たかがゲーム、されどゲーム……我が家は、空の世界で繋がっている。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:むぅのすけ(ライティング・ライブ大阪会場)
『おはよ、ねーねー今日のガチャ、20連でした! キミ、どうやった?』
『……10連。父ちゃんは?』
『あ、まだ引いてへん~。昨日ガチャピンやったからなぁ、今日は10連ちゃうかなぁ……お!30連や!』
『いいなぁ~』 『いいなぁ~』
冒頭からワケのわからん会話で大変恐縮である。
これは年末年始某日の、我が家の会話なのだ。
ちょっと、いやかなり恥ずかしいのだが、我が家は全員同じソーシャルゲームで遊んでいる。
ちょうどこの時期は、ゲームの運営会社から大サービスのキャンペーンが目白押しなのだ。
その一つが、ゲーム内で使うアイテムやキャラを手に入れる 『ガチャ』 を無料で引ける、と言うものだ。
現金換算すると一回3,000円かかる10連ガチャが、なんと期間限定で毎日無料なのである。
ログイン時、なぜかゲーム内にガチャピンがやってきて、ルーレットで無料ガチャの回数を決めてくれる。
たかがゲームだが、お金をかけず無課金で楽しみたい我々は、この期間をとても楽しみにしているのだ。
同じゲームを楽しんでいる、と言っても、家族皆で協力して一緒に遊んでいるのではない。
父である夫と、母である私、そして高2の息子の三人家族。
それぞれが自分のペースで、あくまでも、それぞれの楽しみ方をしている。
そしてスタートした時期が違うので、キャリアの差は一応あるのだが、揃ってからは4年程になる。
この間ずっと誰もやめずに、全員がほぼ毎日ログインし続けている。
従って、このゲーム内でのストーリーや、キャラクター、折々に用意されるイベント等が、ゲームのスケジュールも含めて家庭内での共通認識となっているのだ。
たかがゲームなので
家族が同じ趣味を持っている……と言えるほどのステキな事では全くないのだが、このゲームは確かに、我が家に大きな影響を与えてくれたように思う。
私がそのゲームを始めたのは、既に夫の影響で始めていた息子から遅れて、約3か月後のことだった。
当時息子は中学一年生で、念願のスマホを手に入れて、あっという間に使いこなしていた。
そもそも、私はスマホでするゲームには、全く興味がなかった。
ましてや、パズル等のわかりやすいものではないらしい。
ファンタジーなストーリーに、バトルが絡むような複雑な世界感だなんて、私について行けるはずがない。
だから私は、夫と息子がそれぞれで遊ぶところや、二人がゲームについて楽しそうに話している様子に、父子の仲睦まじい関係を見て、好ましく思っていた。
それだけのはずだった。
きっかけは、まさかの夫の誘いだった。
ある日突然、私にやってみたらいいじゃないかと勧めてきたのだ。
私は驚いて、即、断った。
でも、これから反抗期が本格化するだろうから、なにか共通の楽しい話題があった方が良いかもしれない、という夫の言葉に妙に納得した私は、おっかなびっくり始めてみることにしたのだった。
その後の私は、言うまでもなくそのゲームの面白さに目覚めてしまい、二人に倣うように自然と毎日ログインするようになっていった。
そして私が始めたことで、息子との関係に意外な変化が起きていた。
息子は始めてたった3ヶ月で、キャリアに1年半以上の差がある夫に追いつく程、ゲームを理解してどんどん強くなっていたのだ。
当時、スマホを使い過ぎないようにと、スクリーンタイムで制限をかけられていたので、たいしてやり込める時間はなかったにも関わらず、である。
この計算力と要領のよさを知った時には、度肝を抜かれたものだった。
対して私は、ストーリーやキャラにはすぐに入り込めるものの、バトルにおける強さを求めるには何をどうすればよいか、理解が遅い。
限りなく遅い。
なんならむしろ、理解することを諦める勢いだ。
そんな母に、息子はアレコレと教え、導いてくれた。
息子の説明は、とてもわかりやすかった。
このことも、意外な驚きをもたらして、私は素直に感心しながら教えを乞うたものだった。
それまでの私は、子の幼い頃から導き教え、時に正す母親であった。
息子は、その母に守られ、ずっと教わる立場であった。
それがちょうど、反抗期が本格化してくる時期に、たかがゲームではあるが、ある部分で母が息子に教わる構図が自然にできていた。
もちろん、それだけのことで反抗期における親子関係が、簡単に上手くいくものではない。
だとしても、我が家においては少しは穏当であったと言えるだろう。
現在の我が家は、ますます家族がそれぞれの都合で、バラバラの生活になりつつある。
全員で食事をとることも稀になってしまったが、それでも皆、このゲームは続けている。
そしてたまに顔を合わせて会話ができる時は、この話題で盛り上がる。
大切な話や、家族間の空気が悪くなった時も、どこかで誰かがこのゲームを話題にすることで、場が和むのだ。
いつしか我が家における、欠かせない共通のツールになってしまっていた。
たかがゲームだが、我が家にとっては、されどゲームである。
家族は皆それぞれに忙しく過ごしているが、この空を旅する異世界のゲームで、今日も私たちは繋がっている。
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00
■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168
■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」
〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325