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「陰キャ」はマイナスイメージを持つキャラクターなのだろうか


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記事:小林 遼香(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「え、学生時代、陰キャだったの」
学生時代のエピソードを話すと、必ず驚きと困惑が混ざった表情をされる。困惑した表情を見る限り、世間的には「陰キャ」は特殊な属性と位置づけられているらしい。「陰キャ」とは、マイナスイメージを持つキャラクターなのだろうか。
 
幼い頃から舞台の世界に憧れがあり、演劇科がある高校に進学した。
「卒業公演は200人が収容できる舞台で90分のミュージカル作品を披露してもらうので、日々の鍛錬を怠らないように」
講師からの言葉に感化されたわたしは、演劇中心の生活に切り替えた。放課後は図書館に行ってシェイクスピアが執筆した作品を読み、土日は舞台や映画鑑賞をした。少女漫画にでてくるような甘酸っぱい恋愛のエピソードもなければ、友人とカラオケへ行ったり、ショッピングした思い出もない。たまに中学時代に仲良かった同期と帰り道が一緒になったが、全く話が合わなかった。
「同世代と交流する時間があるのならば、創作活動に取り組むべきだ」と、自分ルールをつくり忠実に従っていた。その結果、クラスメートの推薦で卒業公演の脚本担当をすることになり、集大成を発揮することができた。
 
「これからは映像の時代やから、大学で映画も学んで創作を極める」
親に宣言して地元を離れ、映像・演劇・写真など、幅広い分野を学べる学科に進学した。周りが関西弁から標準語、演劇の話題から芸能人のゴシップの話に変わり、入学早々友人ができなかった。大学生デビューに失敗した。話しかけられたりはするのだが、高校時代に人との交流を避けてきたせいか微笑むことしかできない。人と話すことが怖くなった。キラキラ大学生を避けるように、廊下の隅、校舎の陰を歩くようになった。創作活動に勤しんでいる仲間とだけ交流し、映画制作を中心とする生活を続けた。
 
しかし、好きなことだけをして生きていけるほど現実は甘くなかった。大学1年生の夏頃、食べていくためにバイトを始めた。創作活動に携わらない世界の人々と交流をせざるを得なくなったのだ。映画館や結婚式場など複数のバイトを掛け持ちした。最初は話しかけられても「はい」、「そうなんですか」の返答しかできなかった。2カ月たったある日、バイトリーダーが急に休むということが発生した。自分と先輩2人だけで映画館をオープンさせなければならない事態になった。「ここの掃除しときました」や「助かりました」など必要最低限の会話をしているなか、突然「ウディ・アレンの1作品目みたことありますか」と話しかけられた。大好きな監督の話題を振られたわたしは無我夢中で話した。途中で相手の困惑している表情に気づき「話し過ぎました、すみません」と、謝った。
「いや、そっちを見せていったほうがいいと思います」
自分を受け入れられた気がした。いままでは演劇・映画の制作に携わる人以外と話す成功体験がなく、創作につながらない会話は無意味だと拒否をしていた。でも、会話を重ねれば重ねるほど相手の違う一面が見え、本音をポロっと吐いてくれるとあたたかい気持ちになった。「最近、漫画っぽくなくないね。人物像が明確になってきている気がする」講師から脚本の会話台詞を褒められるようになり、創作活動にプラスの影響を与えたのだ。その日をきっかけに少しずつ話せるようになっていった。
 
だんだんと人に対して心を開くようになって気づいたことがある。社交性に欠け、内向的な特徴を「陰キャ」と呼び、マイナスイメージを抱かれているらしい。「陰キャ」時代のエピソードを頑なに隠すようになった。
大学1年目の冬期休暇。地元に帰り、中学から仲の良かった同期と会うことになった。
「うちってさ『陰キャ』やったやん、恥ずかしくて高校時代のエピソード話せないねん」
いきなり深刻そうな顔で相談を始めたわたしに対し、同期は大笑いした。
「『陰キャ』だからこそ、他人に流されず興味があるものに熱中できたんやん。普通周りに置いていかれるのが怖くてできへんもんやで。めっちゃ強いなって思ってたし、ちょっと羨ましかったもん」
わたしは『陰キャ』のマイナス面ばかりに着目していた。振り返れば、良くも悪くも周りに合わせず、目標に向かって必死に取り組んだからこそ満足がいく脚本は書けた。誰とも比較せず、世の中の流れを無視したことで将来の方向性も見えて進路も決められた。同期の言葉のおかげで『陰キャ』だからこそ成し遂げられた面に目を向けられるようになった。
 
もし周囲に「陰キャ」がいたらぜひあたたかい目で見てほしい。無愛想であまり自分のことを話さないが、決して攻撃をしているわけではない。自分のこだわりに忠実なだけなのだ。わたしはというと、社会人5年目になった現在「わたしは『陰キャ』学生だったんですよ」と堂々と発言できるようになっている。「陰キャ」は誇るべきキャラクターなのだから。
 
 
 
 
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2023-05-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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