メディアグランプリ

マスクの裏でのびのびと


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記事:藤野宏隆(ライティング・ライブ京都会場)
 
 

「ふっ、ふっ、ふっ。マスクのおかげでまさか我々がこんなに大きくのびのびと伸びることができるとは。日の目も浴びずに穴の中に隠れる生活ともお別れだ!」
 
新型コロナウイルスが流行しはじめて3年になる。
この感染症を完全に抑え込むことはできないまでも、世界中の人々が新しい生活様式を受け入れることで、感染症と折り合いを付けながら、この3年間を過ごしてきた。そして、徐々にではあるが、私たちはコロナ前の生活を取り戻しつつある。
 
そんな感染症に振り回された生活の中で、当たり前になってきたものと言えば、マスクだ。人と会話をするとき、外出をするとき、公共の場所にいるとき、あらゆるシーンでマスクの着用が求められたことですっかりと習慣になってしまった。
 
そうしてマスクをすることが当然となっていく中で、この環境変化を絶好のチャンスと捉え、マスクの裏で勢力を大きく伸ばしていたやつがいる。
それが、「鼻毛」だ。
 
鼻毛とは、鼻腔に生える毛である。
その働きは、主にフィルターのようなもので、呼吸によって体内に空気が入る際にちりやほこり、そして花粉などの微粒子をからめ取ることで異物が気管支に入り込むことを防いでくれる。
つまり、鼻毛があるおかげで、私たちは綺麗な空気を体内に取り込むことができるのだ。
 
そのように私たちが生きていくために、常に働いてくれる彼らだが、コロナ禍によるマスク生活が始まって以来、最近よく伸びるようになったと個人的に感じていた。
 
そして私は自分なりの仮説を立ててみた。
それは、マスクがビニールハウスのような働きをしているのではないかというものだ。
農作物のビニールハウス栽培は花や野菜をビニールシートで外部の気象環境から隔離して栽培することで、天候や病害虫の影響を抑えることができる。さらにビニールハウス内部の環境をある程度コントロールすることで、年間を通して、農作物を安定的に生産することも可能になる。
これと同じような状況が図らずもマスクによって彼らの周りに作り上げられてしまったのではないかと考えたのだ。
 
彼らからすると、これはとても幸運なことだったろう。
例えば、髪の毛は、頭皮の毛細血管から栄養を受け取っているため、血行が悪くなりやすい寒い時期は行き届く栄養が少なくなると言われるが、彼らも同様の毛である以上、寒い時期には同じリスクにさらされるはずだ。
しかし、マスクで守られているとその心配がない。ビニールハウス内で育つ植物と同じように彼らは、気候を気にせずに年間を通して安定して伸びていくことが可能になった。
 
また、ビニールハウスの農作物と同じように彼らは外敵に荒らされるリスクも小さくなった。彼らにとっての外敵とはなにか。それは彼らの宿主でもある人間だ。
人間の中には鼻毛を抜く癖を持っている人もいるらしい。かの文豪、夏目漱石も執筆に行き詰まると鼻毛を抜いてしまう癖があったと言われている。抜くという直接的な行動でなくても、ついつい鼻の穴を指でかいてしまう人もいるだろう。そんなときに巻き込まれて抜けてしまうこともあるはずだ。
マスクはこのようなついついの癖で起こってしまう被害を最小化した。鼻を出した通称「鼻マスク」が感染予防できていないと非難されるように、マスクを着用する際は、鼻までがマスクに覆われる。面倒くさがりな人間はわざわざマスクを外してまで鼻毛を抜いたり、鼻の穴をかいたりしようとは思わない。
 
このように彼らは、マスクのおかげで攻守の両面から素晴らしい環境を手にすることができたのだ。その結果、彼らはすくすく伸びるようになった。
 
と、私なりの仮説を繰り広げてきたが、この間、ようやくネットで「マスク 鼻毛 伸びる」と検索してみた。
私の仮説は、当たらずといえども遠からずのものだった。
マスクが鼻毛の伸びに関係しているところはあっていたが、ビニールハウスのように温室でぬくぬくと成長に最適な環境に守られていたわけではなかった。むしろ逆だった。マスクの裏で鼻毛は過酷な環境にさらされていたのだ。
 
鼻毛の役割は、体内に空気を入れる際のフィルターだ。マスクをしていると私たちが吸う空気はマスク内の空気であり、どうしてもその大半が私たちの体内から吐き出された空気になってしまう。この吐息には胃からのガスやエアロゾルなど単純な外気に比べて不純物が多く含まれている。端的に言ってしまえば、吐息は汚いのだ。マスクを日常的に使用していると、以前よりも汚い空気で生活していると体が判断し、その環境に適応するために防衛システムとしてフィルターである鼻毛が伸びやすくなってしまうそうだ。
 
コロナによる生活環境の変化に対応しながら、私たちはこの数年を過ごしてきた。完全収束とまではいかないが、マスクを外して出歩いたり、旅行に行ったりする生活も戻ってきた。
 
「よし! もうマスク裏の汚い空気に触れることもない。久しぶりの新鮮な空気だ。我々も外にでるぞ!」
 
「あ。鼻毛出てる。切ろ」
 
マスク裏の過酷な環境でも綺麗な空気をありがとうございました。少し穴の中でお休みください。
 
 
 
 
***
 
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2023-01-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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