メディアグランプリ

ネタバレしたい気持ちの戸締まりも『すずめの戸締まり』が教えてくれた(ネタバレなし感想)


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記事:村人F (ライティング実践教室)
 
 
『すずめの戸締まり』を観た。
公開初日に、だ。
なんという贅沢だろうか。
もう街行く人がボソッと言ったネタバレを気にする必要がないのである。
当然SNSで突然流れてくる衝撃の事実に怯える心配もない。
物語のすべてはもう僕の中にある。
ああ、なんて素晴らしい。
この情報に溢れかえった世界の中でこれ以上の幸せはない。
本当によい経験をしたと、最初は思っていた。
 
しかし、厄介なことに気づいてしまった。
ネタバレが言えないのである。
残念ながら私は独り身だ。
映画館で1人寂しくレイトショーを決め込むタイプである。
だから終わった後に感想を言う相手なんていない。
よって吐き出す先はSNSにしかないというのに、今日は公開初日である。
観ていない人がいっぱいいるのだ。
つまりウッカリつぶやく言葉の数々が、僕も散々怯えたネタバレ爆弾になるのである!
そのせいで何も言えない。
1人で全部を抱え込まなければいけない。
なんて辛い経験をするハメになったんだ僕は!
 
ああ、そうか。
これも戸締まりだな……。
帰りの電車で目の前のカップルが小声で映画の感想を言っている様子を見ながら思った。
そう、ネタバレをしたくて仕方がない心を抑える。
これも立派な戸締まりなのだ。
その扉は初日に映画を観た最高の経験により開けられたものだ。
実際、前情報を完全シャットアウトした状態だったから光景すべてに「え?!」とか「ほぇ?!」などと叫びたくなったし、泣きたくなった。
それくらいの展開だったから、油断しているとその思いがスマホを通じてどんどん垂れ流しにされてしまうことだろう。
 
でも、そんなことをしてはいけないのだ。
『すずめの戸締まり』は新海誠監督の最新作。
日本だけでなく世界中で注目されている映画だ。
みんな楽しみにしている。
だからこそ、しっかり気持ちの戸締まりをしないといけないのだ。
 
もしかしたらこの思いも、作品が伝えてくれたメッセージなのかもしれない。
映画の中にはいろいろな扉が出てくる。
予告映像で出てきた意味深すぎる扉。
家の扉。
学校の扉。
電車の扉。
もう「主人公が扉だ」って言っていいんじゃないかという感じである。
そして、これらは開ける扉でもあり、開けたい扉でもあり、開けたくない扉でもある。
それでも皆、開いてしまうのだ。
 
だからすずめは戸締まりをするのである。
扉の先にある世界を見て、戸締まりをするのである。
同時に、僕たちにも教えてくれるのだ。
戸締まりをしないといけないと。
 
家を出るときの戸締まりは大切だ。
泥棒などが入ってきたら大変だからである。
車に乗ったときもそうだし、会社や学校に入ってもそうだ。
全部、基本だ。
 
ただ僕たちの世界には映画に出てくるような扉なんてない。
湖の中にポツンと1つだけあるなんてあり得ないし、開けてみたら朝なのに夜の世界が広がっていたなんてこともない。
現実世界にそんなロマンはないのだ。
 
しかし、扉は心の中にもある。
『すずめの戸締まり』の前情報を極限までシャットアウトした僕の鋼鉄製の扉。
ネタバレをしたい気持ちを必死に押さえているけど今にも破れそうな扉。
そして、二度を振り返りたくない光景を封じ込めた扉。
どれもそうだ。
 
だけど、開いてしまうことがある。
自分の意思に関係なく、である。
そこから出てくるのは思い出したくもない歴史かもしれない。
己の弱さかもしれない。
いずれにしてもポジティブではない感情が、今にも扉を破ろうとしているのが人間の常なのだろう。
 
だからこそ、戸締まりをしないといけないのだ。
締まればそこで止まるから。
区切りをつけられるから。
そうすれば、向こうの世界へ歩きだせる。
これを教えてくれたのが、『すずめの戸締まり』だった。
 
そして僕はまた劇場に扉を開きに行く。
やはり新海誠監督の作品は何回見ても面白いからだ。
ワクワクできる冒険でもありながら、忘れてはいけないことも思い出させてくれる。
日本最高峰の物語である証明が詰まっている。
 
何より、すずめがかわいい。
SixTONES松村くんが演じているミステリアスな草太の掛け合いは本当にご飯が何杯でもいける。
間違いなく今年1番よかった映画だ。
 
そして願わくは国民全員が見てネタバレが自由にできるときが来ることを願っている。
それくらい『すずめの戸締まり』が開けてくれる扉の向こうは素敵だ。
いずれ戸締まりをすべき世界だからこその美しさが詰まっている。
この感動を語れる日を待ちながら戸締まりをしていきたい。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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