。
「あなた勿体無いわよ、時間もたっぷりあるのにやらないなんて損してるよ」と。
彼女はあの世から私の背中を押してくれてるような気がした。
やりたくても出来なかった彼女の無念を思うと、やれるのに躊躇している自分が情けない。
彼女は、生き残ってる私に、もっと生きる喜びを味わうようにと語ってくれてるような気がする、うんきっとそうだ、夢で教えてくれたんだ。
生きているから出来るんだし、だからハッピーもアンハッピーも全部受け入れて丸ごと人生を楽しまなきゃと。
 
「私の分まで、寿命尽きるまで、しっかり生きてね!」と、言ってくれていると、思い込んでる自分がいる。 やっとこの10年で、私もポジティブに彼女の死を受け入れることができたようだ。 いなくなるって事はもう話せないし会えないし、嬉しいことも面白いことも分かち合えないし、寂しいけど、いつか私もあの世に行く日がやってくる、あの世で会ったらトラック3台分くらいの私の土産話しを聞いてもらうつもりだ。
 
そして一つ文句がある、ずいぶん昔の事だが、私が旦那の浮気で離婚するって相談したら「だいたい浮気ぐらいで離婚げな、なんねっ、資格もないとにこれからどうやって食べていく気ね!美味しいもん食べて、買い物してストレス発散たいっ」と、ほぼ叱咤された。
ふつふつメラメラと夫への怒りは消えなかったが、彼女の言うことにそりゃそうだな、と私も納得した。
ところがだ、彼女の死から数年後のある偲ぶ会で彼女の夫が言ったのだ、浮気がバレた時、彼女は旦那のお気に入りのネクタイをハサミで切り刻んでいたらしい!
「やるねーっ! うけるーっ!」とみんなで大笑いしたが、待てよ、私にはあんなこと言って、そんな大事なこと話さなかったわね! 聞いていたら私もやったのに!
 
 
 
 
***
 
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