メディアグランプリ

My favorite Addiction

thumbnail


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:西田 七海(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
友人からその誘いをもらった時、乗り気ではなかった。
しかし、ひとたびその空間に入ってしまえば、そんな考えは一気に吹き飛ばされる。
 
同人即売会は、麻薬である。
 
同人即売会とは、自分自身の趣味を作品として制作し、販売・購入が出来るイベントの事である。よく「同人誌」と評される書籍をイメージする人が多いが、実際にはアクセサリーや文具、パソコンソフト、CDなども販売されている。また、イベント名には「コミック」と記載されてはいるが、アニメや漫画、ゲームといったサブカルチャーだけでなく、和装や純文学、料理、政治などとジャンルも幅広い。
 
さて、事の発端は1つの投稿だった。SNSでつながっている友人たちが、私の地元で開催される同人即売会に参加するという旨を記載しており、私は久しぶりに会えないかとDMを送ったのだ。あれよあれよと決まる食事の予定。そのメッセージのなかで、友人は1つ、メッセージを送ってきた。
「どうせなら、イベントきたら?」
今まで羽のように軽かった指の動きが一気に重くなった。正直、行く気は余り起きなかった。
参加経験は今まであった。出展をしない一般参加はもちろん、友人の手伝いでの出展や、自分の制作物で出展をしたこともあった。しかし、いつの間にかイベントへの足は遠のいていた。そして、今は冬。会場までの道のりは寒いし、人込みは苦手だ。我ながらフットワークの重さに苦笑してしまう。
だが、私が悶々としているうちに話は進み、結局当日、用事がないからと参加する事になった。「楽しみだね」と送信しながら、内心少し億劫だった。
 
当日。休日の起床時間通りに起きた。SNSを見てみると友人らは出展者側なので少し早い時間に起きて会場に向かっているようだ。イベント名で検索をしてみると、開場前の高揚した空気が文字から写真から伝わってきた。私はいつも通りに準備をし、会場に向かった。
何度か電車に乗り換える。電車が会場に近づく毎に、人が増えて行く。
「この車両にいる、どれくらいの人が参加するんだろう」
そんな事を考えてしまうと、ついそわそわしてしまう。参加する前のネガティブな感情がどんどん塗り替えられ、気持ちの高ぶりを感じずには居られなかった。
 
会場最寄りの駅で下車すれば、開場から少し時間が経っているにも関わらず、まばらな列が出来ている。その流れに合わせて歩を進めれば、眼前には平たく大きな開場が待ち構えている。会場内の音が漏れ出て、その熱気が会場外にも広がっているようだ。一般参加者入場口からチケットを購入し、いざ会場内に入れば、それはそれはカラフルな空気であった。コスプレイヤーの衣装や「推し」のカラーリングで合わせた服装もさることながら、やはりその熱気。参加者がそれぞれに目を輝かせ、「好きなもの」に囲まれる多幸感、「好き」を目一杯表出できる喜びと楽しさに、自分自身のテンションも上がらずにはいられない。
「ここに参加している人は、みんな好きなものに夢中なんだ」
そう思うと、目的の好きなものがない私も、他人事ながらに嬉しくなった。
 
事前に教えて貰った場所に向かうと、そこには友人たちがいた。開場直後の気忙しさから少し落ち着いた様だった。声をかけると、気づいて貰えたようでネット上での名前を呼ばれた。自分を指す本名とは違う響きに、くすぐったさを覚えた。
何度か言葉を交わしたあと、私は友人に質問を投げ掛けた。
「なんで今回のイベント参加しようと思ったん?」
友人の住居からは近いとは言えない距離にある会場での参加。そこまでして参加したいと思えるのは何が原動力なのか。
とはいえ、この場所に来たあたりから、その答えはなんとなく解っていた。
 
「んー、やっぱり同じ趣味の人と会える機会ってなかなかないし、この高揚感はイベントならではだからなあ」
 
そうなのだ。たとえ、同じ趣味を持っており、その繋がりをオンライン上で保っていたとしても、実際の顔が見える状況で行うイベントの熱量には勝ることはない。出展ブースを綺麗に整えて、手渡しで作品を渡す。コスプレイヤーはこれまでの準備をいかんなく発揮し、その結晶が一番綺麗に撮影出来るようにカメラマンはレンズを向ける。そして、その空気感のなかで、イベント参加者も、一般参加者も、スタッフの人も、笑顔でいられる。自分の「好き」を、楽しんでくれている表情、そして自分が楽しんでいる表情をリアルで共有できる場はそうそうない。
こんなわくわくで詰まった場所にきて、高ぶらないでいられる訳がない。笑顔が笑顔を引き出す、まさに麻薬である。
 
誘われた時、正直乗り気ではなかった。
今は冬。会場までの道のりは寒いし、人込みは苦手だ。そして何より、何に対しても熱量を持てていなかったからだ。
しかし、今回参加してみて、「好き」を作品として、表情として、表現する事のわくわく感を再確認できた。
私は友人に感謝のメッセージを飛ばし、次のイベント参加の為のスケジュールを組むのであった。
 
ちなみに、今回参加する為に友人は何度か徹夜をしたらしい。それほどまでに参加したいと思わせる同人即売会は、そう言った意味でも麻薬だな、と思った。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2023-01-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事