メディアグランプリ

社会人2年目の大失敗は、社会人15年目に絶対に必要だったと答えが出た


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記事:pon(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 
「絶対に、こういう大人になりたい」
そう思える出会いが社会人2年目にあったのは本当に幸運だった。
 
出会いのきっかけは私が仕事で大失敗をした時。大いに頭を打ち、ボコボコに落ち込んだ。今でも思い出すと胃の奥がキュッとなるぐらいの経験。ただし、その失敗から得たことと出会いは社会人として、人として大切な自分の基礎になっている。それは異業種に転職しても、身近な家族や大切な人との関係にも活かされている実感があるので気のせいではない。
 
大失敗をしたのは、社会人2年目の終わりごろ。新卒で入社した飲食店で初めて店長に代わり、お客様のクレーム対応をした時。お客様から店舗のサービスに不快な気持ちになったという電話をいただいた。教わっていた信頼回復のための対応をしたが失敗し、お怒り度をMAXまで引き上げてしまったのだ。そろそろ店長を目指し経験値を上げたいと思っていた頃。お怒り度が高い案件は対応が怖い。だけど、クレーム対応にも飛び込んでみよう! そう思っていた矢先、初めての対応での大失敗だった。後にも先にもあんなにも人を怒らせたことはない。
 
お怒りになられたお客様の話を聞き、どう対応するか迷走する私の提案。苛立ちの隠せなくなったお客様のボルテージが上がるにつれ、情けなさや、焦り、申し訳なさで底の見えない深海に沈んでいくような気持ちになった。そんなボコボコの私に言うても話にならんと見切りをつけられ、「本社に電話する!」
と、電話を切られた。一番最悪の結果だ。
 
最後できることは、事の詳細を一秒でも早く本社のお客様相談室に報告することだった。相談室は全国のお客様からのお問いわせ、ご意見を統括して対応している部署。お客様よりも先に事態を周知しておくことで、お客様に経緯を説明して頂く際、二度手間感を感じさせないためだ。
 
お客様が不快に思われた点、その対応時に私がどうしたのか、選んだ言葉も報告した。まだ気分的には深海を這いずり回っていた私は、
怒られるかな……
面倒をかけてしまったな……
何て言われるか、腹をくくらねばと思い始めていた。
「それは大変でしたよね。難しい対応をしていただき、ありがとうございます」
思ってもない言葉が返ってきた。叱責を受けるのかと思っていたのに。その瞬間、私の中でスイッチが明らかに切り替わった音がした。
 
「この人から学べ!!!」
そんな声が遥か彼方の海面から聞こえた気がした。落ち込んでいる場合ではない。
すぐ、どういう対応が望ましかったのか。何がよくなかったのか。あらゆる質問をし、事細かにアドバイスをもらった。電話が終わる頃には、クレーム報告書の裏に無我夢中で書いたメモを見ながら、お客様相談室の人の顔を想像し、
 
「絶対に、こういう大人になりたい」
そう強く思っていた。同時にボコボコの姿はそこにはなく、次クレームがあった時にはこうしよう! と、心が少し強くなった私がいた。
 
この苦い経験から私に活かされていることは「共感」がもたらす2つのこと。一つはどれだけ相手の背景や気持ちに共感できるかで、自分の選ぶ言葉も変わると言うこと。これは上っ面では、全く相手に刺さらない。それが私の大失敗の原因だった。お客様が今どんな気持ちでいるのか知ろうとするよりも、お客様の怒りを鎮めなくてはと自分本位な考えで対応してしまった。どれだけ丁寧に謝ってもお客様からすると、そういうことじゃないんだよ! となるのは当然。
想像して欲しい。自分が怒っている原因も知ろうとしないやつに、本当ごめんってばー!アイスでも食べる? みたいにご機嫌取りされた時のいらだちや、悲しさ、もうこいつに言うてもしゃーないわ感。
これに気づいたことで、その後様々クレーム対応を経験したが、対応の最後にはありがとうと言ってもらうことも、常連様になることもあった。プライベートでも、どんな時も相手を頭から責めるような言葉は出なくなった。
 
二つ目は、相手に「共感」した気持ちを伝えると、相手の心が開く。私が経験したように、この人に心のうちを話そう。と思えるのだ。これは店長になってから失敗の報告を受ける立場になり、とても活かされた。まずは相手を知ろうとする共感の姿勢や、大変だったねという言葉を伝えるようにしていた。怒られるんじゃないかという防御姿勢の相手は、その必要がないと知ると大抵が内省しながら話をする。そして必要以上に落ち込んだり焦らないことで、本当に伝えたいことがスッと伝わった。
想像して欲しい。必ず怒る相手に対して自ら怒られに行く処刑状態を。あらゆる命拾いの手段を考えてしまうのでは。そのうちに言い訳の名手になってしまうのは、本当に意味があるのだろうか。言い訳に逃げる背中を見るよりも、全部話してもらう方が何倍も意味がある。
また、失敗が大きな勇気を振り絞った結果だった時は、その勇気は認めることで、次のチャレンジへの後押しができた。そういったことを大切にすると、全国2000店の店舗のどこかに配属される新卒社員約50人のうちの1人毎年必ず育成を任されるようになった。転職後は事務職だが年の近い上司の茶飲み友達のように育成において困っていることを聞いて解決策を提案するのが私の仕事の一部となっている。
 
もしあの時、失敗しなければ、誰かの失敗に共感できない人になっていたかもしれない。
もしあの時、あの人に出会って「大変でしたね」と声をかけてもらってなければ、深海に沈んだまま何もチャレンジできないビビりになっていたかもしれない。
 
プライベートでも知った仲だと思っている人に今一度、寄り添う気持ちで向き合うと、そんなこと思っていたのかと、新しい発見も多い。
全てに共感できなくても寄り添う心自体は、相手に伝える言葉も、相手が見せる胸のうちも変わると知れたのだから、あの失敗は私には必要だったのだ。
 
ボコボコだった私は、あの時、幸運にも周りにいる人を大切にする武器をもらったのだ。その武器を大切に磨き、年齢的には十分に大人になった。あの人に少しは近づけていたらいいな。
 
 
 
 
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2022-12-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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