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拝啓、婚活戦士だった私へ


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記事:髙久裕美子(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
2018年7月7日、世間では織姫と彦星がロマンチックな再会を果たしているこの日、
ひとつの戦いが終わりを告げた。
このとき私が胸に抱いたのは、喜びでも達成感でもなく、
人を好きになれたという安堵感だった。
ここに記すのはひとりの婚活戦士の戦いの記録である。
 
遡ること約4年前、私は20代後半に差し掛かっていた。
友人との会話でも当たり前のように「結婚」が話題にあがるようになった。
加えて、相変わらず実家でぬくぬくしている私は、母から容赦ない口撃をくらっていた。
兄も姉も結婚して家を出た今、母にとっては私の結婚こそが子育ての集大成なのだろう。
 
とはいえ、私は知っている。
彼氏がいるときの悩みというのは美容整形のようなものだと。
彼氏がいないときの悩みはただひとつ「彼氏がいない」ということ。
一方彼氏がいる場合は、こうもシンプルにはいかない。
「最近返信が遅いな」だとか、「私のこと本当に好きなのかな」といった具合に
一度考え始めてしまうと次から次へと悩みが湧き出てきてしまい、キリがないのだ。
実際に私自身、「彼氏がいない」という悩みを抱えながらも、
自分ではない誰かにペースを乱されることのない毎日を心地よく感じていた。
 
さらに、私は自分の好きなタイプについてもよく理解できていなかった。
「優しい人」「面白い人」「頭の回転が早い人」等あげてみるものの、
どうにも本質を捉えきることができていないような気がしており、
ずっともやもやした感情を抱いていた。
 
こんな私にも結婚への憧れこそあったものの、
この先誰かとずっと一緒にいる自分をイメージすることが、どうにもできなかった。
また、結婚を望んでいる母もそう簡単に娘の結婚を諦めないだろう。
 
そこで私が考えたのは「婚活」だ。とはいっても巷で使われる定義とは大幅に異なる、
というよりは、もはや真逆の目的を設定した。
一般的な「婚活」とは文字通り「結婚を前提に付き合える相手を探す活動」である。
対して私が目指すのは「結婚を母に諦めてもらうための活動」であり、
「これだけ色んな人と出会ったけど、やっぱり私には結婚向いていないみたい」と説得力を持って伝えることで、母に潔く諦めてもらうことをゴールとして設定したのだった。
 
婚活の意味を履き違えた「(結)婚(を母に諦めてもらうための)活(動)戦士」が
誕生した瞬間である。
そうと決まれば話は早い。戦士たるもの実戦あるのみだ。
母を納得させるには膨大な数の出会いをこなさなければならない。
婚活戦士はアスリートである。そう自らを思い込むことにした私は、
手始めに自らの主戦場を見極めることにした。
スケジュールアプリには
・大会(複数人での飲み会やBBQ)、
・試合(1:1のデート)
・練習試合(気楽に臨むデート)
・ボランティア(気乗りしないデート)
・習い事(婚活パーティー)
といったマークが並び、友人の紹介やアプリなど様々なツールを駆使した上で
活動に励んだ。
ときには、1日11人、ひと月に20〜30人との出会いを繰り返しながら
その詳細を事細かに記録し、分析を試みたのだった。
 
その結果、主戦場は「大会」が適していると判断した。
1:1よりも人となりがよく分かるということ、そして何よりも効率が良い。
その場に良いなと思える人いなければ、良い人を紹介してくれそうな人を見つければ
よいだけの話だと考えたからだ。そうしてリレーバトンのようにつないでいった結果、
気がつけば私は、常に大会に出場する熟練アスリートになっていた。
 
一見すると順調な滑り出しなのだが、一方で私は当初の目的に疑問を抱くようになる。
正確に言うと母に私の結婚を諦めてもらう、という目的に対して当初のような熱量を
維持することができなくなってしまったのである
代わりに湧き上がってきたのは「自分がどんな人を好きになるのか」という興味。
こうして私は、活動開始して間もない段階で当初の「母を諦めさせる」目的から
「自分の好きなタイプを知り、付き合ってみたい」という本来の婚活の目的に近い活動へと
方針を切り替えることにしたのだった。
 
さらに活動すること数ヶ月。
「どんな人とだったら一緒にいたいと思えるのだろう」と好きなタイプについて
考え続けた私は、ついに自分なりの答えを手にした。
 
一緒にいる=会話をし続けること
 
「ああ、そうか。私はたくさん会話をしたいんだ。好きなタイプは……総合商社みたいな人だ!」
カップラーメンからロケットまで、ありとあらゆる話題について話したいのだ。
言葉にした途端、一気にもやもやが晴れたような気がした。
 
好きなタイプを明確に言語化できるようになった私は、
初対面で乾燥剤の主成分であるシリカゲルの話をした男性と、皆既月食やアリの生態の話を
経て、お付き合いを開始することとなった。
 
2018年7月7日。
統計を取り始めて以来、関東地方が最も早い梅雨明けを迎えたとされる年のことである。
 
気がつけば「(結)婚(を母に諦めてもらうための)活(動)戦士」だった私は、
「(結)婚(を前提に付き合える相手を探す)活(動)戦士」へと
変身を遂げ、いつのまにか本来の婚活のゴールへと辿り着いていた。
 
 
そうだ、今日夫が帰ってきたら担々麺とメタバースについての話をしよう。
 
 
 
 
***
 
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2022-12-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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