メディアグランプリ

SDGsと生活習慣


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:紫月 涼帆(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
今から25年以上も前。ケミカル系企業に勤める友人から、「世の女性たちが美の追求をやめれば、地球環境はずっと良くなる」と言われたことがあった。
 
その時は「美の追求」と「地球環境保護」が直結しなかったが、コロナ禍の人流・物流の抑制が大気汚染の改善につながり、「インドでは数十年ぶりにヒマラヤが見えた」とか、「水の都・ベネチアでは、観光客用のボートが運休して運河の透明度が増した」といったニュースに触れ、とうに忘れていたはずの彼の言葉を思い出した。
 
実はコロナ禍の中、SDGsへの貢献をより意識するようになり、やめたもの、始めたことがいくつかある。その一つが、シャンプー類や化粧品類を一掃し、洗剤各種も見直しを行ったことだ。
 
きっかけは、加齢による髪のダメージだった。若い時からくせっ毛や白髪が悩みの種で、30年も白髪染めや縮毛矯正を繰り返してきたが、だんだん髪が細くなり、量も減り、次第に生え際まで後退し始めた気がして、かなりの危機感を覚えたのが50歳手前だったと思う。
 
行きつけの美容院で勧められたトリートメントなどを使ってみるものの、一向に改善の兆しは見られない。そんなときに出会ったのが「湯シャン」だった。湯シャンの詳細はネットに情報が溢れているので、ここでは割愛するが、要はシャンプー類を一切使わず、お湯だけで髪を洗うというものだ。
 
最初は半信半疑で、お湯だけでは髪がきしむだろうと、まずはシャンプーから卒業することにした。しかし驚いたことに、お湯で洗った髪にトリートメントを塗布しても、ほとんど変化がないのだ。つまり、洗うためのシャンプーに、すでに何らかのコーティング成分が含まれているということになる。
 
単体での使用に意味がないことを知り、トリートメントもろとも断つことを決めたが、湯シャン生活の初期に全くストレスを感じなかったわけではない。シャンプー後の爽快感やいい香りとは無縁になったし、どことなく残るムズムズ感やオイリーっぽさにしばらくは慣れることが出来なかった。
 
おそらく、シャンプーが根こそぎ洗い流してしまうので、必要な油分を頭皮が分泌してバランスをとっていたのだろう。そのため、湯シャンに切り替えても、しばらくは油分が供給される状態が続いてしまうのだ。そして、そのうち、頭皮自身が「あ、もう油分を出さなくていいんだ」と気づいてくれる。
 
私の場合、2か月程度で本来の肌バリア機能が戻り、湯シャンの手軽さに感動を覚えるようにすらなった。①予洗い、②シャンプー、③すすぎ、④トリートメント、⑤すすぎの作業工程が、すすぎ一回で済むようになったのだから、時間的にも、水の使用量も、大いに節約になったことは言うまでもない。
 
コロナ禍のマスク生活で、メイクもやめた。髪がお湯だけでいいなら、顔も身体も、お湯だけでいいと思い立ち、洗顔フォームやボディーシャンプーも使わなくなった。肌の突っ張り感がなくなって基礎化粧品も不要になり、今や、バスルームには何ひとつ残ってない。シャワーを浴びる際に、数日に一度、昔ながらの手ぬぐいで肌を優しく撫でるだけだ。
 
そして何が起きたかというと、髪も肌もすこぶる調子がいい。冬になると襲われた原因不明の肌アレルギーも、オールシーズン、悩まされた顔のテカリや毛穴、一日の終わりになると気になっていた頭皮のニオイやかゆみも全て消え失せた。あんなにコンブレックスだったオデコのしわも、ファンデーションが入り込んで際立って見えただけで、すっぴんだと全く気にならないことに気付く。化粧品を使っていた頃には言われたことがなかったのに、すっぴんになったら、「肌、きれいですね。どこの化粧品を使っているんですか?」 ……なんでやねん。
 
時々、この湯シャン生活についてカミングアウトする機会がある。すぐにピンとくる人もいるが、そうでない人のほうが圧倒的に多く、湯シャンの認知度なんてまだまだそんなものだと思いつつ、「私、クサイですか?」と聞いてみる。「全っ然!」と速攻で全否定される確率は今のところ100%だが、決まってその後は質問攻めにあう。「本当にお湯だけなの?」 「はい」 「メイクは落ちるの?」 「すっぴんですから」 「えー、肌キレイ! どこの化粧品を使っているの?」 「何も使ってません」 「本当の本当に?」 ループは続くよ、どこまでも。
 
髪も肌も、本来のバリア機能を取り戻すまでに、数ヶ月〜1年と人によっては時間もかかると聞く。今日やめて、明日からすぐに効果を感じられるものではないので、途中で諦めてしまう人もいるだろう。でもおかげでバスルームが汚れにくくなり、浴室の掃除は週一回で済んでいる。ヘアケアやスキンケア用品を持ち歩かずに済むので旅も身軽になった。環境負荷の軽減だけでなく、自分自身にもメリットが多かったのでやってみてよかったと思っている。
 
ちなみに、洗剤類は、食器用、衣類用、歯磨剤まで全て環境への負荷が低そうなものに変えたが、それらの特徴として微臭のものが多いように思う。そのためか、集合住宅の共用エレベーターや商業施設のお手洗いなどで、不意に出くわすシャンプーや衣類の柔軟剤、香水等の残り香を強烈に感じてしまい、息を止めずにはいられなくなった。
 
まるで、自然界にない人工の匂いを嗅ぎ分ける嗅覚でも身についたみたいだ。かつては、あんなにも「いい匂い」で、それに囲まれた生活が日常だったはずなのに、「慣れ」って本当に怖いものだ。私たちは、日々、コマーシャルで「本当はありもしない課題(臭いや加齢、栄養不足等)」を突きつけられ、それを心配するあまりに起こしてしまう消費行動も少なくないように思う。
 
かつて、江戸の街を訪れた西洋人たちが揃って驚いたのが、未開の国らしからぬ、庶民の識字率の高さと、その身体から臭いニオイがしないことだったそうだ。日本は今も昔も、諸外国に比べれば水資源の豊かな国だ。シャンプーや石鹸などない時代でも、幕府の公共(水利)事業が功を奏して下町に銭湯が普及し、いつでも「ちょいと、ひとっ風呂」が可能だったからだろう。
 
SDGsのひとつに「つくる責任、使う責任」がある。つくる人(生産者)を変えることができるのは、やっぱり私たち、使う人(消費者)だけだとあらためて思う。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2022-11-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事