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白目むきがちウェイターの転機


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:森山寿介(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 
「ジャズって退屈やん」
「ノリかたもよくわからんし、拍手の場所もわからん」
学生時代、バンド仲間に言われた言葉。
 
大学の4年間、ブルーノート大阪というジャズクラブでバイトをしていた。
出演するミュージシャンも国内外から超有名人から、一昔前の有名人までが集うクラブだ。ジャズに特化し、入場料もやや高い。ゆえに大人が集うお店というイメージだった。
 
ボクがリアルタイムでバイトをしながらライブを見たのは、ラリー・カールトン、スティーヴ・ルカサー、シーラ・E、渡辺貞夫、小曽根真、B.B.キング、デヴィッド・サンボーンなどなど。どのミュージシャンも一世を風靡したと言える方々。4年間で見たライブの本数は数え切れないほどだ。
 
ただ、一般の大学生のボクにはジャズを嗜むという習慣も趣味もなく、当時組んでいたバンドはロック色の強い騒がしいバンドだった。そんなボクにとって、ブルーノート大阪でバイトをすることは、今だから言えるけど、かっこいい場所でバイトしてるというステータスになるからというレベルの低い下心からだった。
 
そんなゲスなボクが、聴き方もノリも分からないジャズを毎日ホールにウェイターとして突っ立って聴くのは苦痛だった。本当に贅沢な空間だったのに申し訳ない。特にジャズの女性ボーカルのライブは非常に静かで、ステージの照明も暗め、楽曲自体も大人しく、メロディーも声量もおしとやかなものが多かった。寝るにはベストオブベスト。大学の定期試験後は、ホールで白目むいて立ってたことは1度や2度ではない。
 
しかし、そんな白目むきがちウェイターのボクにも転機がきた。
 
ウェイターをしている役得で、時々ミュージシャンのお世話をする。楽屋に食事を運んだり、掃除したりというもの。その中で時々気さくなミュージシャンは話しかけてくれたり写真を撮ってくれたりした。バンドをやってるボクにとっては格別に嬉しい出来事だった。
 
そんな時に、仲良くなったミュージシャンに
「ジャズってよくわからんのよね、ノリかたも拍手の場所も」とバカ丸だしで質問した。
「ジャズを聴く時はドラムに注目するといいよ。まぁ音楽はここで聴くものだけどね」
と胸を指さしながらアドバイスをもらった。プロにアドバイスをされると不思議なものでゲスなボクも素直に従った。
 
それから、ホールにでてる時は、ドラムに注目してジャズを聴き直した。名誉のために補足するけど、ちゃんとウェイターの仕事をしながらね。高級クラブなので求められるサービスクオリティは高い。値段も高い。モテたいおじさん達が素敵な女性を連れてくる確率も高い。そんな場所だ。時々白目むいてたことは申し訳なかったけど。
 
ドラムに注目してジャズを聴く。
呼ばれるとオーダーを取る。
ドラムに注目してジャズを聴く。
ワインを注ぐ。
ドラムに注目してジャズを聴く。
素敵な女性の洋服に気を配りながら食器を下げる。
ドラムに注目してジャズを聴く。
 
こんな感じでジャズを聴いて1か月過ぎたころに
「ああ、ジャズっておもしろいかも」と気づいてしまった。
 
ジャズドラマーはロックドラマーのような派手さはない。
ドラム自体の数も少ない。最小限の楽器しかないって感じすらする。
ドラムスティックを頭の上から振りかぶってスネアドラムを叩くなんてことはあまりない。ロックドラマーのように大きく早く叫びながらプレイという感じではない。
 
しかし、集中力と手数の多さが尋常ではない。
ロックドラマーの場合は、ドラムスティック2本をフル活用するわけだが、ジャズドラマーは、2本のスティックの他に、ドラムブラシという柄の長いブラシのようなものも使う。スティックで芯のあるドラミングをしたかと思うと、ブラシを使って優しくシャーっと鳴らしたり、展開に応じてブラシでシャカシャカ鳴らしたりもする。
 
ジャズドラマーは常にメンバーにアイコンタクトを取り続けていて、メンバーそれぞれの動きに合わせてリズムや音の強弱もその場で変えていた。これはすさまじい集中力のなせる技だと思う。
 
バンドの構成も、ピアノ、ベース、ドラムという組み合わせや、ベース、ドラム、ギター、トランペットと色んなパターンのバンドがライブをしに来るので、その度にさまざまなジャズドラマーの個性やテクニックを目の当たりにした。
 
4年もホールに立ち続けて、ジャズを聴きいて楽しめるようになったことはボクにとって大きな収穫だった。そのきっかけは間違いなく、あのプロのアドバイスのおかげだと思う。
 
それでも、ジャズの聴き方とか楽しみ方にルールはないと敢えて言いたい。どんな聴き方をしてもいいし、直感的にダメならそれは仕方ないこと。ただ、食わず嫌いをするには勿体なさ過ぎる音楽であることは間違いないジャズ。
 
そのジャズを、あなたが試しに聴いてみようと思ったら、ボクのもらったアドバイスを試してみてはどうだろうか。
 
その上で、可能なかぎりジャズをライブで体験することをおススメする。そして、ドラムに注目しながら聴いてみるだけで何かしらの発見があるはずだ。手元の動き、表情、アイコンタクト、リズム、音の強弱などに注目をしてみるといい。
 
ライブに行くのが難しいならYouTubeや無料配信でもいいからとにかくライブで観てみて欲しい。耳だけでなく視覚で捉えると初心者でもハードルがぐっと下がるのがジャズのいいところだと思う。
 
これを意識してから、ボクはホールで白目むくことは1度もなくなった。
ジャズが面白いって背伸びせずに言える様になった。
あなたも是非、お試しあれ。
 
 
 
 
***
 
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2022-12-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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