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ついに33年越しの卒業なるか

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:田盛稚佳子(ライティング実践教室)
 
 
てっきり、今年が卒業の年だと思っていた。
33年もの長きにわたりお付き合いをして、いい時もつらい時も共に過ごした、女性特有の毎月の「アレ」である。
小学校4年生になると、誰しも保健体育で「生理」について学ぶ。
当時は「ふーん、体が少しずつ大人になるってことなのね」程度に思っていたが、中学生になり、実際に自分の身に起こると、軽くパニックになった。
なんなんだ、今までにないこの腹痛と異常な眠気は。
まるでお腹の中にエイリアンでもいるような、モヤモヤと吐き気を催すほどの気持ち悪さ。自分の体と頭が慣れるまでに、おそらく数年はかかったと思う。
今の時代のように、スマホのアプリを見れば、生理予定日の通知が来ていたり、「アナタのPMS(月経前症候群)の症状は大丈夫?」なんていう、心優しい項目はない。
「生理は女性として我慢するべきもの。仕方のないもの」としか教えられなかった。
 
しかも「アレ」は、なぜか決まって大事なイベントにやってくる。
運動会の前日、部活動の定期演奏会の当日、試験の当日などが多かった。
「なんで、この日を狙って来てるのよ!」と自分の体に恨み節をつらねていたものだ。
人生で一番つらかったのは、高校2年生の冬の修学旅行だ。
当時の修学旅行は、長野県(志賀高原)でのスキー合宿がメインイベントだった。
もともとスケートなど滑るスポーツが苦手な私にとって、スキーというだけでも行きたくないなぁという気持ちだった。
よりによって修学旅行の当日に「アレ」がお出ましになった途端、私のテンションはダダ下がりになってしまった。
新幹線の中で何度も「はぁ、帰りたい……」と半泣きだった。
 
とは言ったものの、到着してみると初めてのスキーは意外と面白かった。
当時は毎年、JR東海のCMではスキー場へと誘う若者の姿が流れていた時代だ。颯爽と滑るスキーヤーが、それはカッコよく見えた。
また九州で生まれ育った私にとって、スキー場は初めてかつ新鮮な場所であった。また気温がマイナス13度という経験したことのない環境で、雪の結晶がくっきりとキレイに見えるというのは一種の感動でもあったし、降ってくる雪もふわっふわで綿菓子のようだった。
 
しかし如何せん、ゲレンデではとんでもなく防寒対策をして滑る必要がある。
ちょっとトイレに行きたくても、フル装備を解かないことには身動きも取れない。
長時間のスキー合宿に「アレ」が耐えうるよう、販売されている生理用品でも「超ロング、お尻まですっぽり隠れるタイプ」をチョイスして、赤ちゃんのおむつよろしくフル装備の下に装着した。そして、ゲレンデへとペンギンのような、よちよち歩きで向かった。
「はーい! では1班から順番に滑ってみてくださーい!」
手慣れた様子のインストラクターは、次々と生徒に声をかけていく。
待っている間に、じわりと血が滲んでくるのがわかった。
妙齢の女性はおわかりかと思うが、あのボトッというか、ドロッというかなんとも言い表しづらい、気持ち悪い感触。あれである。
「はい! 次の生徒さん、どうぞー!」
と私の順番が来た。滑り出すと、ものすごい勢いでスピードが出るではないか。
「ひええ! 何、この速さ!? こんな速いって聞いてないよー!!」
インストラクターもそこまで滑るとは思わなかったらしい。慌てて、
「両足!! もっと両足をハの字にグッと開いて! そう、グーーッと!!」
はぁぁ!? ただでさえ股が裂けそうなほどに痛いのに、これ以上開けだと!? 拷問だわ!
「センセー! 無理ですー!!」
と大絶叫しながら、精一杯の開脚をし、ゴロンゴロンとすっころんでやっと止まった。
よく骨折しなかったものだと思う。
それ以来、二度とスキーなんかやるもんかと心に決めた。
 
あれから、何十年もよく耐えてきたなと我ながら思う。
世の中の女性たちは、痛みやつらさの程度の差こそあれ、毎月しんどい思いをしながら、家事や仕事をなんとかこなしているのである。
それゆえ、男性の同僚や管理職、はたまた彼氏に頭ごなしに何か言われると、しんどい思いにさらに拍車がかかる。どれだけ話しても理解してもらえないことが、ずっとつらかった。
たまに後輩ですごくつらそうにしている子に気づくと、「無理しないでいいよ。ちょっと休憩室で休んできたら?」と声をかけたりしたものだ。
 
昨年、神奈川県のある高校で、女性の生理について学びたい男子高校生向けの課外授業が行われたことをニュースで知った。
実際に生理用品を触ってみたり、濡れている感触を確かめて肌に当たる状態を知るという画期的なものだった。中には生理用品を着けて部活動をやってみて、どれだけ動きづらいかを身をもって知った男子もいたという。
「女子って、毎月大変ですね」
そうそう! その言葉が欲しかったのよ、とテレビを見ながら思った。
こんな授業がもっと早く行われていたら、社会での理解もより深まったのではないだろうか。
 
一般的には初めての生理を迎えてから、33年3か月で終わると言われている。
それが本当なら、私は来年の秋に卒業をすることになるだろう。
無事に卒業できた暁には、自分の体を思いきり労わってあげようと思う。
「よく33年も痛みに耐えて頑張った! 感動した! えらいぞ私」
なんだか、いつぞやの首相の言葉に似ているが、すべての女性に対して思うことでもある。
頑張っている自分の体を、ちゃんと褒めて労わってあげてほしい。
そんなわけで、今の私は「これまで毎月購入し続けた生理用品代が早く浮かないかしら」と、楽しみに過ごす日々なのである。
 
 
 
 
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2023-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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