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僕のサードプレイス


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:河津 勇(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
初回のライティング・ゼミを終え、久屋大通駅から矢場町駅へ。いつものお店へと足を運びます。
天狼院書店名古屋から、南におよそ2キロ。いわゆる栄ミナミと言われる地域に、そのお店はあります。店名は「S」とでも記しておきましょうか。
 
名古屋には珍しい路地の一角にある路面店。「こんな都心に、こんな場所があるんだ。」
長らく名古屋に住む人ですら、「ここは知らなかった。」という声を多く聞きます。
 
お店は、東西に細長い造りで、間口は1間(1.8メートル)、奥行きは7間(12.6メートル)ほど。まさにウナギの寝床ですが、広い側は路地に面しており、入口が3ケ所あるので、出入りにさほどの不自由さは感じません。元は建設会社の現場事務所だったそうです。
 
店内は、細長いカウンターに10名ほどの席があり、小さな座敷も備えています。4人掛けのテーブルが2つ。もちろんお手洗いも店内に設置されています。
カウンターに座ってしまえば、背もたれは壁。後ろを人が通るスペースなぞ当然ありません。狭いと言ってしまえば、それまでですが、案外、落ち着きを覚える空間でもあります。
 
お店のジャンルは魚介をメインにした和系の居酒屋。メニューは壁に貼られた短冊に、ホワイトボードにお薦めが何点か。時には、マカロニグラタンなど、洋のメニューも記されています。
料理は300円~1000円。お酒は焼酎350円~。リーズナブルなお店ですが、箸置きに店名入りの箸袋に入った割りばしが置かれ、ペーパーではない、おしぼりが供されるあたり、ただの安い店ではないとの店主の矜持を感じます。
 
開店から38年。賃借物件ですが、一等地ゆえバブル期には、10坪程度のこの店の底地に、180億円もの抵当権設定がされたというから驚きます。開店以来20回は地主が変わったそうです。
 
お店は店主一人で切り盛り。今年64歳のK氏。出身は愛知県高浜市。高校卒業後、名古屋市内の料亭で修業後、26歳でお店を構えたそうです。
開店は18時~。日祭日お休み。以前はランチもありましたが、年齢を鑑み、現在は夜のみの営業となっています。
 
特異な店構えながら、料理の腕は確か。コスパの高さもあり、情報番組や情報誌の取材依頼は引きも切りませんが、全てお断り。自身としては奇をてらった店をやっているつもりはなく、あくまで普通の飲食店。「取材される理由なんて、全くないよ。」と語ります。
 
客層は40歳~50歳代が中心でしょうか。繁華街ゆえ、スーツ姿のお客さんは少なく、服装もバラバラ。多種多様な職業の方が集まります。
狭い店ゆえ、一人か、せいぜい二人で来店するのが精一杯。自ずと他のお客様と語ることとなり、それもまたお店の魅力となっています。
 
メディアにも出ず、知る人ぞ知るこの店に集う人たちは、どうやってこのお店を知るのでしょうか。実は案外一見で入ってくる方が多いのです。
 
初めてのお客様に、「どうやって、この店知ったの? よく入ってきたね~。勇気あるわ~(笑)」と話しかけるのが常連さんのお約束。
 
「前から、ここにお店があること、知っていたんですが、なかなか入る勇気がなくって。でも今日は思い切って、入ってみました。」
自身の好奇心のまま、引き戸を開ける人が多いのが、なんだか嬉しく。
時に20代の若い女性が一人で入ってきたりしますから、驚くことも、しばしばです。
 
実は僕も、そんなことがきっかけで当店を知りました。もう何年前になるのか定かではありませんが、5月のとある土曜日、近隣の映画館に来て、上映までの時間潰しに寄ったのが最初でした。
 
引き戸を開けた瞬間、さっと集まる常連さんの目。味や値段の相場も分からないので、恐る恐る注文したのは、瓶ビールと冷奴に焼きナス。
緊張ゆえ、30分ほどで退店。店主の「また寄ってね~」の言葉に誘われ、その後もポツポツと足を運ぶうち、店主が同郷であること。案外共通の知人が多かったことから、馴染むようになり、気づけば僕の大切なサードプレイスになっていました。
 
家庭や職場に次ぐ、第三の居場所。それがサードプレイスと言われますよね。その捉え方は、人それぞれかと思いますが、個人的にサードプレイスとは、何の役割も演じず自身が素のままでいられる場所と考えます。
 
家庭であれ、職場であれ、皆なんらかの期待される役割を背負い、日々を過ごしています。
頼られる嬉しさや喜びもある一方、時にそんな役割に疲れてしまうことってありますよ
ね。そんな役割から、ちょっと離れてみる。そんな時間が、少し疲れてしまった自分を癒してくれるのかもしれません。
 
誰にも邪魔されず一人になるための、サードプレイスも大切ですが、例えば僕がこのお店に足を運ぶように、何の利害関係もない人々と、下世話な話などしつつ、酔い笑い、ひとときを共有する。そんな繋がりもまた、違う癒しを与えてくれている気がします。
 
思えば、人生の豊かさとは、何の役割を演じなくてもいいサードプレイスを、どれだけ持っているかではないか。人生もとうに半分を折り返した僕は、時に、そんな思いを抱くことが増えてきました。
 
皆さまのサードプレイスは何処ですか。機会があれば、また教えてくださいね。
そうそう、このライティング・ゼミもまた、僕にとっては新しいサードプレイスになりました。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2022-12-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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