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「お見合い婆誕生」

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:上田まゆみ(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
昭和生まれの私は「お見合い」というワードを聞くと、料亭だとかホテルだとかの和室で振袖を着た女性とスーツ姿の若い男女が向き合って見つめあう中、鹿威しの音が「カコーン」みたいなベタな場面を想像してしまう。平成、令和時代になるといわゆる結婚相談所やマッチングアプリがお見合いの変化形になる。昭和ぐらいまでは、近所に世話好きのおばさんの一人か二人いてお見合いの世話をしていたという。しかし、時代が変わるとそういうおばさんの数も激減してしまったようだ。
そんな絶滅危惧種の世話好きおばさんに、数年前に出会った。当時、彼女(以下U子さん)はいつも誰かと誰かをくっつける算段をしていた。というのも、会社勤め時代、同僚にとっても冴えない感じの男性がいたそうだ。もちろん、彼女はいない。見かねた上司が「誰かあいつに結婚相手探してやってくれ。見つけたらボーナスの査定アップする」と言ったとかで、(強欲な?)U子さんががぜん張り切ったのは想像に難くない。U子さんは合コンをセッティングすることにし、人脈をフル活動して美女軍団を用意した。(CAさんとか、秘書さんとか、ヨガ講師とか、とにかくきれいな人が多そうな職業の方々) 対する男性陣はU子さんの職場の方々。(当事者以外は家族もち彼女持ちのさくら)
合コン当日、その場に現れた冴えない同僚の姿を見て、U子さん、「これは、ちょっと無理だったかも……」と思ったそうだ。合コンも全く盛り上がらなかった。ところが、合コンがお開きになったあと、美女軍団の一人がU子さんに恐る恐る近寄ってきて、「〇〇さん、私のこと気に入ってくれるかな……」とささやいた。
「えーっっ ! 嘘でしょ!」とU子さんは心の中で叫んだそうだ。なんと美女の方から好意の表明があったのだ。最終的にはこのお二人ご結婚されたらしい。以来、U子さんお見合いセッティングにはげむようになったとか。
「U子さんたら、一回うまくいったからってその気になっちゃって。そうそう何度もうまくいく訳ないよ。たまたまでしょ」 それがその話を聞いた直後の私の感想だった。そしてそのままその話を忘れてしまっていた。
ところが、おととしの冬のある日、ふと大学時代からの友人R子とお茶の稽古の先輩Mさんを引き合わせてみたらどうだろうという考えが頭をよぎった。何か根拠があるわけではなかったけど、二人の雰囲気が合う気がしたのだ。それまで正直なところ、私はU子さんのような世話焼きお見合いおばさんを「暇なんだね……」という目で見ていた。が、自分が50代にさしかかると、その気持ちが何となく理解できるようになってきた。自分の身の回りにおめでたい事が減っていくのだ。その代わりに、病気の話題や弔事が増えていく。
二人を会わせるという思いつきはいいけれど、「さて、どうやって?」合コンという歳でもないし、いきなり二人きりで会わせるのもどうかと思うし、「どうしよう……」
妙なところで優柔不断な私は、お見合いではなく、何とか自然な形で二人を会わせる機会はないかと考えた。そこで、R子をお茶会に連れていったり、お茶の関係者が集まるイベントに誘ったりしてみた。(今にして思うとなんと悠長であほらしいことをしていたのか。)だが、その都度タイミングが悪く、なかなか出会うところまでこぎつけられなかった。そうこうしているうちに、お茶のお稽古で一緒の年下の友人(女性)がR子を見かけて「きれいなかたですねぇ」「そう?そうだよね。美人でしょ。シングルなんだよ!」必死でアピールする私。友人曰く 「じゃあ、Mさんとどうですか? お似合いかも」
結局彼女の提案で当人同士を含んだ五人で食事をすることになった。場所は都内のピザが美味しいイタリアン。一昔前の異業種交流会みたいになってしまったが、何とか二人を引き合わることができたし、食事の後、駅まで歩く道すがら、振り返るとLINE交換しているらしき二人の姿があった。それでもまだ、「そうなんだよ。だいたいここまではあるんだ。でもその先は難しいんだよね……」と無駄に人生経験を重ねた私はひそかに思っていた。そして、元来世話好きとかまめだとかいう性格からほど遠いため、引き合わせっぱなしにして、その後ほったらかしにしてしまっていた。
それから数か月後のお盆にR子からLINE が入った。「あれから、何度かデートしまして、お付き合いすることになりました。このご縁大切にします。ありがとう!」
それを見た途端、私の脳内にボーイズ・タウン・ギャングの「君の瞳に恋してる」のサビのメロディーと歌詞が流れた。U子さん、馬鹿にして本当にすみませんでした。
 
 
 
 
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2023-04-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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