あなたは運命を信じますか?
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:堀部佳野乃(ライティング・ゼミ2月コース)
時は、昭和年代。
人付き合いは上手いが、いつもクラスの女子グループの端にいて、おとなしく微笑んでいる女の子がいた。
彼女のことをAちゃんとしよう。
勉強はできるが、女子とはあまり話さず、いつも数人の仲の良い友達とだけつるんでいる男の子がいた。
彼のことをBくんとしよう。
Bくんは、Aちゃんのことが好きだった。
特段、2人は仲が良かったわけでもないが、BくんはAちゃんのことが好きだった。
Aちゃんは、Bくんから思いを寄せられていることなんて全然気づいていなかったが、小学4年生のときに風の噂で、自分のことをBくんが好きらしい、と聞いた。
しかし、そんなそぶりを微塵も見せないBくんを見る限り、その噂が本当だとは到底思えなかった。
2人が中学生になった頃、クラスに女の子が転校してきた。
彼女はすぐにクラスのリーダー的存在になり、美人で活発で、男子からも人気のある女の子だった。
彼女のことをCちゃんとしよう。
AちゃんとCちゃんは友達になり、よく行動を共にしていた。
Cちゃんは、転校してきてからしばらくして、Bくんのことが気になり始めた。
男友達はたくさんいるのに、Bくんとは上手く話せない。
彼女はどうアプローチして良いかわからず、男友達に協力してもらうことにした。
男友達づてに手紙を渡してもらったり、自分を薦めてもらったり。
一方でBくんは、Cちゃんから好意を寄せられていることに薄々感づいていたが、彼女のアプローチの仕方がどこか気に食わなかった。
結局、BくんはAちゃんへ思いを告げられないまま、CちゃんはBくんへ思いが届かないまま、3人は中学校を卒業する。
AちゃんとCちゃんは同じ高校に通うことになり、相変わらず行動を共にしていた。
しかしAちゃんは何となく、Cちゃんが最近自分に対して冷たいな、と感じていた。
一方でBくんは進学校に入り、Aちゃんのことは諦めて、勉強や部活に勤しんでいた。
ある日、BくんはCちゃんに呼び出される。
彼女からついに、直接思いを告げられた。
自分のことを好いてくれるのはありがたかったが、彼女のことをどうしても好きにはなれないため、BくんはCちゃんの告白を断った。
すると、彼女からこんなことを言われた。
「BくんはAちゃんのことが好きなんでしょ? 気持ちを伝えたらいいじゃん」
後日、Bくんはその言葉に背中を押され、意を決してAちゃんの家に公衆電話から電話をかけた。
親が電話に出たらどうしよう、なんてドキドキしながら聞くコールの音。
「はい、もしもし」
電話に出たのはAちゃんだった。
BくんはAちゃんをデートに誘った。
Aちゃんは、Bくんから電話がかかってきたことに驚いたが、小学生のときに聞いた噂は本当で、今も変わらず思い続けてくれていたことがとても嬉しかった。
それからというもの、AちゃんとBちゃんは時々2人で遊びに行くようになった。
しかし、高校受験を控えた2人は、勉強に集中するため会うことを辞めた。
その後、Aちゃんは短大へ進学し、Bくんは浪人生活を送ることになる。
結局、AちゃんとCちゃんは高校卒業後、疎遠になってしまった。
またBくんは浪人生活を送るにあたり、勉強に集中するためAちゃんと会うのを控え、その上「待っていてほしい」などと縛ることもしなかった。
先に大学生になる彼女に彼氏ができてしまったとしても、それは仕方がないと割り切っていた。
Aちゃんは大学生になり、楽しいキャンパスライフを送っていた。
ある日、友達に誘われた合コンで、男性と連絡先を交換した。
後日、自分の父親から「○○とかいうやつから、Aに電話がかかってきてたぞ」と言われたが、厳しい父親に、合コンに参加していた、なんて到底言えず、適当なあいずちを打って流していた。
合コン男との関係はそれっきりだった。
Bくんは、無事に第一志望の大学に合格し、晴れて大学生になった。
Aちゃんは合格発表の日に、新聞でBくんの名前を探した。
名前を見つけたとき、とても嬉しかった。
なんだかんだ言って、Bくんのことがずっと気にかかっていたのだ。
AちゃんとBくんは2年ぶりに会った。
2人は正式にお付き合いすることになり、結婚。
そして、AちゃんとBくんの間に誕生したのが、このわたしである。
わたしはこの物語に、運命を感じる。
特に、Bくんからの電話に、たまたまAちゃんが出たこと。
もしあの時、別の人が電話に出ていたら、合コン男のときのように、2人の未来は無かったかもしれない。
もっと言うと、わたしは生まれていなかったかもしれない。
でも、Bくんだって合コン男だって、電話したときの条件は同じだったはずで、彼らがどうあがいたところで、電話に出てくれる相手を予想できるわけでも、操作できるわけでもない。
わたしたち人間は、あの時こうすれば良かった、こう言えば良かった、などという後悔が絶えない。
特に恋愛に関しては、小さなことに一喜一憂して、失恋したら自分のどこが悪かったのかと落ち込む。
しかし、たったひと言やふた言で関係が切れてしまうようなら、その相手はただ単にご縁が無かったのだ。
あなた自身の存在を責める必要は無いと思う。
2年も宙ぶらりんな関係だったわたしの両親が良い例だ。
BくんがCちゃんを振ったことで背中を押してもらえたのも、2年間Aちゃんに彼氏ができなかったのも、たまたまである。
誰かがそうなるよう力を加えたわけでも、そこに特段意味があるわけでもない。
それが運命というものだ。
でも、何も努力しないのはダメだ。
挨拶だったり感謝の言葉だったり掃除だったり、人間として大切だと思うことを真剣にやっていれば、良いご縁やチャンスが訪れたときに、しっかりと掴める土台ができるような気がする。
自分がやれることを精一杯やったら、あとは運命に任せるだけ。
「運命」というのは、人間が無意識に背負ってしまう荷物を軽くしてくれる言葉なのかもしれない。
と、こんなことを書いているわたしも、今好きな人に何てLINEを送ろうか考えあぐねている。
「こんなこと言ったら嫌われるかな?」などの悩みは尽きない。
やっぱり好きな人を前にすると、頭では理解していても実践するのは難しいものだ。
トホホ……
***
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