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標準語を話すことが英語を話すことより難しい


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記事:深山(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
関東に引越してきてから、初対面の人の8割近くに
「どこ出身ですか?」
と聞かれる。理由は簡単で、訛っているからだ。それも関西弁や博多弁のように簡単に地方を推測できるような訛り方でもない。「諸方弁(もろかたべん)」という宮崎県の一部の人しか使わない方言を使えるのだ。この方言がなかなかやっかいで、~やけん、~やねんのように語尾や言葉自体が変わるものであれば、その言葉を使わないということは簡単にできる。そもそも、方言を使っても関東圏の人には伝わらないので徐々に使わないようになる。しかし諸方弁はとにかくイントネーションがおかしい。変。違和感。でも言葉自体は同じだから一応伝わってしまう。そのため軌道修正ができずに、8年近くも方言丸出しで話してしまっている。最近だと有名な「諸方弁」話者は蛙亭のイワクラさんなので、興味がある方はイワクラさんの話し方を聞いてみてほしい。ちなみに70代くらいの祖父母は訛りが強すぎて何を言っているか私でも分からない。母などに通訳を頼む必要がある。イワクラさんが漫才のネタでよく使うのはお年寄り世代が使う方言で、若い世代は何を言っているか伝わるくらいには方言が抜けてきている。
 
「え? 8年もいたら標準語はなせるようになるでしょ?」
と思う人も多いかもしれない。私調べによると半年くらいで方言が抜けて自然に標準語が話せるようになる人と、方言が抜けず自然に標準語を身に着けることは永遠に無理な人との2パターンに分かれる。残念なことに私は後者だ。
 
そもそもどうしたら自然に話せるようになるのかが全く分からない。YouTubeで「標準語 話し方」「標準語 イントネーション」というような検索ワードで調べたところ、何度も繰り返してイントネーションを真似することや、日本語発音アクセント新辞典でアクセントを調べることが良いことが分かった。これを見て私は絶望した。
「え、英語を話すよりも大変じゃん……」
英語だと使用目的にもよるが話す文章がある程度決まっていて、それを覚えたらよい。それに日本人であれば非ネイティブであることは見た目でわかるので多少の間違いにも寛容だろう。しかし標準語を話す場合、ほとんどすべての文章を網羅するのにどのくらいかかることか。さらに、見た目では非標準語ネイティブであることが分からないので、標準語ネイティブからの厳しい目もあるだろう。
 
そんな私だが、唯一話せる標準語がある。
「支払いはSuicaでお願いします!」これだ。
なぜならこのセリフ、これまで一発で聞き取ってもらえる確率が限りなく低かった。10回に9回は聞き返されていた。これは日常生活に支障をきたしている……と感じた私はこのセリフだけめちゃめちゃ練習した。何度もシミュレーションを重ね、標準語を話す友人が一緒にレジに並んでいたときなどに正確なイントネーションを覚えた。結果、このセリフだけ標準語で言えるようになった。初めて一発で聞き取ってもらえたときの嬉しさは忘れられない。初めて行った海外で、英語で「How much?」と言って伝わったときの嬉しさを思い出した。
 
この調子で使える標準語を増やしていけばいいのでは? と思ったこともある。ただ、この方言、ある程度の期間話すと皆さん慣れてくださるのだ。大変ありがたい。生きていけます。そのため、初対面の人以外とのコミュニケーションは割とすんなり通じてしまう。たまに初対面の人に
「訛りが強くて話の内容が頭に入ってこない……」
と言われることもあるが、そんな人でもある程度話すと慣れてしまう。もし一生方言が通じない世界だったら、私もがんばって標準語を習得したかもしれない。ある程度は通じてしまうからこそ、現状に甘えてしまっている……。
 
ここまで読んでいただいた方にはわかるとおり、方言コンプレックスをこじらせていた私だったが最近気づいたことがある。
「方言、かわいいし落ち着くのかも」
ということだ。今までいろんな人に
「方言ってかわいいからそのままでいいじゃん」
と言われたこともあった。ひねくれている私は
「こんなに田舎臭い言葉が、かわいいわけありますか。ばかにしないでいただきたい」
と思っていた。しかし、最近始めたオンラインヨガ教室で先生の訛りがかわいくて落ち着くので気に入ってしまったのだ。ヨガの先生は岩手県出身で、東北の朴訥とした訛りがある。たまに東北の方に間違えられるくらい、宮崎の訛りと東北の訛りは雰囲気が似ている。それもそのはずで宮崎と東北の訛りは無型アクセントと呼ばれる日本語方言のアクセントに分類される。ただ、宮崎と岩手では訛り方に多少の違いはあるため彼女の話し方は私にとって訛って聞こえる。それがどことなく素朴でかわいらしく落ち着くのだ。
なるほど、標準語ネイティブの方に私の話し方はこう聞こえていたのか。ばかにしているわけでもなく、純粋に方言いいね!と思ってくれていたのか、と気づいた。どうしよう。標準語ネイティブになるために話し方教室に行こうと調べていたのに、方言も良いじゃないか。
 
 
 
 
***
 
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