メディアグランプリ

中華料理のない国、中国


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:花 橋子(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
友人と食事に行くとき、みなさんはどうやって相談するだろうか?
「今日、何食べる?」
「和食? 中華? ん-、イタリアンも捨てがたいよね」なんていうのではないだろうか。
 
それは、中国人も例外ではない。私が中国に住んでいるとき、中国人の友人と何度もそんなやりとりをして、食事に出かけた。「えっ、中国って中華料理だけじゃないの?」と思ったそこのあなた。今の中国には、世界各国の料理がそろっている。マクドナルドやスターバックスといった世界に展開する店はもちろん、吉野家や一風堂、サイゼリヤといった日本のチェーン店も数多く進出している。特に北京や上海などの大都市では、至るところに日本のおなじみの店があり、一般の中国人たちも普通に利用している。
 
中国人の友人がよく行きたがったのは、日本食の食べ放題の店だ。お寿司、天ぷら、焼鳥……など、日本食といえばランキング上位に挙がってくる料理が好きなだけ食べられる。この食べ放題は大食漢が多い中国人には好評で、いつ行っても満席だった。日本人の私からすると、お寿司のネタは小さいし、どうやって揚げたのか丸ごとのニンジンが天ぷらになっているし、焼鳥はなぜか辛いし……と突っ込みどころ満載ではあったが、「日本の料理っておいしいね」と笑顔で言いながらパクパク食べる友人を見るのは単純にうれしかった。
 
中国人はサーモンが大好きで、スーパーではサーモンのみのお寿司パックが大量に売られている。タクシーの運転手に「日本のサーモンはうまいな! 日本人は毎日食べられて羨ましい!」と言われたこともあるほど、サーモン愛が熱い。友人も例外ではなく、いつもサーモンのお寿司を10貫は食べていた。若干ピンク味が薄く、妙に光っているサーモンを「日本のサーモンと同じ?」と聞かれたときは思わず強く否定してしまったが、いつか日本にお寿司を食べに来てほしいと切に思ったものだ。
 
一方私は、友人との食事では中華料理が食べたいと思っていた。私は一人で中国に滞在していたため、食事は基本一人だ。中華料理は一皿の量が多いので、一人だと一品か二品しか頼めない。そのため、外では麺や点心など簡単なもので済ませることが多かった。だから、友人との食事はおいしい中華料理を食べる絶好の機会だったのだ。
 
しかし、「今日、何食べる?」という問いに、嬉々として「中華料理!」と答えた私に、中国人の友人は「それって何?」と聞いてきた。まさかの返答に戸惑う私に、友人は何かに気が付いた様子で「上海料理?北京料理?四川料理?」と重ねて聞いてきた。なんか地名がいっぱい出てきたけど、それは私が食べたい中華料理なのだろうか……。「それは、中華料理?」と聞く私に、友人は「中華料理って、中国にはないよ」と言い放った。なんと、中国には「中華料理」がなかったのだ。
 
中国では、中国の料理の総称を「中国菜」という。「菜」は料理という意味があるので、日本語にすると「中国料理」となる。ただ、これはあくまでも総称なので、「中国料理が食べたい」と言っても通じない。「何が食べたい?」と聞かれて、「ごはん!」と言っているようなものだ。では、どうするのか。それは、友人が私に聞いた「上海料理?北京料理?四川料理?」が正解である。つまり、地域で答えるのだ。
 
中国はその土地の広さゆえ、地域ごとに料理に大きな特徴がある。上海料理はショーロンポーと上海蟹が有名で、甘い味付け。北京料理はしょうゆを煮詰めた濃い味付けで、北京ダックやジャージャー麺が有名。かに玉や酢豚などおなじみの料理が多く、もっとも日本人の口に合うと言われている広東料理。麻婆豆腐発祥の地で、山椒と唐辛子を効かせたスパイシーな四川料理。ここまでが、中国四大料理だ。さらに、特産の緑茶を使った料理がある杭州料理、あっさりとした味わいの蘇州料理、四川料理と肩を並べる激辛の湖南料理、白菜の漬物を使った料理がある東北料理などなど、その地域の気候、立地、獲れる食材に合わせた無数の料理がある。そしてこれらの料理を、中国人はまったく別物としてとらえている。四川料理と杭州料理は、カレー屋と牛丼屋くらい違うし、上海料理の店で北京料理のジャージャー麺を注文することは、お寿司屋でスパゲティを注文するくらい、違和感のあることなのだ。
 
しかし、私は食い下がった。そういう特徴が強いものではなく、ごく普通の、中国人が家で食べる料理は何というのかと。それは「家常菜」というと、友人は教えてくれた。家常菜のレストランもあり、中国人は定食屋のような感覚で利用している。この家常菜はサイドメニュー的にも食べられる。どのレストランにもあるので、例えば、上海料理の店でメインに上海蟹を食べながら、家常菜であるトマトと卵の炒め物をつつくなんてこともある。
 
ちなみに、チンジャオロースとホイコーローは家常菜だ。北京にある四川料理の店で、日本人観光客がまさにチンジャオロースとホイコーローを食べていたが、サイドメニューだけを食べているようなもので、中国人にしてみたら「なんで四川料理の店に来たんだろう」というラインナップである。中国旅行の際は、ぜひご注意願いたい。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2023-04-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事